税務相談
2023.06.14
不動産お役立ちQ&A

Vol.50 住宅取得等資金贈与に係る贈与税の非課税制度における取得要件と居住要件


Question

「住宅取得等資金贈与に係る贈与税の非課税制度」(以下「非課税制度」)の適用要件のうち、住宅用家屋の取得要件と居住要件について教えてください。

Answer

この非課税制度の適用を受けるためには、原則として、①贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用家屋の新築等をし(取得要件)、かつ②贈与を受けた年の翌年の12月31日までに遅滞なくその家屋に居住すること(居住要件)が要件とされます。

1. 住宅取得等資金の非課税制度の概要

その年の1月1日において一定の要件を満たす個人が、令和5年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用家屋の新築もしくは取得または増改築等の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、受贈者ごとに、非課税限度額(新築等をした住宅用家屋が省エネ等住宅(注)の場合は 1,000万円、それ以外の住宅の場合は500万円)までの金額について、贈与税が非課税となります(租税特別措置法(措法)70条の2第1項)。

(注)省エネ等住宅とは、省エネ等基準に適合する住宅用家屋であることについて、一定の書類により証明されたものをいいます。

2. 非課税制度における取得要件

(1)概要

非課税制度の適用を受けるためには、贈与を受けた日の属する年の翌年3月15日(以下「取得期限」)までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用家屋の新築(新築に準ずる状態として一定のものを含む)もしくは取得をすることが要件とされます。

(2)請負契約により住宅用家屋を新築するときの取得要件

(1)の場合において、請負契約により住宅用家屋を新築するときは、取得期限において屋根を有し、土地に定着した建造物と認められる時以降の状態であれば、(1)の「新築に準ずる状態」とされ、完成した住宅用家屋を同日後遅滞なく受贈者の居住の用に供することが確実であると見込まれるときには、一定の書類の添付により非課税制度の適用を受けることができます(措法70条の2第1項1号、措法施行規則23条の5の2第1項)。

(3)住宅用家屋を取得するときの取得要件

前記(1)の住宅用家屋の取得とは、売主から住宅用家屋の引渡しを受けたことをいいます。したがって、建売住宅や分譲マンションについては、売買契約が締結されている場合や、これらの建物が前記(2)に規定する新築に準ずる状態にある場合であっても、その引渡しを受けていない限り、住宅用家屋の取得には該当せず、非課税制度の適用を受けることができません(措法通達70の2−8、70の3−8)。

3. 非課税制度における居住要件

非課税制度の適用を受けるためには、原則として住宅取得等資金の贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住することが要件とされます。

贈与を受けた年の翌年の3月15日までに居住しない場合であっても、取得した住宅用家屋を同日後遅滞なく受贈者の居住の用に供することが確実であると見込まれる場合には、一定の書類の添付により特例の適用ができます(措法70条の2第1項)。ただし、贈与を受けた年の翌年の12月31日(以下「居住期限」)までに受贈者の居住の用に供されていない場合は、特例の適用ができないため、修正申告書の提出が必要となります(措法70条の2第4項)。

4. 災害等を受けた場合の取得期限および居住期限の1年延長等

(1)取得期限および居住期限の1年延長

贈与により金銭の取得をした人が、その金銭を住宅用家屋の新築等の対価に充てて新築等をする場合に、災害に基因するやむを得ない事情により贈与を受けた年の翌年3月15日までにその住宅用家屋の新築等ができなかったときには、取得期限と居住期限が1年延長されます(措法70条の2第11項)。

(2)居住要件の免除

住宅取得等資金の贈与を受けて住宅用家屋の新築等をした人が、その贈与を受けた年の翌年3月15日後遅滞なくその住宅用家屋を居住の用に供することが確実であると見込まれることにより、住宅取得等資金の贈与税の特例の適用を受けた場合において、その住宅用家屋が災害により滅失(通常の修繕によっては原状回復が困難な損壊を含む。)をしたため、居住することができなくなったときには、居住要件が免除され、非課税制度の適用を受けることができます(措法70条の2第9項)。

(3)居住期限の1年延長

贈与により金銭の取得をした人が、その金銭を住宅用家屋の新築等の対価に充てて新築等をする場合に、その贈与を受けた年の翌年3月15日後、遅滞なくその住宅用家屋を居住の用に供することが確実であると見込まれることにより、住宅取得等資金の贈与税の特例の適用を受けた場合において、災害に基因するやむを得ない事情により、贈与を受けた年の翌年12月31日までに居住することができなかったときには、居住期限が1年延長【贈与を受けた年の翌々年12月31日まで】されます(措法70条の2第10項)(図参照)。

図:被災した場合の取得期限・居住期限の1年延長等の特例のイメージ

被災した場合の取得期限・居住期限の1年延長等の特例のイメージ
(出典:国税庁『「 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」等のあらまし』を基に作成)

今回のポイント

  • 分譲マンションや建売住宅の「取得」は、売主から引渡しを受けたことをいい、贈与の年の翌年3月15日において住宅用家屋が屋根を有し土地に定着した建造物と認められる時以降の状態にある場合であっても、引渡しを受けていなければ非課税制度を適用することはできない。請負契約による「新築」の場合と取扱いが異なるので、注意を要する。

山崎 信義

税理士法人タクトコンサルティング
情報企画部部長 税理士

山崎 信義

2001年タクトコンサルティング入社。相続、譲渡、事業承継から企業組織再編まで、資産税を機軸にコンサルティングを行う。中小企業庁「『事業引継ぎガイドライン』改訂検討会」委員などを歴任。著書に『不動産組替えの税務Q&A』(大蔵財務協会)、『事業承継 実務全書』(日本法令)など。