2024年4月「改正障害者差別解消法」施行で不動産業者に求められる対応とは?
この4月から「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下、障害者差別解消法)」の一部が改正され、障害がある人への合理的配慮の提供が義務化されました。これにより求められるのは、双方の建設的対話による相互理解と柔軟な対応です。以下で、その考え方とポイントについて解説します。
はじめに
宅建業者は、適正な不動産取引を通じて、人々が望むくらしの場を提供する役割を担います。すべての国民は、個人として尊重されなければならないのであり、障害の有無によって分け隔てられることなく、ともに生活を営むことができる住環境の実現に尽力をしなければなりません。
障害を理由とする差別解消の推進を目的として定められているのが、障害者差別解消法です。平成25(2013)年6月に制定された法律ですが、今般改正され、改正法が令和6(2024)年4月に施行されました。宅建業者の対応については、令和5(2023)年11月に国土交通省により詳細な対応指針が示されています(「国土交通省所管事業における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」。以下、対応指針)。
本稿では、今般の障害者差別解消法のポイントを確かめたうえで、改正後の同法のもとで、宅建業者として、どのような対応をするべきなのかを説明します。
差別禁止の2つの内容
事業者には、障害を理由とする差別が禁じられます(差別禁止)。差別禁止には、①差別行為の禁止、②合理的配慮をする義務の2つの内容があります(図表1)。
宅建業者としての対応①
(差別行為の禁止)
障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否すること、場所・時間等を制限すること、障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより、障害者の権利利益を侵害することは許されません(障害者差別解消法8条1項)。
対応指針によれば、図表2に示した宅建業者の行為は、差別行為に該当します。
なお、障害者に対する取扱いが、客観的に見て、安全の確保 、損害発生の防止、事業の目的・内容・機能の維持などから正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合には、不当な差別的取扱いにはなりません。
宅建業者としての対応②
(合理的配慮をする義務)
事業を行うに当たっての個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、必要かつ合理的な配慮をしなくてはなりません(同法8条2項)。従前、合理的配慮については、法的な義務ではありませんでしたが、今般の改正によって法的な義務となりました。
対応指針によれば、宅建業者は、図表3に示した行為を行う義務があります。
なお、合理的配慮は、事業者の事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られます。障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けることがその目的であり、合理的配慮を提供するにあたっては、障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段および方法について、双方の建設的対話による相互理解を通じて、柔軟に対応することが必要です。
まとめ
障害の有無によって分け隔てられることのない社会を目指すというのは、抽象的にいえば、誰もが自然に理解することができる理念です。しかし、具体的にどのような行為が禁止されるのか、どのような配慮をしなければならないのかを速やかに判断することは必ずしも容易ではありません。日常業務においては、さまざまな状況が生じますから、どのような場面においても適切な判断ができるように、普段から宅建業者としてなすべきことをきちんと考え、準備をしておくことが必要だと考えます。
執筆
山下・渡辺法律事務所 弁護士
渡辺 晋