マンションの売却の依頼を受け、仲介業務を行っていますが、このマンションでは、管理組合に理事が置かれず、総会で管理業者を管理者として選任する旨を決議し、管理業者が管理者としてマンション管理を行っていると聞きました。買主に重要事項説明をするにあたって、どのような注意が必要でしょうか。
Answer
管理業者が管理者として管理を行う方式を管理業者管理者方式といいます。重要事項説明では、管理業者管理者方式によってマンション管理が行われていることが説明事項になります。加えて、管理者事務の内容等の管理者受託契約の主たる内容もあわせて説明しておくべきです。
重要事項説明
宅地建物の売買・賃貸は、生活や営業の基盤を形づくる重要な取引です。宅地建物は大きな価値のある財産であり、一般の人々はそれほどたびたび取引に関与することはありません。しかも、不動産の状況や権利関係など、取引の前提として理解しておかなくてはならない複雑な事項がたくさんあります。
そのため宅建業法35条では、宅建業者に対し、売買・賃貸の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、書面(重要事項説明書)を交付したうえで、買主・借主への重要事項の説明をさせなければならない、という義務を課しました。宅建業者の重要事項説明によって、買主・借主が購入や賃借の前に、宅地建物とその取引条件に関する重要事項を理解し、十分な情報を得たうえで、宅地建物を購入・賃借するかどうかを判断できるようにするためです。
マンション管理についての説明事項
分譲マンションの売買や賃貸では、マンションの管理をマンション管理業者に委託しているときには、宅建業者は、「委託を受けている者の氏名(法人にあっては、その商号又は名称)及び住所(法人にあっては、その主たる事務所の所在地)」を重要事項として説明しなければなりません(宅建業法35条1項6号、同法施行規則16条の2第8号)。加えて、管理の委託先のほか、管理委託契約の主たる内容もあわせて説明することが望ましいとされています(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方第35条1項6号関係8)。
管理業者管理者方式
さて、マンション管理業者が、管理事務を受託するだけでなく、あわせて区分所有法上の管理者として選任され、管理者としての業務を行う管理方式を、管理業者管理者方式といいます。管理業者管理者方式のもとでは、管理組合には理事は置かれず、理事会という会議体は設置されません。理事長・副理事長・会計担当理事も存在せず、管理業者が管理者としてマンション管理業務を行います。区分所有者にとっては、管理業務に携わらなければならない負担が軽減され、管理業者による機動的なマンション管理を実現することができるというメリットがあるため、マンションにおける役員の担い手不足を背景として、最近広まってきています(図表)。
図表 管理業者が管理者になる方式

管理業者管理者方式においては、管理業者に広範な権限が付与されます。そのため不適切な管理や不当な費用支出が行われるおそれがあります。また管理業者が工事等の発注者として、自社や関連会社と取引を行うことになるため、区分所有者の利益が害される事態が懸念されます。区分所有者としては、みずからが理事に就任するなどの煩わしさは回避できるものの、他方で管理業者による適正な管理が行われているかどうか、格段の注意を払うことが必要になるわけです。
そこでマンションの売買では、管理業者管理者方式によってマンション管理が行われている場合には、宅建業者はその旨を重要事項として説明しなければならないものとされました(同法施行規則16条の2第9号)。さらにこの説明を行うにあたっては、マンション管理業者が受託する管理者事務の内容等の管理者受託契約の主たる内容もあわせて説明することが望ましいとされています(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方第35条1項6号関係9)。
まとめ
管理業者管理者方式においては、マンション管理業者が管理組合の管理者を兼ね、工事等の受発注者となりますので、利益相反の問題が生じ、区分所有者の利益が損なわれる懸念があります。そこで、令和7年5月の「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」によるマンション管理関係の制度の見直しの中で、マンション管理適正化法が改正され、所要の措置が講じられました。
マンション管理のあり方は、宅建業者の業務とも大いに関係します。宅建業者のみなさまも、宅建業法を遵守するのはもちろん、マンション管理の最新の仕組みを知っておく必要があります。
今回のポイント
- マンション管理を管理業者に委託しているときには、マンションの売買や賃貸では、管理業者の氏名(法人にあっては、その商号又は名称)及び住所(法人にあっては、その主たる事務所の所在地)が説明すべき重要事項になる。
- マンションが管理業者管理者方式によって管理されている場合には、マンションの売買では、その旨が説明すべき重要事項になる。この説明を行うにあたっては、管理業者が受託する管理者事務の内容等の管理者受託契約の主たる内容もあわせて説明することが望ましいとされている。
- 管理業者管理者方式においては、管理業者が管理組合の管理者を兼ね、工事等の受発注者となるので、利益相反の問題が生じ、区分所有者の利益が損なわれる懸念がある。宅建業者も管理業者管理者方式について十分に理解しておく必要がある。

山下・渡辺法律事務所
弁護士
渡辺 晋
第一東京弁護士会所属。最高裁判所司法研修所民事弁護教官、司法試験考査委員、国土交通省「不動産取引からの反社会的勢力の排除のあり方の検討会」座長を歴任。マンション管理士試験委員。著書に『新訂版 不動産取引における契約不適合責任と説明義務』(大成出版社)、『民法の解説』『最新区分所有法の解説』(住宅新報出版)など。
