本試験において借地借家法からは、毎年2問(内訳は借地1問、借家1問)出題されます。毎年必ず出題されますし、得点の可能性が非常に低い難問はみられないので、ぜひ得点源にしたいところです。今回は、借地の知識のうち出題頻度が高い部分、および誤解が生じやすい部分に絞って学習していきます。
1. 建物滅失後の建物再築による期間延長
(1) 借地権の存続期間中に建物が滅失しても借地権は存続する。
(2) 借地権の当初の存続期間中に建物が滅失し、残存期間を超える建物を再築したとき
借地権設定者の承諾がある限り、借地権は、
【「承諾」があった日】【「再築」された日】のいずれか早い日から、20年間存続します。
ただし、残存期間がこれより長いときは、それによります。
(3) 更新後の建物滅失
① 借地権者 → 放棄、解約の申入れができる。
② 承諾なく残存期間を超える建物を築造したとき、
借地権設定者は【消滅請求】もしくは【解約の申入れ】ができる。
2. 借地権の譲渡・転貸
(1) 借地権が地上権の場合
地上権を内容とする借地権者は、自由に譲渡・賃貸ができます。
(2) 借地権が賃借権の場合
賃借権を内容とする借地権者は、譲渡・転貸につき、土地の所有者の承諾が必要であり、無断譲渡・転貸は、賃貸借契約の解除事由となります。
ただし、賃貸人が承諾しない場合には、次のような救済策が用意されています。
①借地権者が借地上の建物を第三者に譲渡しようとする場合 | <裁判所の代諾許可> 賃貸人にとって不利となるおそれがないのに承諾しないときは、裁判所は賃貸人の承諾に代わる許可を与えることができる |
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②第三者が借地上の建物を取得した場合 | <建物買取請求権> 建物の譲受人は賃貸人に対し、時価で当該建物を買い取るよう請求することができる |
③第三者が借地上の建物を競売で取得した場合 | 上記<裁判所の代諾許可><建物買取請求権>のいずれも認められる |
①は、これから建物を譲渡しようとする場合であるのに対し、②は、すでに譲渡してしまった場合です。③は、すでに譲渡された場合ですが、その手段が競売という特殊な方法による場合です。この3つの状況の違いを押さえるのがポイントです。
3. 借地権の対抗力
次の場合、借地権者は新たな土地の所有者等の第三者に対して、自己の借地権を対抗することができます。
① 地上権または土地の賃借権の登記があるとき。
② 借地上の建物に登記があるとき(ただし、借地権者本人名義の登記に限る)。
③建物が滅失した場合、借地権者が、これまで建っていた建物を特定するために必要な事項等、一定の掲示を、土地の見やすい場所にしたときには、建物滅失の日から2年間に限り、借地権の対抗力が持続する。
③の対抗力は、建物滅失以前に、建物の登記がされていたことが条件。また、建物滅失後2年以内に建物を再築して登記まで済ませないと、掲示によって認められた対抗力はさかのぼって失われます。
4. 定期借地権
更新がなく、定められた契約期間で確定的に借地契約が終了する借地権。次の3種類があります。
問題を解いてみよう!
知識の定着を
- 【Q1】借地権の当初の存続期間中に借地上の建物の滅失があった場合で、借地権者が借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、借地権設定者は地上権の消滅の請求または土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。(H21 問11)
- 【Q2】Bが居住用の甲建物を所有する目的で、期間30年と定めてAから乙土地を賃借した。Bが甲建物を所有していても、建物保存登記をBの子C名義で備えている場合には、Aから乙土地を購入して所有権移転登記を備えたDに対して、Bは借地権を対抗できない。(H28 問11)
こう考えよう!<解答と解き方>
Answer1
【解説】更新後の存続期間中であれば、本問のような場合、借地権設定者からの解約等が認められますが、当初の存続期間中は解約等をすることができません。借地権設定者の承諾がないので、期間延長が認められないだけです。
Answer2
【解説】借地上の建物の登記をしていても、借地権者本人名義のものでなければ、借地権を第三者に対抗することはできません。
植杉 伸介
宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を30年以上務める。著書に『マンガはじめて建物区分所有法 改訂版』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2021』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。