宅建士講座
2024.09.13
宅建士試験合格のコツ

Vol.66 宅建業法
~免許の基準等~


宅建業の免許の基準に関する知識は、宅建業者の免許の取消し、宅建士の登録の基準、宅建士の登録の消除にも深く関わってきます。本試験でも複数の問題に関連することがあるので、宅建業法の学習においては、早い段階で免許の基準に関する知識を押さえておく必要があります。

❶免許の基準

宅建業を営むためには、原則として宅建業の免許が必要ですが、宅建業法には、以下のような免許の基準(欠格事由)が定められています。これらの欠格事由に該当する場合は、免許を受けることができません。


① 破産者で復権を得ない者

※復権を得れば直ちに(5年待つことなく)免許を受けられるようになる。


② 免許取消処分

※上記3つの理由(要するに悪いことをしたという理由)以外で免許を取り消された場合は、免許欠格とはならない。また、免許欠格となるのは、免許取消処分を受けた場合だけであり、業務停止処分しか受けていない場合は免許欠格とはならないことに注意。


③ ②の業者が法人の場合

※免許取消に係る聴聞の期日等の公示日前60日以内に法人の役員であった者は、その法人とともに5年間の免許欠格となる。不正行為等が発覚しそうになってからあわてて役員を退任しても責任を免れないということ。


④ 廃業等の届出

※免許取消処分の手続きが始まってから、あわてて自分から宅建業を廃業等することによって、処分を逃れることを防止するための規定。


⑤ 合併による法人の消滅・廃業等の届出

※上記④の法人の役員に対する欠格事由。


⑥ 刑罰

※通常の犯罪であれば、禁錮以上の刑が欠格事由となり、罰金刑は欠格事由とならないが、宅建業法違反、暴力的犯罪および背任罪は、罰金刑でも欠格事由となる。


⑦ 不正行為の危険がある者

・暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
・免許申請前、5年以内に宅建業に関して不正または著しく不当な行為をした者
・宅建業に関し不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者


⑧ 心身の故障により宅建業を適正に営むことができない者

※精神の機能の障害により、宅地建物取引業を適正に営むに当たって必要な認知、判断および意思疎通を適切に行うことができない者


⑨ 役員または政令で定める使用人の審査

※免許を申請する法人または個人自体には欠格事由がなくても、役員等の幹部に欠格者がいた場合、免許を受けられないとする規定。


⑩ 未成年者

※営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない(宅建業について法定代理人から営業の許可を受けていない)未成年者については、未成年者本人だけでなく、その法定代理人の欠格事由もチェックされる。


⑪ 暴力団員がその事業活動を支配する者


⑫ 専任の宅建士

事務所について専任の宅建士の設置要件を欠くとき


⑬ 書面記載不備


上の表の③⑤における「役員」には、取締役などの肩書きを有する者だけでなく、肩書きはなくても法人に対して取締役などと同等の支配力を有する者(たとえば、大株主)も含まれます。

また、⑥刑罰については、次の点に注意してください。

●執行猶予付きの刑 → 猶予期間中は免許を受けられないが、猶予期間が満了すれば直ちに免許を受けられる。

●控訴・上告中の者 → 現時点では免許を受けられる。

❷免許の条件

免許権者は、免許の新規付与および更新の際に、免許に条件をつけることができます。宅建業者がその条件に違反したときは、免許権者は宅建業の免許を取り消すことができます(任意的取消し)。

❸免許証の交付

免許権者が免許をする場合、免許申請者に対して免許証を交付しなければなりません。

問題を解いてみよう!

  • 【Q1】 宅地建物取引業者が、免許を受けてから1年以内に事業を開始せず免許が取り消され、その後5年を経過していない場合は、免許を受けることができない。(R2・12月 問31)
  • 【Q2】 A社は、不正の手段により免許を取得したことによる免許の取消処分に係る聴聞の期日及び場所が公示された日から当該処分がなされるまでの間に、合併により消滅したが、合併に相当の理由がなかった。当該公示の日の50日前にA社の取締役を退任したBは、当該消滅の日から5年を経過しなければ、免許を受けることができない。(H27 問27)

ic_kaisetsuこう考えよう!<解答と解説>

Answer1
×

【解説】免許取消処分を受けたとして5年間の欠格事由となるのは、不正手段で免許取得、業務停止処分事由に該当し、情状が特に重い、業務停止処分違反を理由とする場合だけです。

Answer2

【解説】Bは、聴聞の期日等の公示日前60日以内に法人の役員であった者なので、法人が合併消滅した日から5年間は免許を受けることができません。


植杉 伸介

植杉 伸介

宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を35年以上務める。著書に『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2024』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。