今、注目のまち Vol.6 つくば市[茨城県]
「研究学園都市」50年の歩みを踏まえ皆で100年先を見据えたまちづくりを
少子高齢化など様々な課題を抱える我が国において、つくば市は、研究学園都市の歩みを次世代に継承しながら課題解決に向けたまちづくりを目指し、市民と共に新たな道を歩み始めています。
つくば市の今を形成した研究学園都市の建設
日本有数の学術都市として知られるつくばですが、その歴史は古く、1960年代までさかのぼります。発端となったのは、東京の人口過密解消と科学技術の振興、高等教育の充実を目的に、1963年に閣議了解された筑波研究学園都市の建設計画です。その後、1970年に筑波研究学園都市建設法が施行され、旧筑波郡筑波町・大穂町・豊里町・谷田部町、新治郡桜村及び稲敷郡茎崎町が「筑波研究学園都市の区域」に定められ、一帯は整備されるようになります。東京にあった国等の研究・教育機関はつくばに移設・新設されるとともに、都市施設の整備、民間企業の進出などを経て、現在のつくば市の骨格が形成されます。1985年には「人間・住居・環境と科学技術」をテーマにした「国際科学技術博覧会・つくば85」が開催され、国内外から約2,000万人が来場しました。これを機に、つくばは日本を代表する科学技術の拠点として世界的評価を受けます。つくば市役所の担当者は、これらの歩みを振り返りながら現状を「1987年には、筑波研究学園都市関係町村の合併により『つくば市』が誕生しました。そして2002年の茎崎町との合併を経て、研究学園都市の区域全てが『つくば市』となったのです。市には、産業技術総合研究所や筑波宇宙センター、筑波大学など29の国等の研究・教育機関をはじめ、多くの民間の研究機関等が立地し、約20,000人の研究者が様々な研究活動に従事しています」と話します。
独自の教育スタイルに子育て世代の転入が増加
学術都市としての歩みは、つくば市の人口増加にもつながっています。つくば市の担当者の話によれば「1955年以降、一定水準を維持していましたが、筑波研究学園都市建設の閣議了解後の1969年には、研究学園都市開発事業の総合起工式が行われ、1970年代の高度経済成長や公務員宿舎への入居と相まって人口が増加しました。1980年の研究学園都市の概成以降も区画整理・住宅地開発とともに、増加は続きましたが、1995年以降は緩やかな増加となっています」とのこと。そして2005年に、東京・秋葉原と筑波研究学園都市とを結ぶ高速鉄道「つくばエクスプレス(TX)」が開通したことで、さらに人口増加は拍車がかかります。その点に関して担当者は「土地区画整理事業等による沿線開発の影響により、転入超過の現象が続いています。その特性として、全世代において転入超過数は継続して増加傾向にあることと、第2に転入者の割合は生産年齢人口(大学生等含む)が多くを占めています。また、年少人口(0~14歳)の転入も多いことから、子ども連れで転入しているファミリー層が多いことが推察できます」と話します。
ファミリー層の転入増加には、つくば市の教育改革が影響しているといいます。いまでは一般化しているICT教育に関してもつくばは早期から取り組み、市制施行前から小学校でコンピューター教育を開始。1999~2003年度にかけては文科省の「先進的教育用ネットワークモデル地域事業」が実施され、2019年度には全中学校の普通教室に電子黒板を導入。環境整備はハード面にとどまらず、2012年度からは市立の全小中学校で一貫教育を始めています。これは市内の全小中学校53校を1小1中、もしくは1中学校に対し複数の小学校を振り分け、それをひとつの学園と指定。9年間の教育課程編成を組み、教科担任制やITスキルを活用した「つくばスタイル科」などをカリキュラムとして導入しています。筑波研究学園都市建設当時の目的のひとつだった高等教育の充実は身を結び、独自の教育スタイルは子育て世代から好評を得ています。当初は15学園でスタートしましたが、現在は義務教育学校4校を含む16学園・学校(図表1)で運営されています。
世界に認められる持続可能都市の形成へ
人口の東京一極集中が続き、地方都市の人口減少が問題視されている現在、つくば市は市制施行以降33年連続で人口が増加中という稀有な自治体でもあります。しかし、人口減少の波はつくば市にも迫りつつあるといいます。国立社会保障・人口問題研究所が発表した地域別将来推計人口(2018年3月)によると、つくば市の人口は2035年までは増え続けるものの、2040年を境に減少に転じるとのこと。これに対してつくば市は、人口のピークの到来を遅らせ、かつ水準を維持していくことを目標に(図表2)、市は2020年3月に『未来構想・戦略プラン』の改定を行いました」と回答。補足すれば、『未来構想』とは、市の全分野のまちづくりの指針となる構想で、かつては「総合計画」といわれていたもの。まちづくりの“百年の計”という百年先を見据えたまちづくりの考え方に基づき、研究学園都市のこれまでの50年の歩みを踏まえながら“つながりを力に未来をつくる”ことを理念としたまちづくりの指針です。改定発表の前には、市民と市長が意見交換をする場「つくば市未来構想キャラバン」を幾度も開催するなど、過程を踏んだといいます。また、この未来構想は、つくば市の人口減少を先延ばしにするだけでなく、いまや世界で認識されている「持続可能な社会」の実現に向けて様々な取組みが行われている中で、つくば市は独自の課題を克服しながら次世代に継承・発展させていく「持続可能都市」を目指すことも含まれています。
市民との共有を図りながら臨む戦略プラン
「未来構想」の計画期間は、21世紀半ばとなる2050年頃と定められていますが、長期的かつ、多くの市民が関わる未来を実現するためには、わかりやすいストーリーと現状をしっかりと把握し、共有することが不可欠です。そのため公表された未来構想の冊子は、バックキャスティング※と呼ばれる手法を活用し、“2030年につくば市をけん引する若手職員たちがタイムマシーンに乗って未来を見に行く”というコンセプトの元に作成されています。その中で「生涯いきいきと暮らせる人生100年時代の実現」「こどもも親も楽しく育つ環境の充実」「未来を切り拓く社会イノベーションの創出」など、若手職員たちは17の未来像を掲げ、イラストで表現しています。加えて、これらの未来像を実現するために策定されたのが「第2期戦略プラン」です。これは2020年度から5年間で取り組む施策で、各々に指標を設定し、わかりやすくビジョンを市民に伝えています。最後に今後のビジョンを聞くと、つくば市は「いまを生きる私たちは、筑波山や牛久沼などの豊かな自然、そして最先端の科学技術、世界に開かれた多様性など、様々な資産を受け継いでいます。その一方で、高齢化や将来起こりうる少子化、中心市街地の活力低下など、課題を抱えています。これらひとつひとつを解消し、未来につないでいくには、市民と課題を共有していくことが必要。向こう5年間、市民や民間企業、多くの関係者とともに、未来構想の実現に向けて、まずは戦略プランの目標達成に歩んでいきます」と話します。
※バックキャスティング:目標となる未来を定めた上で、そこを起点に現在を振り返り、今何をすべきか考える未来起点の発想法
Interview
地方本部長からひとこと
茨城県本部長
須田 洋次氏
海と山に恵まれ多彩な風土の茨城県は、住みやすい、魅力いっぱいの県です。日本百名山である筑波山の絶景、高さ100mの竜神大吊橋からのバンジージャンプ、国営ひたち海浜公園の季節の花々、映画やドラマのロケ地としても多く利用されています。
つくば市は、2万人を超える研究者を有する国内最大の科学技術拠点都市である一方、美術館等の文化施設も充実しております。
つくばエクスプレスや茨城空港により交通の利便性も高くなっておりますので、自然と科学が調和した茨城県へぜひお越しください。
つくば市の事業者にうかがいました
これからも事業を通した地域貢献を
株式会社アゲル
代表取締役
八十岡 豊氏
株式会社アゲル つくば店
茨城県つくば市研究学園4-1-9
TEL:029-886-3221 FAX:029-886-3225
営業時間/9:00~19:00 定休日/毎週水曜日、第1・3火曜日
当社は2000年の創業以来、「ローコスト・ハイクオリティー、妥協しない完全自由設計の家づくり」の考えに徹し、土地探しから資金計画、設計から施工まで、お客様の家づくりをトータル的にサポートしています。当社が「ローコスト」にこだわる背景には、私自身がマイホームに憧れていたこともありますが、前職で分譲営業に携わった際、高騰しつづける戸建住宅の値段に疑問を抱いていたからです。そのとき「安い値段でも住宅を持つことができれば、どれだけ幸せな人が増えるだろう」と思い、会社を立ち上げたのです。しかし、安ければいいというわけではありません。安いながらもしっかりとした品質の家でなければならない。建てた後もお客様の暮らしを豊かなものにする。この想いは私のみならず、全社員が共有して事業に当たっています。その甲斐もあり、契約いただけるお客様の4人に1人はОB客からの紹介です。「アゲルで家を購入してよかった」というお客様から頂く声が私たちの励みになっています。また、当社の売り上げに、つくばエクスプレスの開通が追い風になり、感謝しています。昨年は年間棟数200件ですが、そのうち3分の1がつくば市内でした。地域貢献といったことでいえば、数年前から地元の銀行が募る私募債を発行して、つくば市の学校に少額ではありますが寄付をしています。つくば市を担う子どもたちに少しでも力になれればと思い、起こした行動です。
おかげ様で、20周年を迎えた今年、創業から目標としていた売上50億円を達成できる見込みです。地元の恩恵を受けながら今後も皆様に快適な住まいを提供して地域に還元する。この活動は継続していきたいですね。