労務相談
2026.05.14
不動産お役立ちQ&A

Vol.47 私傷病休職の発令

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Question

2週間ほど欠勤が続いている社員がいます。くわしい状況はわかりませんが、私傷病(業務外の怪我や病気)が原因のようです。会社として、まずはどのように対処すればよいでしょうか。

Answer

私傷病が原因の場合は、医師の診断書の提出を求め、診断書を基に休職を発令するかどうかを検討することになります。休職を発令する際には、就業規則の規定に則(のっと)って進める必要があります。発令にあたっては、本人に事前に説明のうえ、休職期間、休職中の遵守事項、復職時の手続き、復職できない場合の取扱いについて、書面で通知することが望まれます。

私傷病休職の意義

休職とは、労働契約関係を維持しながら、労務への従事を免除する制度のことをいいます。休職は私傷病休職、事故欠勤休職、起訴休職、自己啓発休職などさまざまですが、会社がこうした休職制度を設けることは、法令上義務付けられていません。休職制度を設ける場合、会社は制度内容を就業規則で定める必要があり、その内容は自由に決めることができます。

私傷病休職制度は、私傷病により働けなくなった社員が回復するのを待ち、解雇を猶予することが目的であるとされています。会社にとっては、有用な人材を失うことや、リスクのある解雇の判断を当面避けられるメリットがある一方、社員にとっても労働契約を維持したまま治療に専念できるメリットがあることから、多くの会社が私傷病休職制度を導入しています。

私傷病休職の発令

①初期段階

本問のケースでは、本人の欠勤が2週間ほど続いています。もし怪我や病気ではなく、正当な理由のない欠勤である場合、その状態が続くと就業規則に定める解雇事由に該当し得ます。しかし、くわしい状況がわからなければ判断できませんので、本人に確認する必要があります。

私傷病が原因の場合、本人から自発的に医師の診断書の提出がないときは、今回のように欠勤が継続した時点で会社が診断書の提出を求め、提出された診断書を基に休職を発令するかどうか検討することになります。医師の診断書には、必要な療養期間の見込みを明記してもらうよう本人に指示します。なお、体の不調であってもメンタルの不調であっても、私傷病休職の基本的な考え方は同じですが、メンタル不調の場合にはより丁寧な対応が必要となります。紙幅の都合により今回詳細は割愛しますが、産業医や地域産業保健センターなどの専門機関に相談しながら進めることが望まれます。

②欠勤から休職まで

本人の様子や医師の診断書などを基に、「就労可能な状態ではない」と会社が判断した場合、休職を発令することになりますが、休職発令にあたっては、就業規則の規定に則って進めてください。

一般的には、就業規則に「私傷病による長期欠勤が一定期間に及んだときに休職とする」旨が定められていることが多く、その欠勤期間を満たした時に休職となりますが、欠勤期間として多く設定されているのは1カ月から6カ月です。実際には、欠勤に入る前に年次有給休暇を取得することが多いでしょう。

休職期間については、勤続年数別に異なる期間を設定していたり、勤続年数を問わず一律で設定していたり、また、試用期間中や勤続期間が短い社員について、休職の適用を除外している場合がありますので、自社の規定をご確認ください。なお、欠勤期間と休職期間は異なるものであり、所定の要件を満たして初めて休職が開始されます。

最初に提出された診断書に、例えば「1カ月の療養を要する」旨が記載されていた場合、おおむね1カ月が経過する頃に本人の話を聞き、復職が可能かどうかを判断します。残念ながら復職ができない場合、2回目以降の診断書を提出してもらい、就業規則に則って休職発令へと進みます(一例として、「図表:フロー例」をご参照ください)。

図表:フロー例(一例)

図表:フロー例(一例)


③休職発令

休職に入る前に、本人と休職中にやり取りする会社の窓口を決めておき、本人に説明を行うことが望まれます。説明する内容としては、休職期間、休職中の遵守事項、復職時の手続き、休職期間満了日に復職できない場合の取扱いなどとなります。

休職期間満了日に復職できない場合の取扱いについては、自然退職、もしくは解雇となる旨が就業規則に定められていることがほとんどですので、その内容を説明することになります。

本人に説明した後、上記内容を記載した書面を作成し、休職発令を行うことになります。休職発令に関して就業規則には、「~のときは休職を命ずる」と規定している場合もあれば、「~のときは休職とする」と規定している場合もあります。後者の場合、休職発令は必須ではないことになりますが、実務上はいずれの場合でも、必ず書面等で通知すべきです。なぜなら、休職の開始日・満了日や、休職期間満了日に復職できない場合の取扱いなどについて会社と本人との間に認識のずれがあると、休職期間満了の際にトラブルになるおそれがあるためです。

なお欠勤期間、休職期間について無給の場合などに、要件を満たせば健康保険の傷病手当金の給付を受けることができますので、併せて案内することが大切です。

おわりに

昨今は「1カ月程度の自宅療養を要する」などと記載された診断書を社員が提出し、その後音信不通となったり、会社から連絡を取らないまま時間が過ぎてしまったりするケースも見受けられます。そのため、こまめに連絡を取り、現在が「欠勤中」なのか「休職中」なのかといった、休職制度上の位置づけを会社と本人で共有する必要があります。

また休職期間中といえども、定期的に連絡したり診断書を提出したりするなど、休職者としての最低限の義務を果たす必要があること、加えて音信不通の状態が継続した場合には解雇や自然退職となることを伝えておくとが重要です。


北條 準

社会保険労務士法人
大野事務所

北條 準
(特定社会保険労務士)

メーカーで営業や生産管理に従事した後、労務管理への関心から大野事務所に入所。現在は労務相談や手続業務全般に携わっている。地道な営業活動や、部門間の意見調整を行ってきた経験から、常に当事者の目線に立った対応を心がけている。