自主管理を続ける不動産オーナー様に管理委託を提案しても、毎月のコスト増を理由に断られがちです。物件の価値を維持するためには、良質な管理が必要と思われますが、どのように提案すべきでしょうか。
Answer
「目先のコスト」から「将来の物件価値と評価」へ視点を変えてもらいましょう。物件の資産価値を左右する3つの条件と、私たち管理会社が果たすべき役割を解説します。
時代とともに変化するオーナーのニーズに寄り添う
賃貸管理ビジネスにおいて、これからの時代に最も求められる役割の一つが、オーナーが保有する物件の「資産価値の維持・向上」です。昨今は物価や建築費の上昇、人口減少など、不動産を取り巻く環境が変化しています。そうした背景から、不動産の一部を戦略的に売却し、流動性の高い金融資産へ組み替えることで、資産ポートフォリオを最適化しようとするオーナーが増加しています。代々受け継いできた大切な不動産であっても、時代に合わせて柔軟に形を変えていくことが求められる時代です。私たち不動産会社は、ただ物件を管理するだけでなく、こうしたオーナーの「出口戦略」や「柔軟な資産運用」のニーズに寄り添う賃貸経営コンサルタントにならなければなりません。
資産価値を決めるのは「金融機関の融資姿勢」
不動産は他の金融商品と比べ「流動性が低い」特性があります。いざというときに「売りたい金額で、買い手がスムーズに買ってくれるか」が資産価値を測る大きなバロメーターとなります。
ここで極めて重要になるのが、「金融機関からの評価と融資」です。投資用不動産を現金一括で購入するケースはまれであり、買い手が金融機関から融資を受けて購入するケースが大半です。いくら買い手が熱望しても、金融機関が担保として高く評価し、融資の承認を下さなければ売買は成立しません。
近い将来に売却や相続がないとしても、「金融機関に高く評価してもらえる物件(=融資がつきやすい物件)」に仕立てておくことが不可欠です。
①収益性・成長性
(稼ぐ力を継続する提案)
安定した賃料収益を生む物件でなければ金融機関の評価は伸びません。どれほど外観が立派でも、空室が目立てば「収益力がない」と見なされます。ここで問われるのは、市場のニーズを的確に把握し「入居者に選ばれる部屋づくり」を提案する力です。例えば「高速無料インターネット」や「セキュリティ」などの人気設備投資も、やみくもに行うのではなく、立地やターゲット層から逆算した費用対効果を示す必要があります。
そのリアルなニーズを知っているのは、賃貸仲介の最前線である営業スタッフです。現場の生の声を取り入れた収益力向上の提案は、プロだからこそできることです。コスト削減を理由に自主管理を行うオーナーは、最新情報から孤立しがちです。私たちから積極的にアプローチし、プロのノウハウの収益的メリットを伝える必要があります。
②健全性(対応履歴の蓄積)
物件の「履歴書」とも言える修繕や管理の履歴(トラックレコード)の蓄積は、まさに管理会社の腕の見せ所です。築古物件であっても「いつ、どこを適切に修繕し、結果としていくらの賃料を維持・向上できているか」という履歴がデータで残っていれば、金融機関は「計画的に維持管理されており、突発的な修繕リスクが低い」と判断し、融資を実行しやすくなります。買い手としても安心して高値で購入できるのです。
また、建物の面だけでなく、過去の「入居者との対応履歴やトラブルの有無」といったソフト面の情報も非常に重要です。日頃からこれらの情報をきっちりとデータ化して蓄積し、属人化させない仕組みを作ること。そして物件の透明性を高めることこそが、管理会社の提供する「目に見えない大きな価値」となるのです。
③安全性
(適法性と入居者属性の維持)
物件の安全性やコンプライアンスの維持も私たちの重要な責務です。違法建築でないことは大前提ですが、「どのような人が入居しているのか」という入居者属性も厳しく問われます。
空室を早く埋めたいと焦るあまり入居審査を甘くすると、家賃滞納や入居者間トラブルを頻発させる悪質な入居者を招くリスクが高まります。普通賃貸借契約では入居者の権利が強く守られており、一度入居させてしまうと退去してもらうのは困難です。たった1人の存在が他の優良な入居者の退去を招く原因にもなります。厳格な入居審査を行い、優良な入居者属性を維持し続けることが物件の安全性を担保し、オーナーの資産を守ることにつながるのです。
自主管理オーナーへ「価値の維持」を提供しよう
これまで述べた「収益性」「健全性」「安全性」の3つを長期にわたってクリアし続けることは、オーナー自身が単独で行うには、時間的にも専門知識の面でも限界があります。
自主管理オーナーの多くは、「日々のクレーム対応や家賃集金」はこなせていても、修繕履歴や顧客対応履歴をデータとして整理し、将来を見据えた管理を行うことまでは手が回っていません。「フタを開けてみないと実態がわからないパンドラの箱」の状態では、いざ売却や相続となったときに物件の本当の価値を証明できないというリスクを抱えてしまいます。
だからこそ、私たち管理会社がその存在意義を示すのです。単なる「作業の代行業者」として日常業務をこなすだけでなく、資産価値向上という同じゴールに向かって伴走する「経営コンサルタント」にならなければなりません。
時代が転換点を迎えている今、自主管理を続けるオーナーに対しても、私たちが提供できる「資産価値の維持・向上」という大きなメリットをどんどん発信し、提案していきましょう。今まで以上に質を高めたプロフェッショナルな管理体制を提供し続けることこそが、オーナーの未来を守り、自社の管理ビジネスを強固に成長させる最大の鍵となるはずです。

みらいずコンサルティング株式会社
代表取締役
今井 基次
賃貸仲介、売買仲介、賃貸管理、収益売買仲介、資産形成コンサルティングの経験を経て、みらいずコンサルティング株式会社を設立。不動産業者・不動産オーナーの経験をもとにして、全国の賃貸管理業を行う企業へのコンサルティングや講演・研修活動を行う。聴講者はこれまでに3万人を超え、好評を得ている。CPM®、CFP®、不動産コンサルティングマスターなど多数の資格を保有。著書に『ラクして稼ぐ不動産投資33の法則 成功大家さんへの道は管理会社で決まる!』(筑摩書房)がある。
