専任の宅建士の設置義務は、事務所等に宅建士を常駐させて、重要事項の説明を宅建士に確実に担当させるために定められています。本試験での出題頻度はあまり高くありませんが、未成年者の扱いについて誤解が生じやすいところなので、今回取り上げてみました。
宅建業
専任の宅建士の設置義務
(1)設置義務
宅建業者は、一定の場所に一定の人数の成年者である専任の宅建士を設置しなければなりません。専任の宅建士の退職等で、この設置義務を満たさない状態が生じたときは、2週間以内に後任の補充等の適合措置をとる必要があります。
(2)成年者である専任の宅建士を設置すべき場所と人数
<事務所>
業務に従事する者(総務・人事などの一般管理部門など、直接的には宅建業の業務に従事していない者も含む)の5人に1人以上の割合で(たとえば、業務従事者が6人いる場合は、そのうちの2人以上が専任の宅建士である必要がある)専任の宅建士を設置しなければなりません。
<案内所等>
下記の場所には、業務従事者の人数に関わりなく、1人以上の専任の宅建士を設置しなければなりません。
案内所等は、その場所で契約の締結または申込みの受付を行う場合のみ、専任の宅建士の設置義務があることに注意してください。
(3)未成年者の例外
未成年者は、原則として、事務所等に設置すべき専任の宅建士になれませんが、下記の例外があります。
未成年者が専任の宅建士となるためには、2つの関門があります。まず、第一の関門として、そもそも未成年者は、原則として、宅建士の登録自体ができません。例外的に登録するには、婚姻をしているか、法定代理人から営業の許可を受けること(宅建業の営業に関し成年者と同一の行為能力を有すること)が必要です。
登録を受けることができれば、宅建士証の交付を受けて、宅建士として職務を行うことはできます。しかし、未成年者である以上、そのままでは専任の宅建士として、5人に1人以上の人数にはカウントしてもらえません。この第二の関門を越える手段は、2つあります。1つは、婚姻をしている場合であり、もう1つは、その未成年者が、同時に宅建業者自身であるか、法人業者の役員である場合です。
問題を解いてみよう!
知識の定着を
- 【Q1】宅地建物取引業者Aは、1棟100戸のマンションを分譲するために案内所を設置し、当該案内所においては売買契約の申込みの受付のみを行うこととした。この場合、Aは、当該案内所に成年者である専任の宅地建物取引士を置く必要はない。(H19 問30)
- 【Q2】宅地建物取引業者は、20歳未満の者であっても、婚姻をした者については、その者を専任の宅地建物取引士として置くことができる。(H2 問35)
こう考えよう!<解答と解き方>
Answer1
【解説】契約の締結を行う場合だけでなく、契約の申込みを受ける場合も、一団の宅地建物を分譲するための案内所には、成年者である専任の宅建士を置く必要がある。
Answer2
【解説】20歳未満であっても、婚姻をした者は成年者とみなされるので、宅建業者は、その者を専任の宅建士として置くことができる。
植杉 伸介
宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を30年以上務める。著書に『マンガはじめて建物区分所有法 改訂版』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2021』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。