反社チェックの実務知識(ノウハウ)
取引をきっかけにクレームや不当な金銭要求をしてくる反社会的勢力(反社)。従業員を標的にしたり企業そのものに被害を生じさせるため、会社を守る上で関係遮断は必要不可欠です。しかし、反社チェックといっても何をどこまでやったらいいのか──。
ここでは、反社チェックの必要性や方法、契約書作成時の留意点、万が一取引先が反社だった場合の対処法など、不動産業者がおさえておきたい基礎知識とノウハウを実務に沿って紹介します。

反社会的勢力とは
〜反社チェックの必要性〜
反社会的勢力とは、暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団または個人をいいますが、実は、明確な定義はありません。「反社会的勢力」をとらえるに際しては、定義のみではなく、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要です(「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」より)。
私が弁護士になった2001(平成13)年当時、企業の暴力団対策・総会屋対策は民事介入暴力対策といって、弁護士の専門分野として取り組むべき重要な分野のうちの一つでした(今でも、弁護士会内では「民暴対策委員会」というのがあります)。弁護士会内でも頻繁に総会屋対策の研修が開催され、「やくざ」と対峙する先輩弁護士の話を皆真剣に聞いていました。平成3年に成立した暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴対法)は徐々に効果が出始め、平成23年には暴力団排除条例の全国施行となりました。この間、一般市民までも抗争に巻き込まれることもありましたが、諸先輩方や警察・その他関係機関の並々ならぬ努力により、暴力団は徐々に解散に追い込まれていきました。
しかし、現在、いわゆる指定暴力団ではなくても、暴力団と同様の威力や詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団や個人があることは皆さんご承知のとおりです。いつの時代であっても、彼らとは関わらない、契約しないということが最も効果的な排除手段であり、不動産業界においても、必要不可欠なことがらです。そして、反社会的勢力の排除が企業の信頼性・コンプライアンス上重要であるということは今では常識であるといえます。
実際のチェックの仕方
(1)契約書作成時の留意点
売買契約書、賃貸借契約書においては反社条項を盛り込んでおくことが重要です。モデル条項例が警察の外郭団体(公財)暴力団追放運動推進都民センターから公表されており、各社、これを参考にしています。
https://boutsui-tokyo.com/wp-content/uploads/kakuyaku.pdf
(2)実際のチェックの仕方
①反社チェックの対象取引
現実的には、社内で締結される契約すべてについて、反社チェックを行うことは、経済的利益を生まない業務であるにもかかわらず膨大な作業を要します。そこで、実際のチェックの対象としては、例えば、①取引金額による絞り込み、(例えば、1取引〇〇円以上はチェックする)②取引が反復継続しているか(例えば、〇回以上の取引はチェックする)による絞り込みをしてもよいでしょう。取引金額が低額であっても、継続的に取引する場合はチェックが必要になると思われます。不動産取引において、売買は高額ですし、賃貸借契約は継続契約ですので、売買・賃貸借契約においては必ず反社チェックが必要ということになります。その他の契約については自社で基準を決めておきましょう。
②チェック項目・手法
不動産業者の場合には、下記の大変便利な検索システムがありますのでご利用ください。
(公社)全日本不動産協会の「反社会勢力データベース照会システム」(図表) ※ログインが必要です。
https://www.zennichi.or.jp/mypage/contract2020/antisocial/
取引の種類が「売買」「売買の仲介・代理」の場合において、照会結果が該当ありとなった顧客に関しては、別人であることが明らかであるケース等を除いて、犯罪収益移転防止法に基づく「疑わしい取引の届出」が必要です。
届出の手続き方法等は、警察庁(JAFIC)のサイトをご確認ください。
https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/todoke/todotop.htm
その他のやり方として、以下が考えられます。
社内データベースの調査、商業登記簿の調査、現場担当者からの聴き取りをします。
また、ネット上の風評調査、新聞社の記事データベースによる調査(取引先名と代表者名で『不祥事』『不正』『違法』『隠ぺい』『違反』『暴力団』『総会屋』…などと検索してみます)も有効です。
詳細調査としては帝国データバンクでの調査や取引先の不動産登記簿調査、現地調査、疑いが生じれば民間の調査機関に依頼して高度な調査をします。
(3)事後チェックの方法
一般に、事前チェックをして契約を締結した後、その後も契約が続くものであれば、毎年1回程度、状況が変わっていないか再度反社チェックを行います。
(4)万が一、取引先が反社だった場合の対処法
反社であるとの疑いが生じた場合、都道府県暴力団追放センターに詳細確認をします。詳細確認の結果、反社の疑い濃厚ということになれば、契約の反社条項に基づいて契約の解消を求めます。
おわりに
社内データベースやチェックツールを利用しての調査、警察への照会等、万全の調査体制で臨んでも、反社会的勢力との取引リスクをゼロにすることは不可能です。万が一の事態はいつか生じ得ることを前提に、反社チェックの実施方法や頻度等について自社でルールを設けておきましょう。


弁護士
宮川 倫子(みやかわ みちこ)
第一東京弁護士会所属。倫(りん)総合法律事務所代表弁護士。不動産・ビル管理、中小企業、宗教法人の法務を中心に一般民事を行う。後見・相続財産管理人・犯罪被害者支援も多数扱っている。

