前回に続いて都市計画の内容(都市計画のメニュー)について学習していきます。都市計画の名称や内容がまぎらわしいものがあるので、その区別のポイントをしっかり押さえることが大切です。
都市計画の内容
1. 用途地域以外の地域地区
区域区分よりもっと具体的な都市計画のメニューとして、地域地区と呼ばれるものがあります。地域地区のうち用途地域については先月号で学習したので、今月号ではそれ以外の地域地区について学習のポイントを示していきます。
①用途地域内のみに定める地域地区
特別用途地区 | 用途地域内の一定の地区における当該地区の特性にふさわしい土地利用の増進、環境の保護等の特別の目的の実現を図るため当該用途地域の指定を補完して定める地区 |
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高度地区 | 用途地域内において市街地の環境を維持し、または土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度または最低限度を定める地区域 |
高度利用地区 | 用途地域内の市街地における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図るため、①容積率の最高限度および最低限度、②建ぺい率の最高限度、③建築物の建築面積の最低限度、④壁面の位置の制限を定める地区 |
<アドバイス>
これら3つの地域地区には重要な共通点があります。それは、すべて用途地域内に定められるということです。別の言い方をすれば、用途地域が定めてある場所にしか、定めることができません。
高度地区と高度利用地区はまぎらわしいので、両者の区別のポイントを押さえておく必要があります。区別のポイントは、高度地区は建築物の「高さ」について定める地区であるのに対し、高度利用地区は建築物の「容積率」等について定める地区である点です。高度利用地区は、「高度」と「地区」の間に「利用」という文言が入るので、直接的に高さを制限することはなく、容積率などを制限することによって間接的に高さに影響する、という覚え方をするといいかもしれません。
②補助的地域地区
特定用途制限地域 | 用途地域が定められていない土地の区域内において、制限すべき特定の建築物等の用途の概要を定める地域 |
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特例容積率適用地区 | 一定の用途地域(第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域または工業地域内)において、建築物の容積率の限度からみて未利用となっている建築物の容積の活用を促進して土地の高度利用を図るため定める地区 |
高層住居誘導地区 | 利便性の高い高層住宅の建設を誘導するため、第一種・第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域および準工業地域で、容積率が10分の40または10分の50と指定されている地域において定める地区 |
<アドバイス>
特定用途制限地域は、用途地域が定められていない区域にのみ定める点がポイントです。ただし、市街化調整区域に定めることはできません。
特例容積率適用地区を定めることができる地域は、第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域、工業専用地域以外の用途地域というように覚えるとよいでしょう。
高層住居誘導地区について、「高層住居」という名称から連想して第一種・第二種中高層住居専用地域と結びつけてしまいそうですが、第一種・第二種中高層住居専用地域には高層住居誘導地区を定めることはできない点に注意してください。
2. 地域地区以外の都市計画
①都市施設
都市施設とは、都市生活に必要な公共施設等を設置する都市計画です。都市施設について押さえておくべきポイントは、次の3点です。
① 都市施設は、都市計画区域外にも定めることができる。
② 市街化区域および非線引き都市計画区域には、都市施設のうち道路、公園、下水道を必ず定める。
③ 住居系の用途地域には、都市施設のうち義務教育施設を必ず定める。
②地区計画
地区計画は、比較的小規模の地区を単位として、その地区の特性に応じたキメ細かな街づくりをするというイメージの都市計画です。地区計画のポイントは、次の2点です。
①地区計画は、都市計画区域であれば、市街化調整区域にも定めることができるが、準都市計画区域には定めることができない。
②地区計画の区域内において、土地の区画形質の変更や建物の建築等をする場合には、当該行為に着手する日の30日前までに、市町村長に届け出なければならない
問題を解いてみよう!
知識の定着を
- 【Q1】高度利用地区は、用途地域内において市街地の環境を維持し、または土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度または最低限度を定める地区である。(H28 問16)
- 【Q2】高層住居誘導地区は、住居と住居以外の用途を適正に配分し、利便性の高い高層住宅の建設を誘導するため、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域等において定められる地区をいう。(H17 問19)
こう考えよう!<解答と解き方>
Answer1
【解説】本問の記述内容は、高度利用地区ではなく、高度地区に関するものです。高度利用地区では、建築物の高さは定めず、容積率の最高限度および最低限度等を定めます。
Answer2
【解説】高層住居誘導地区を定めることができるのは、第一種・第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域および準工業地域です。第一種・第二種中高層住居専用地域には定めることができません。
植杉 伸介
宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を35年以上務める。著書に『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2022』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。