所有者不明土地問題対策のため、令和3年4月に民法と不動産登記法が改正されましたが、改正法は、令和5年、令和6年、令和8年の3段階で施行されました。改正法の施行が今年度で出そろったことになりますので、今回はその主な改正内容を紹介します。
❶相隣関係(民法)
(1)境界を越えた竹木の枝・根
土地の所有者は、隣地の竹木の「根」が境界線を越えるときは、自分で切り取ることができますが、「枝」が越境してきたときは、その竹木の所有者に切除させることができるのであり、自分では切り取ることができません。しかし、法改正により、下記の場合は越境した「枝」を自分で切り取ることができるようになりました。
- ①竹木の所有者に切除するよう催告したにもかかわらず、相当の期間内に切除しないとき
- ②竹木の所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないとき
- ③急迫の事情があるとき
(2)隣地使用権
土地の所有者が隣地の使用を請求できる場合として、従来は下記の①のみが定められていましたが、法改正により②と③が追加されました。
- ①境界またはその付近における障壁、建物その他の工作物の築造・収去・修繕をする場合
- ②境界標の調査または境界に関する測量をする場合
- ③上記(1)で述べた枝の切り取りをする場合
なお、使用権が認められているのは「隣地」であり、「隣家」ではないことに注意してください。隣の住家へは、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることができません。
(3)ライフラインの設備の設置・使用
土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、または他人が所有する設備を使用しなければ電気・ガス・水道等の継続的給付を受けられないときは、必要な範囲内で他の土地に設備を設置し、または他人が所有する設備を使用することができます。
❷共有(民法)
(1)共有物の管理行為
これまで、共有物に変更を加える行為をする場合は、共有者全員の同意が必要とされていましたが、法改正により、軽微な変更については、各共有者の持分の価格の過半数で決定できることになりました。なお、軽微な変更とは、共有物の形状または効用の著しい変更を伴わない変更をいいます。
共有物の管理は、行為の種類に応じて、次のように行われます。

(2)所在等不明共有者の不動産の持分
不動産が共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、またはその所在を知ることができない(所在等不明共有者がいる)ときは、共有者は、裁判所に申し立て、その決定を得て、所在等不明共有者の持分を取得したり、その持分を含めて不動産全体を第三者に譲渡することができます。
❸相続登記および住所等変更登記の申請義務化(不動産登記法)
(1)相続登記
相続によって不動産の所有権を取得した相続人(遺贈によって取得した相続人も含む)は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転登記を申請しなければなりません。
(2)住所等変更登記
所有権の登記名義人は、氏名・名称または住所について変更があったときは、その変更があった日から2年以内に、変更の登記を申請しなければなりません。
問題を解いてみよう!
- 【Q1】 土地の所有者は、境界標の調査または境界に関する測量等の一定の目的のために必要な範囲内で隣地を使用することができる場合であっても、住家については、その家の居住者の承諾がなければ、当該住家に立ち入ることはできない。(R5・問2)
- 【Q2】 所有権の登記名義人は、氏名・名称又は住所について変更があったときは、その変更があった日から3年以内に、変更の登記を申請しなければならない。(予想問題)
こう考えよう!<解答と解説>
Answer1
【解説】記述のとおりです。土地に立ち入る行為に比べ、住家に立ち入る行為は、居住者のプライバシーを侵害する程度が大きいからです。
Answer2
【解説】相続登記の申請期限は「3年」以内ですが、住所等変更登記の申請期限は「2年」以内です。両者を混同しないように気をつけてください。

植杉 伸介
宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を35年以上務める。著書に『マンガ はじめてマンション管理士・管理業務主任者』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2025』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。