Vol.18 不動産物件調査技術の基礎 ~役所調査編~
2項道路の調査の仕方
建築基準法第42条第2項(以下「2項道路」という)に該当する道路では、さまざまな状況により調査説明方法が変わります。トラブルに発展しやすい箇所ですので、大事な調査の仕方のポイントを解説します。
地積測量図がある場合
2項道路に該当しているとき、地積測量図がある場合の調査は、最初に、敷地の現況寸法を簡易計測します。公図上、道路と敷地が分割されて、地積測量図がそれぞれ存在する場合は、スムーズに敷地後退部分を示すことができます。
一方、公図上、道路と敷地が1筆の土地である場合は、地積測量図と現況がどのように相違しているかを調査します。特に、奥行き寸法の計測が大切です。
例えば、地積測量図の敷地の奥行寸法が12.0mであるときに、建築物の敷地として利用されている現況の敷地の奥行寸法が10.0mである場合、その差の寸法2.0mが道路部分です。この場合、現況の約4.0mの道路幅員の中心付近に、境界標が設置されている可能性があるので、その付近の境界標を探索します。境界標を発見できれば、再度、敷地がどの程度後退しているかを簡易計測します。
2項道路では、道路中心線から2.0m敷地後退した位置がみなし道路の境界線です。しかし、敷地後退部分が1.8mしかないという場合もあります。この場合は、「本物件敷地において再建築をする場合、現況の道路境界線より、さらに0.2mを敷地後退(セットバック)する必要があります」と説明します。このケースは、道路中心線から両側を互いに2.0m後退させ道路に提供して、2項道路に指定されている状況です(ポイント1)。
道路が認定道路である場合
前面道路が市区町村道である場合は、道路境界が確定している場合と、まだ確定していない場合とでは、状況が異なります。
■道路境界が確定している場合
道路境界確定図面と現地の道路とを照合させて、道路の境界標が敷地の前面や道路の区域の入口や出口付近にないかどうかを現地照合します。敷地の前面に道路境界標がなくても、街区の曲がり角付近まで歩いて境界標を探索すると、必ず見つかります。道路境界標と敷地との間の距離が道路幅員ですので、2つの間の距離を簡易計測します。この計測する箇所が調査対象地から離れている場合でも計測します。
例えば、その道路境界の幅員が2.727mである場合は、敷地の前面にも2.727mの道路があると考えられます。まだこの段階では、“おおよその前面道路の幅員”です。さらに、調査を進めて、街区の入口幅員において、今発見した道路境界標とその周辺の宅地の敷地後退状況が横並びにそろっているかどうかを観察します。また、敷地隣接付近においても、同じように、道路幅員が2.727mで敷地が約0.64mの敷地後退をしているかどうかを観察します。こうして、敷地周囲の敷地の状況から判断をして、「概ね、調査対象地も0.64mの敷地後退をしているだろう」ということが推定できます。
そして、このとき再度、道路境界標を探索します。この場合は、かなり高い確率で、何らかの小さい鉄鋲や石杭を設置しているケースがあります。この境界標は、とても重要な役割があり、再建築時に、敷地がどれだけ敷地後退をすればよいかを示してくれます。
■道路境界が確定していない場合
道路境界が確定していない場合は、現況では道路境界線が判別できません。せめて、敷地の地積測量図があれば、「現況では、概ね、現在の道路境界線は道路中心線より2.0mの敷地後退をしています」という説明が可能となります(ポイント2)。しかし、敷地の地積測量図もない場合は、原則的な説明をするしかなく、「再建築時、現況の道路幅員の中心線より2.0mの敷地後退をした位置が、みなし道路の道路境界線となりますが、将来、道路境界が確定した時点で、みなし道路の境界線が確定します」という説明になります。
ポイント1
2項道路に該当するとき、例えば(a)のように道路幅員が3.6mのとき、宅地の再建築時は0.2mの敷地後退が必要となります。また、(b)のように地積測量図があり、道路幅員が2.727mのときは、「約0.64m※の敷地後退が必要です」と容易に説明できます。
※道路中心線から2.0m敷地後退した位置がみなし道路の境界線となるため、(b)の道路の左側下にある赤枠の敷地においては、以下のような計算で約0.64mの敷地後退が必要となります。
2m-(2.727m÷2)=0.6365m≒0.64m
ポイント2
敷地の前面部分に道路境界標が見つかりません。このような場合は、下の写真のようにポールを置いて、「このラインが道路と敷地の概ねの境界線です。現況では、概ね0.64mの敷地後退をしています」というように、現況写真で説明をします。
不動産コンサルタント
津村 重行
昭和55年三井のリハウス入社。昭和59年に不動産物件調査業(デューデリジェンス業)に注目し、消費者保護を目的とした不動産売買取引の物件調査を主な事業とする有限会社津村事務所を設立。研修セミナーや執筆活動等を行っている。著書に『不動産調査入門基礎の基礎4訂版』(住宅新報出版)などがある。