宅建士講座
2025.10.14
宅建士試験合格のコツ

Vol.76 法令上の制限
~盛土規制法(2)~


前回に引き続き、盛土規制法の法改正点のうち、受験対策上重要と思われるポイントを紹介します。なお、本試験では、改正点以外の部分も出題されますので、本稿で改正点を学ぶついでに盛土規制法全体についても学習しておいてください。

❶特定盛土等規制区域の規制

(1)許可制

特定盛土等規制区域が法改正により新設されましたが、特定盛土等規制区域において、特定盛土等または土石の堆積を行おうとする場合、工事主は、当該工事に着手する前に、都道府県知事の許可を受けなければならないのが原則です。ただし、特定盛土等規制区域内において許可が必要とされる特定盛土等および土石の堆積の規模は、次のように宅地造成等工事規制区域(宅造区域)内のそれとは異なっています。

① 盛土をした部分に高さ2m(宅造区域では1m)を超える崖が生ずる場合

② 切土をした部分に高さ5m(宅造区域では2m)を超える崖を生ずる場合

③ 盛土と切土を同時にする場合は、高さ5m(宅造区域では2m)を超える崖が生ずる場合

④ 上記①~③の崖を生じない盛土であって、高さ5m(宅造区域では2m)を超えるもの

⑤ 上記①~④に該当しない盛土・切土であっても、盛土・切土をする土地の面積が3,000㎡(宅造区域では500㎡)を超えるもの

⑥ 土石の堆積で、高さが5m(宅造区域では2m)を超え、かつ面積が1,500㎡(宅造区域では300㎡)を 超えるもの

⑦ 土石の堆積を行う土地の面積が3,000㎡(宅造区域では500㎡)を超えるもの

図表出典:『パーフェクト宅建』より抜粋編集
図表出典:『パーフェクト宅建』より抜粋編集

(2)届出制

特定盛土等規制区域内で行う特定盛土等または土石の堆積に関する工事については、工事主は、工事に着手する日の30日前までに、工事計画を都道府県知事に届け出なければなりません。また、届出をした工事計画を変更しようとするときも、変更工事を着手する日の30日前までに都道府県知事への届出が必要です。

届出が必要な特定盛土等の規模は、宅地造成等工事規制区域において許可の対象になっている工事と同じです。たとえば、盛土の場合、許可が必要なのは高さ2m超の崖を生ずる工事ですが、届出は高さ1m超の崖が生じれば必要になるのです。

❷基本方針および基礎調査

主務大臣(国土交通大臣および農林水産大臣)は、宅地造成、特定盛土等または土石の堆積に伴う災害の防止に関する基本的な方針を定めなければなりません。

都道府県(指定都市等についてはそれぞれの市)は、基本方針に基づき、おおむね5年ごとに、宅地造成等工事規制区域の指定、特定盛土等規制区域の指定および造成宅地防災区域の指定のほか、この法律に基づき行われる宅地造成、特定盛土等または土石の堆積に伴う災害の防止のための対策に必要な基礎調査として、これらに伴う崖崩れまたは土砂の流出のおそれがある土地に関する地形、地質の状況等に関する調査(基礎調査)を行い、その調査結果を、関係市町村長に通知するとともに、公表しなければなりません。

都道府県知事は、基礎調査のために他人の占有する土地に立ち入って測量・調査を行う必要があるときは、その必要な限度において、他人の占有する土地に、自ら立ち入り、またはその命じた者・委任した者に立ち入らせることができます。この場合、土地の占有者は、正当な理由がない限り、立入りを拒みまたは妨げてはなりません。

問題を解いてみよう!

  • 【Q1】 特定盛土規制区域内の森林において行う高さ3mの盛土で、当該盛土をする土地の面積が1,000㎡で、かつ、高さ1.5mの崖を生ずることとなるものに関する工事については、工事主は、当該工事に着手する前に、都道府県知事の許可を受けなければならない。(予想問題)
  • 【Q2】 都道府県知事は、基礎調査のために他人の占有する土地に立ち入って測量又は調査を行う必要があるときは、その必要の限度において、当該土地に、自ら立ち入り、又はその命じた者若しくは委任した者に立ち入らせることができ、当該土地の占有者は、正当な理由がない限り、その立入りを拒み、又は妨げてはならない。(R6・問19)

ic_kaisetsuこう考えよう!<解答と解説>

Answer1
×

【解説】特定盛土規制区域内の盛土の場合、盛土の高さ5m以下、崖の高さ2m以下、土地の面積3,000㎡以下という3点をすべてクリアしていれば、原則として許可を受ける必要がありません。

Answer2

【解説】記述のとおりです。なお、立入りにより他人に損害を与えた場合、都道府県は、これを補償しなければなりません。


植杉 伸介

植杉 伸介

宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を35年以上務める。著書に『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2025』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。