「Z世代」が寄せる住まいへの関心
~近い将来、メイン顧客となる若者の志向性を把握~
今後、社会の中心となり、経済を動かす重要な世代として今、Z世代が注目されています。
近い将来、不動産取引においても紛れもなくメインの客層になるはずです。
そんな中、YKK AP株式会社が先鞭を切ってZ世代を意識した「住まいに関する意識調査」を実施しました。
同社開発本部デザインセンター コミュニケーションデザイングループ 朝倉グループ長、徳重室長、日高氏に調査結果から見えてきた、Z世代の「住まい」への志向性について話をうかがいました。
これまでの若者とは違うZ世代特有の価値観とは
Z世代とは一般的に1990年代半ば以降に生まれた世代。2022年現在で10代前半から25歳くらいまでの若者を指します。早い段階からスマホやパソコンを使いこなすデジタルネイティブであり、SDGsへの関心が高く、自分らしさを大切にするなど、“これまでの若者”とは違う価値観や考え方を持っているといった印象を持たれています。
では、生活者として住まいに関してはどうなのか。その現状を把握するため、住宅設備メーカー、YKK AP株式会社が調査を行いました。
「実は20年ほど前から住まいの機能やデザインのヒントを得るため、エンドユーザーを対象にした意識調査を定期的に実施しております。ただ昨今、Z世代はあらゆる業界から注目されており、弊社にとっても近い将来、顧客ターゲットとなるのは必須だと考えました。若い世代の志向性をなるべく早めに把握しておくため、今回はあえて調査対象となるユーザーをZ世代まで広げて実施した次第です」(徳重氏)。
予想外に多かったZ世代の住宅購入意向者
YKK APでは下記の〈調査概要〉にあるようにZ世代の他、ミレニアル世代(25~39歳)、大人世代(40~69歳)と世代別に調査結果を集計しました。すると次のようなことが浮かび上がってきました。
調査期間 | 2022年3月25日~30日 |
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調査方法 | インターネット調査(YKK AP 調べ) |
調査対象 | 全国の15歳~69歳の男女 |
サンプル数 | 2022年3月25日~30日 <世代別集計の内訳> 「Z 世代」 1998年~2007年生まれ(15歳~24歳) 421人 「ミレニアル世代」 1983年~1997年生まれ(25歳~39歳) 629人 「大人世代」 1953年~1982年生まれ(40歳~69歳) 1,040人 |
①Z世代の住宅購入意向者が全体の約57%。そのうち「新築住宅」希望者が約70%、「中古住宅」が約25%。
Z世代では、将来的な希望も含めた住宅購入意向者は約57%
そのうち、「新築住宅」を希望している人が約70%、「中古住宅」は約25%
Q.今後、住宅を購入する予定はありますか?
Q.購入を予定している・購入したいと思う住宅はどのタイプですか?
②Z世代は大人世代に比べて、フレキシブルな住まい方への関心が高い。
Z世代は大人世代に比べて、フレキシブルな住まい方への関心が高い
Q.A・Bどちらの暮らしをしたいですか?
※「どちらでもない」回答を除く
③理想の住まいとして大人世代同様、「落ち着いた穏やかな気持ちで過ごせる空間」を求める傾向がありつつも、Z世代は「仕事や勉強に効率的に取り組める空間」を求める傾向が大人世代よりも高い。
理想の住まいとして、全世代で「落ち着いた気持ちで過ごせる空間」が求められる。
Z世代は、「仕事や勉強に効率的に取り組める空間」を求める傾向あり
Q.あなたにとって「理想の住まい」とはどのような空間ですか?(マルチアンサー)
④Z世代は他の世代より環境配慮・社会問題への意識が高い。
この結果を受けて「Z世代の住宅購入意向者の多さに驚きました。しかも他の世代同様、新築住宅への憧れが強いこともうかがえます。意外に保守的な面があるのだと感じました」と語るのは実際に調査設計に携わった日高氏。
なぜZ世代の住宅購入意欲が高いのかというと、「社会への不安が大きいのではないでしょうか。コロナ禍もあって衣食住の『住』をしっかり所有をしていたいという感覚が彼らにも芽生えているのではないかと。先行きの不透明感がZ世代を堅実にしているのかもしれません」と朝倉氏は分析します。加えて「純粋に家を持つことへの憧れもあるのでは」と分析するのは徳重氏。
「Z世代は家という空間を通して自分らしさを表現したいという意向も強いようです。というのも住宅デザインに関して尋ねる項目として『自分たちらしさを表現したデザイン』『自分好みのもので装飾した空間』があったのですが、いずれも他の世代よりポイントが高かったんです。こうした志向性をどう評価するかは引き続き、探っていきたいと考えています」(徳重氏)
オンとオフ両方が実現できる住まいを望む
理想の住まいに求める空間として、大人世代よりZ世代がやや多かったのが「仕事や勉強に効率的に取り組める空間」です。徳重氏は「コロナ禍を経てZ世代が自宅を“働く場・学ぶ場”ととらえることが当たり前になってきたようです。おそらくこの傾向は今後も続くはず。そのことを想定して住空間を作ることが必要です」と語ります。
また、「友人や来客を迎え、コミュニケーションを楽しめる空間」へのニーズも大人世代より多い結果でした。
「仕事や勉強ができる空間とも共通していますが、友人とのコミュニケーションを楽しみながらもプライバシーもしっかり確保する。つまりオンとオフの両面できっちり使っていける住まいがZ世代に求められているわけです。実際、今回の調査では、公私のスペースを分けられる間取り、テレワークに使える独立した個室の確保、リビングなどの一角にワークスペースを求める意見なども多く集まりました」(日高氏)
Z世代の心に刺さるアプローチの仕方が課題
大人世代と同様、住宅を購入したいという堅実さがある一方、自分らしさを追求したい、環境配慮も大事にしたい、またライフステージに応じて住む土地を変えてもいいなど、Z世代は実に多種多様な価値観、志向性を持ち合わせていることがこの調査結果から垣間見えてきました。
「Z世代の意識が高い環境配慮型の商品開発に今後も注力していこうと改めて思いました。でも、それ以上にZ世代の場合、何を売るかよりも、どう商品の魅力を伝えるかが大事。例えば、こういうしつらえをすると自分らしさを表現できる、こんな風に暮らせるとか」と朝倉氏。さらに「圧倒的な情報量を持つ世代でもあるので、弊社で言えば、単純に施工例をカタログで紹介するだけでなく、その空間に入ってどのような暮らしができるのかをイメージしやすいような、共感してもらえるアプローチを考え始めています」と徳重氏が言葉を添えます。これを機に、Z世代の住まいへの考え方を把握しておきたいところです。