Vol.56 売買重要事項の調査説明 ~法令調査編③~
建築基準法上の該当道路の調べ方
平成21年1月20日、国土交通省は、全国の各都道府県および政令指定都市の長に宛てて、「建築基準法道路関係規定運用指針について」(国住街第192号)を改定し、地方自治法に基づく技術的助言を通知しています。この通知からは、“建築基準法上の道路”の具体的内容がうかがわれます。
法第42条1項の道路とは
「原則、道路の幅員が4m以上のものが建築基準法上の道路である旨を定めている。ここでいう道路の幅員とは、一般交通の用に供される部分をいい、側溝はこれに含まれるが、法敷は含まれない」。しかし、全国の都道府県や政令指定都市の一部では、“法敷き”には目をつぶっているところも多く、特に斜面地の多い都道府県では、指針にこだわると無道路地となり、宅地が減り、人口減少に陥るため、“現状は指針どおりではない”ということが大切です。
基準法上の道路幅員を4mとする理由
道路幅員を4mとする理由は、「一般交通の用に供するものとしての交通上の観点に加えて、建築物またはその敷地の安全上、防火上および衛生上の観点」から、道路の定義を行っています。
法第1号道路(42条1-1)とは
法上の道路は、一般交通上の効用だけでなく、建築物の利用上支障がないことや非常時における防火、避難等安全上支障がないことを要します。現幅員すなわち現に供用されている部分のみが法第42条第1項第1号に規定する道路となります。また、「道路法による道路と平行して水路等が存在する等の場合は、当該道路の幅員と当該水路等の幅の合計が4m以上であっても、当該道路のみの幅員が4m以上でなければ法上の道路ではない」。しかし、都道府県によっては、道路と並行して存在する水路幅員が2m未満の場合や幅員にかかわらず、道路幅員と合わせて、法上の道路とするところもあり、指針どおりではありません。
法第2号道路(42条1-2)とは
「法第2号道路とは、都市計画法による都市施設としての道路で都市計画事業として整備されたものおよび開発行為によって整備されたもの」です。ほかに、土地区画整理法、旧住宅地造成事業に関する法律、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅および住宅地の供給の促進に関する特別措置法または密集市街地整備法などで整備された道路があります。
法第3号道路(42条1-3)とは
「法第3号道路とは、基準時※に現に存在する道で、基準時に道路としての効用を果たし得る程度の実態を備えており、かつ、幅員が4m以上であるものについては、公道・私道の別を問わない」。ここでいう道とは、「道路としての効用を果たし得る程度の実態を備えていることをもって足り、必ずしも側溝が設けられていたり、舗装が施されている必要はない」。
※基準時とは:法第3条の規定が適用されるに至った時点のことです。
法第4号道路(42条1-4)とは
「法第4号道路とは、道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅および住宅地の供給の促進に関する特別措置法または密集市街地整備法による新設または変更の事業計画のある道路で、2年以内にその事業が執行される予定のものとして特定行政庁が指定したもの」です。実務では、予算配分の都合で、都市計画街路を都市計画事業ではなく、道路法による事業計画で整備することが多いため、事業が完了していても、都市計画街路は計画決定のまま、残存しているケースがあります。
法第5号道路(42条1-5)とは
「法第5号道路とは、土地を建築物の敷地として利用するため、道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅および住宅地の供給の促進に関する特別措置法または密集市街地整備法等の法令によらないで築造する道で、これを築造しようとする者が位置の指定申請に基づいて特定行政庁からその位置の指定を受けたもの」です(ポイント参照)。
ポイント
法第5号道路(位置指定道路)とは、これを築造しようとする者が位置の指定申請に基づいて特定行政庁からその位置の指定を受けたものをいいます。
法第2項道路(42条2)とは
「法第2項道路とは、基準時に現に建築物が立ち並んでいる幅員4m未満の道で、特定行政庁が指定したもの」です。指定の判断基準は次のようになります。
①基準時の立ち並び:少なくとも、基準時に建築物が最低2棟以上立ち並んでいる道であること。
②基準時の幅員:基準時の道の幅員は、一般交通の用に供している部分で、みなし境界線の位置は、現在の道路の中心線ではなく基準時の道の中心線から振り分けた位置。
③基準時の道:法第42条第2項に規定する幅員4m未満の道は、基準時に、一般交通の用に供されている道でなければ、同項に規定する現に建築物が立ち並んでいる幅員4m未満の道には該当しません。
法第43条第1項(43-1)とは
法第43条第1項は、建築物の敷地は、法第42条に規定する法上の道路に2m以上接していなければならないこととし、これを満たさない敷地には、原則として建築物の建築を認めないこととしています。
道路種別とその要点まとめ
- ●道路法上の道路(法第1号道路)
- 幅員4m以上の道路。国道・都道府県道・市町村道
- ●法令に基づいて築造した道路(法第2号道路)
- 幅員4m以上の道路。土地区画整理法等による道路・開発道路 など
- ●建築基準法施行時、または都市計画区域編入時にすでに存在する道路(法第3号道路)
- 幅員4m以上の道路(第42条1-1の道路は含まない)
- ●法律によって新設・変更の事業計画がある道路(法第4号道路)
- 幅員4m以上の道路、次の項目を満たす道路が該当する[2年以内にその事業の執行が予定されている/特定行政庁が指定している]
- ●位置指定道路(法第5号道路)
- 幅員4m以上の道路。次の項目を満たす道路が該当する[建築基準法令等で定める基準に適合する道路/特定行政庁から位置指定を受けている]
- ●2項道路(法第2項道路)
- 幅員4m未満の道路。次の項目を満たす道路が該当する[すでに道として使用され、道に沿って建築物が最低2棟以上立ち並んでいる/特定行政庁が指定している など]
不動産コンサルタント
津村 重行
三井のリハウス勤務を経て有限会社津村事務所設立。2001年有限会社エスクローツムラに社名変更。消費者保護を目的とした不動産売買取引の物件調査を主な事業とし、不動産取引におけるトラブルリスク回避を目的に、宅建業法のグレーゾーン解消のための開発文書の発表を行い、研修セミナーや執筆活動等により普及活動を行う。著書に『不動産物件調査入門 実務編』『不動産物件調査入門 取引直前編』(ともに住宅新報出版)など。