相続相談
2021.09.14
不動産お役立ちQ&A

Vol.6 相続により取得した空き家の譲渡所得の特別控除について


Question

両親が他界して空き家となった家を売却したいと思っています。譲渡所得がかなり発生しますが、何か控除等は受けられますか?

Answer

1. 制度の概要

平成28年度税制改正により、亡くなられた方(=被相続人)の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例が創設されました。具体的には、被相続人の居住用家屋及び居住用家屋の敷地等を相続した人が、平成28年4月1日から令和元年12月31日までの間に売却し、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができるようになりました。

さらに、本特例は令和元年度の税制改正により4年間延長され、令和5年12月31日までの譲渡に適用可能となりました。

また、令和元年度の税制改正により、平成31年4月1日以降の譲渡については、被相続人が相続の開始の直前において老人ホーム等に入居していた場合でも、一定の要件を満たす場合は本特例の適用が受けられるようになりました。

制度のイメージ

制度のイメージ

2. 特例の対象となる家屋及び敷地の要件について

(1)特例の対象となる家屋について

特例の対象となるのは相続の開始の直前において亡くなられた方(=被相続人)が居住していた家屋で、次の要件を満たす必要があります。

  1. 昭和56年5月31日以前に建築されていること
  2. 区分所有建物登記がされている建物でないこと
  3. 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいないこと

(2)特例の対象となる敷地等について

特例の対象となるのは、相続の開始の直前において上記の被相続人の居住用家屋の敷地として利用されていた土地等です。

3. 適用要件

本特例の主要な適用要件は表のとおりですが、被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等に関する遺産分割や相続発生直前の利用状況はケースバイケースのため、適用にあたっては、慎重な判断が必要です。

対象者売却した人が亡くなられた方(=被相続人)の居住用家屋と居住用家屋の敷地等の両方を相続等により取得していること
売却物件1 相続等により取得した被相続人居住用家屋を売却するか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売却すること
2 相続等により取得した被相続人家屋の全部の取壊し等をした後に被相続人居住用家屋の敷地等を売却すること
譲渡時期平成28年4月1日から令和5年12月31日までに譲渡を行うこと
相続発生日を起算点とした適用期間相続開始以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること(※)
建築年月日昭和56年5月31日以前に建築された家屋であり、区分所有建物登記がされていないこと
居住要件相続直前において、被相続人の居住用であり、かつ被相続人以外に居住していた者がいないこと
譲渡金額の制限売却価額が1億円以下であること
利用状況相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと
耐震基準家屋を譲渡する場合、その譲渡の時においてその家屋が現行の耐震基準に適合するものであること

(※)相続発生日を起算点とした適用期間

特例の適用期間の図
出典:国土交通省ホームページより抜粋・編集


野田 優子

野田綜合法律会計事務所
公認会計士・税理士

野田 優子

1995年公認会計士第二次試験合格。Price Waterhouse Coopers(PwC)国際部(現あらた監査法人)、大手税理士法人を経て2006年に独立し、野田綜合法律会計事務所設立。不動産に関する税務全般業務およびコンサルティング業務をメインに、相続および事業承継関連、M&A支援業務、上場支援業務、法人税申告業務などを行う。