営業保証金に関する問題は、本試験において毎年必ず1問出題されると考えてかまいません。金額や期間に関する数字を覚える必要がありますが、内容的には難しくありません。出題ポイントをしっかり押さえれば得点源にできます。
営業保証金
1. 営業保証金の供託額
営業保証金とは、宅建業者が営業を開始する前に供託することが義務づけられている金銭等をいいます。営業保証金の金額は、下表のように定められています。
営業保証金は、金銭のほか一定の有価証券で供託することもできますが、有価証券で供託する場合は、右表のように評価されます。なお、金銭と有価証券を混ぜて供託することもできます。
営業保証金は、すべて主たる事務所の最寄りの供託所(法務局)に供託しなければなりません。
2. 供託の届出と営業の開始
宅建業者は、免許を取得しただけでは宅建業を開業できません。営業保証金を供託し、その供託物受け入れの記載のある供託書の写しを添えて、免許権者に届け出てはじめて営業を開始できます。
また、宅建業者が新たに事務所を増設した場合は、その事務所分の営業保証金(500万円)を供託し、供託した旨の届出をした後でなければ、当該事務所において営業を開始することができません。
3. 営業保証金の保管替え等
営業保証金は主たる事務所の最寄りの供託所に供託することになっているので、主たる事務所の場所が移転すると、供託先の供託所も変えなければならなくなります。供託先を変更する場合の手続きは、営業保証金を金銭のみで供託している場合と、有価証券を用いて供託している場合とで異なります。
有価証券を含めて供託している場合は、新供託所に営業保証金を供託して、いったん二重供託状態にしたうえで、旧供託所から営業保証金を取り戻すという手順を踏みます。
4. 営業保証金の還付と追加供託
営業保証金の還付とは、宅建業に関し業者と取引した者(②)が、その取引により生じた債権につき、営業保証金から弁済を受ける(④)ことをいいます。還付を受けることができる債権は、「宅地建物取引業」の「取引」によって生じた債権に限られます。したがって、業者に資金を融資している銀行の債権とか、業者の依頼により広告を作成した広告業者の債権などは、還付の対象となりません。
還付が行われると、免許権者から業者に対して、不足額を供託せよという通知がされ(⑥)、この通知を受けた日から2週間以内に業者は不足額を供託しなければならず(⑦)、さらにその供託の日から2週間以内に供託した旨の届出(⑧)をしなければなりません。
5. 営業保証金の取戻し
営業保証金の取戻しとは、業者が廃業するなどして営業保証金が不要になったときに、その業者が供託所から営業保証金を取り戻すことをいいます。
問題を解いてみよう!
知識の定着を
- 【Q1】宅地建物取引業者A(甲県知事免許、事務所数1)が、甲県の区域内に新たに2つの支店を設けて宅地建物取引業を営もうとする場合、額面金額1,000万円の地方債証券を供託して営業保証金に充てれば足りる。(H17 問33)
- 【Q2】宅地建物取引業者Aが、営業保証金を金銭と有価証券で供託している場合で、本店を移転したため最寄りの供託所が変更になったとき、Aは、金銭の部分に限り、移転後の本店の最寄りの供託所への営業保証金の保管替えを請求することができる。(H11 問38)
こう考えよう!<解答と解き方>
Answer1
【解説】事務所を2つ増設したので、500万円×2=1,000万円分の供託が必要になりますが、地方債証券は額面の90%評価なので、供託額が不足しています。
Answer2
【解説】有価証券を含めて供託している場合は、全額について新供託所に供託したうえで、旧供託所から取り戻す手続きが必要です。金銭部分のみの保管替え請求はできません。
植杉 伸介
宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を35年以上務める。著書に『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2022』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。