開発許可に関する問題は、本試験で毎年出題されています。開発許可については、許可の要否の問題のほか、許可手続きの一連の流れにおける問題も出題されます。今回は、許可手続き関連の知識を整理しておきたいと思います。
❶開発許可の手続き
開発許可手続きの一連の流れは、次のようになります。

(1)申請前の手続き
①1ヘクタール以上の開発行為の設計図書は、一定の資格を有する者が作成する必要があります。
②あらかじめ、開発行為に関係のある公共施設の管理者と協議してその同意を得、かつ、将来設置される公共施設の管理者等と協議しなければなりません。
③工事実施の妨げとなる権利を有する者の相当数の同意(全員の同意は不要)を得ておく必要があります。
Point
公共施設に関する「同意」の要否に注意。現在設置されている公共施設は「同意」まで必要だが、将来設置される公共施設は「協議」だけでよい。
(2)許可の申請
開発許可の申請は、必ず書面で行わなければなりません。許可申請書には、前述の公共施設に関する管理者等との同意書および協議書を添付する必要があります。
(3)許可・不許可の処分
許可の申請があった場合、都道府県知事は、遅滞なく、許可・不許可の処分をしなければなりません。この処分は、必ず文書で通知することを要し、さらに不許可の場合は、その理由も通知しなければなりません。
❷許可後の手続き
(1)開発行為の内容の変更
許可を受けた後に、開発行為の内容を変更する場合は、原則として、都道府県知事の許可を受けなければなりません。ただし、軽微な変更の場合は、許可まで受ける必要はなく、遅滞なく、都道府県知事に届け出ればよいことになっています。
(2)許可に基づく地位の承継
一般承継人(相続人等)は、許可を受けた地位をそのまま承継しますが、特定承継人(土地の譲渡を受けた者等)は、都道府県知事の承認を受けないと承継できません。
(3)工事の廃止
開発許可を受けた者が、開発行為に関する工事を途中で廃止した場合は、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければなりません。

❸工事完了後の手続き
(1)届出・検査・公告
開発行為を受けた者は、開発行為に関する工事が完了したときは、遅滞なく、都道府県知事に届け出なければならない
▼
都道府県知事は、届出があったときは、遅滞なく、当該工事が開発許可の内容に適合しているかどうかについて検査し、適合していると認めたときは、検査済証を交付しなければならない
▼
都道府県知事は、検査済証を交付したときは、遅滞なく、当該工事が完了した旨を公告しなければならない
(2)開発行為によって設置された公共施設
| 公共施設の管理 | 開発行為により設置された公共施設は、工事完了の公告の日の翌日において、原則として、その公共施設が存する市町村の管理に属する |
|---|---|
| 公共施設用地の帰属 | 公共施設用地は、工事完了の公告の日の翌日において、その公共施設の管理者に帰属する |
Point
施設そのものの管理の問題と、公共施設の用地の所有権帰属の問題をしっかり区別するように。また、工事完了公告の日ではなく、その翌日であることにも注意。
問題を解いてみよう!
- 【Q1】 開発許可を申請しようとする者は、あらかじめ、開発行為に関係がある公共施設の管理者と協議し、その同意を得なければならない。(R5・問16)
- 【Q2】 開発許可を受けた者から当該開発区域内の土地の所有権を取得した者は、都道府県知事の承認を受けることなく、当該開発許可を受けた者が有していた当該開発許可に基づく地位を承継することができる。(R5・問17)
こう考えよう!<解答と解説>
Answer1
【解説】開発行為に関係がある公共施設(既設の公共施設)については、あらかじめ、その公共施設の管理者と協議するだけでなく、同意まで得ておく必要があります。
Answer2
【解説】開発区域内の土地の譲渡を受けた者(特定承継人)は、都道府県知事の承認がないと開発許可を受けた地位を承継することができません。

植杉 伸介
宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を35年以上務める。著書に『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2025』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。