Vol.9 他行からの借換え希望には、このような点を注視します
金利が上昇局面にあるなか、銀行からの借入れ中の融資についての金利引上げ依頼などの対応に嫌気が差し、別の銀行への借換えを検討されている方も多いのではないでしょうか。実際に借換えを決断し、別の銀行に打診・照会・交渉される際には、応対する側で注視される事項をあらかじめ意識しておくことが有効と考えます。
金利交渉にみる銀行側の思惑
5月18日の国内債券市場で、一時、長期金利の指標となる新発の10年物国債の利回りが年2.8%まで上昇しました。近時、金利にはほぼ一直線での上昇が認められ、日本銀行が決定する政策金利との金利差も広がっているため、利上げ環境が整いつつあるように映ります[図表1]。
図表1 国内主要金利動向(2026年5月時点)[単位:%]
![図表1 国内主要金利動向(2026年5月時点)[単位:%]](https://magazine.zennichi.or.jp/wp-content/uploads/2026/07/202608-maruhi1.webp)
銀行の基本収益は、「貸出金利-預金金利」の差である鞘(さや)がもたらします。よって金利上昇期には、それを商機とにらんで貸出しと預金双方の金利の見直しに着手します。貸出金利の引上げをできるだけ早く、引上げ幅を大きくする一方、預金金利の引上げをできるだけ遅く、引上げ幅を小さくすれば両者の差が広がって収益が拡大するため、そうしようとします。
具体的には、変動金利型貸付では基準金利を引き上げ、否応なしに新金利を適用します。固定金利型貸付では、最終返済期日までの期間が短ければ次回借入れ時の金利引上げを予告し、返済期間が長い貸付けでは貸出し途上での金利引上げを交渉します。直接的な金利引上げだけでなく、固定金利型から変動金利型への切替えなども模索し交渉します。
事業者側に根負け傾向?
銀行側は、こうした金利交渉を組織的・計画的に実施しています。経験の浅い行員向けに、こうした金利引上げ予告・交渉のためのテキストや通信教育までが用意されているのです。
事業者側も、度重なる銀行側からの金利引上げ依頼への対応に疲れてきているためか、信用調査機関による調査では、金利引上げへの許容度合がわずかながら広がってきてもいるようです[図表2]。物価高の報道が続くなか、受け入れざるを得ないと諦めてしまっているのかもしれません。
図表2 メインバンクから今後の資金調達時の借入金利について既存金利よりも上昇を打診された際の上昇幅別の「受け入れる」比率[単位:%]
![図表2 メインバンクから今後の資金調達時の借入金利について既存金利よりも上昇を打診された際の上昇幅別の「受け入れる」比率[単位:%]](https://magazine.zennichi.or.jp/wp-content/uploads/2026/07/202608-maruhi2.webp)
その一方、取引先銀行側の理屈や姿勢に納得できず、新たな調達先を模索する動きも活発化しています。貸金庫などのごく少数の例外を除き、預金・融資・振込みなどに代表される銀行の商品やサービスには、形がありません(「無形」と呼ばれています)。それゆえに、別の銀行の商品やサービスと入れ替わったところで、店舗への距離や駐車場の停めやすさなどが変化するだけで、中核部分に不都合はないのです。
この事実は、銀行や行員側もよく理解しています。店舗で営業を担当した行員で、獲得手段として他行の取引からの借換えを打診したことのない者はおそらくいないからです。
既存取引行とのトラブルを重視
よって、新たな調達候補先として他行に借換え相談に行かれても、受け手側は特段非常識な申し出と認識したり、驚いたりはしません。受付後の審査の流れやその際の着眼点もある程度共通していますので、これらへの質問・照会を準備しておくことが有効です[図表3]。
図表3 借換えを希望された銀行側の着眼点

申込みや相談を受けた銀行側が最初に注視するのは、その理由です。「現在の金利水準と大幅に乖離(かいり)していない、無理のないものか」「既存取引行には希望・相談済みか/謝絶された際の理由は何か」などを尋ねられることでしょう。これらが①です。
その上で、「既存取引行との間にトラブルなどが生じていないか」を尋ねられることでしょう。実務上最も重視する箇所で、「あり」ならば、よほどのことがない限りは審査が通りません。行員という人種は「ウチの銀行ならばもっとうまくやる」とは考えず、「後々ウチの銀行とももめたら面倒だ」と受け取るためです。これらが②です。
①と②を満たした上で、貸出しを実行した場合の資金効果(㋐)や、返済不能時の担保などの換価性(㋑)を審査します。不動産業各位の場合は、㋑に慎重に向き合うことでしょう。
銀行は、実態上でも「よそに借り換えてもらっていい」と金利の据置き希望に応じないこともあります。それゆえに、借換えの相談を受けた銀行側も「最初に取引中の銀行の判断をなぞって検証する」とご理解ください。

オペレーショナルデザイン㈱
取締役デザイナー/データアナリスト
佐々木 城夛(じょうた)
1990年信金中央金庫入庫。欧州系証券会社(在英国)Associate Director、信用金庫部上席審議役兼コンサルティング室長、静岡支店長、地域・中小企業研究所主席研究員等を経て2021年4月に独立。「ダイヤモンド・オンライン」(ダイヤモンド社)、「金融財政ビジネス」(時事通信社)ほか連載多数。著書に「いちばんやさしい金融リスク管理」(近代セールス社)ほか。 https://jota-sasaki.jimdosite.com/