当社は、管理戸数800室ほどをおあずかりする地方の不動産会社です。最近、ある地域の管理会社から「受託を増やしていくためには、オーナー向けのセミナーを開催して集客するといい」という話を聞きました。当社では、これまでセミナーを実施したことがなく、何をどのように準備したらいいのかまったくわかりません。よい方法を教えてください。
Answer
管理受託を行うために、オーナー向けのセミナーを実施することは、非常に効果があります。セミナーに来られる方は、テーマの課題に問題を持たれている方がほとんどです。忙しい時間を割いてまで、目的意識なくただ聞きに来る人はいません。たとえば「空室対策」がテーマであれば、「空室に問題を抱えている人」が来場されます。そのようなお客様に対して、自社がどのような提案を通じて改善支援ができるのかを、セミナーを通じて周知していきます。スケジュールとコンテンツの計画を立てながら、セミナーを継続していくことで、中長期的な顧客の囲い込みが可能となるのです。
セミナーの意義
管理会社が行うセミナーは、既存オーナー向けに年1回程度行うことはあるのですが、集客のために継続して行う会社はあまり多くありません。セミナーは来場者に対するノウハウの提供ですので、教育というコンテンツを提供することで、管理会社の存在感が増します。新規顧客との接点を持つのには非常に有効です。管理戸数を増やしたい会社は、長期的に継続して行うべきでしょう。
スケジュールとテーマ(コンテンツ)
まず始めに、年間のスケジュールを決めることが重要です。思いつきで始めるのも悪くはないのですが、社内で目標の共有がないまま始めては、おそらく長続きしません。年間スケジュールを「年3回で、5月、9月、1月に実施」などと無理のない範囲で決めましょう。開催は間隔・タイミング・内容がポイントで、時期によりオーナーが抱える問題は異なります。たとえば、繁忙期が終わった5月に空室が埋まっていなければ「空室対策」をテーマにすると集客が高まります。また、繁忙期に向けての対策がテーマならば、10月は「入居希望者のニーズ」などをテーマに選ぶと集客がしやすくなります。1月は「確定申告や節税のポイント」などがよいでしょう。2023年10月よりインボイス制度が始まりますので、今年の秋頃までは特に集客率がよいと思います(図表)。
目的を明確にする
セミナーを企画するうえでよくある過ちが「セミナーをやって終わり」にしてしまうことです。既存オーナー向けのセミナーと違い、集客セミナーの目的は「管理獲得」にあります。つまり、「セミナーは手段であり、目的ではない」ことを意識しなければなりません。よって、第一部で外部講師を招いて講演(80分程度)をしてもらったとしても、必ず第2部(20分程度)で自社のプレゼンス(存在感)を発揮しなければ意味がありません。外部講師の「ノウハウ」に対して、「自社での取り組み」や「具体的な実践方法」を伝えなければ、「いい話を聞いた」で終わりになります。よって、できるだけ「2部制」として前半後半と分けた方が、より参加者に伝わりやすいはずです。
集客方法
スケジュールとコンテンツが決まったら、次は集客です。集客方法は「新聞広告」「DM」「ホームページ」「メルマガ」などがありますが、まったくの新規顧客との接点は、新聞広告がよいでしょう。多少コストはかかりますが、新聞はメディアとしての信頼度が高いのです。今後の優良顧客の名簿作りを考えれば、最適な集客メディアです。仮に新聞広告を利用するのであれば、2回を1セットにした方が良いでしょう。1回目はセミナーの3~4週間前、2回目は1~2週間前と、2週間程度空けて広告することで、見逃した人に対して再度周知できます。
また「限定〇〇名」とすることで、より意識の高い人が集まりやすくなります。
当日の準備
当日にバタバタしないように、それぞれの役割を明確にしておく必要があります。顧客に対しての営業担当割り振り、司会、座席への案内など、役割分担はあらかじめ決めておきましょう。
座席を指定席にして、誘導するのも人手を省く1つの方法です。また、お茶やあめなど、ちょっとした心遣いは参加者としてうれしいものです。問題を抱えているオーナーの皆さまを歓迎してあげましょう。それから、アンケートは大変重要なものです。必ず準備して、内容、雰囲気、オーナーの課題、所有物件などの情報をしっかりと教えていただくことが重要です。不備なく記入していただくためには、まずは限られた時間でもコミュニケーションをとって、少しでも確かな信頼関係を構築しましょう。また、できる限り次回もご参加いただけるように、次回セミナーのお知らせを同時にしておくと、次回の集客につながります。
追客
セミナー終了後は、アンケート結果をもとに集計を行いましょう。おおよその目標として、個別面談への誘導を20~25%程度としましょう。セミナーが終わった後のケアは重要です。数日時間を空けるだけでその時の熱量が下がってしまうため、できるだけ当日に次回のアポを取るか、翌日くらいまでには次のアクションを起こしましょう。
そのときにはたとえば、セミナー講師の著書を手土産で持参するとか、業界誌に書かれている内容のうち、オーナーの課題に合っている記事を持っていくことなどをすれば、参加者から喜ばれます。オーナーの気持ちに寄り添った行動をとることで、信頼関係がグッと高まり営業につなげることができるのも、セミナー開催の魅力と言えます。
みらいずコンサルティング株式会社 代表取締役
合同会社ホーリーロッジ 代表社員
今井 基次
賃貸仲介、売買仲介、賃貸管理、収益売買仲介、資産形成コンサルティングの経験を経て、みらいずコンサルティング株式会社を設立。不動産業者・不動産オーナーの経験をもとにして、全国の賃貸管理業を行う企業へのコンサルティングや講演・研修活動を行う。聴講者はこれまでに3万人を超え、好評を得ている。CPM®、CFP®、不動産コンサルティングマスターなど資格多数。著書に『ラクして稼ぐ不動産投資33の法則 成功大家さんへの道は管理会社で決まる!』(筑摩書房)がある。