「夢のまちづくり構想」が奏功し
村はいつしか“住み続けたいまち”に
「住みたいまち」「住みやすいまち」…そして「日本一平均年齢が若いまち」。
近年、様々なフレーズで形容され、注目を集めている愛知県長久手市。
今年1月、市制施行から10年を迎えた若い市が、なぜこれほどまでに話題に上るのでしょうか。
その理由を探っていきます。
50年間継続して人口増加を続けるまち
名古屋市の東側に位置し、60,520人(2022年2月1日現在)が暮らす愛知県長久手市。名古屋市に隣接する同市西部は住宅地・商業施設など都市化が進み、東部は今なお自然が残り、都市と自然豊かな田園の両面を持ち合わせるのが同市の大きな特徴です。また、市の中央を走る東部丘陵線リニモは、名古屋市営地下鉄・藤が丘駅(名古屋市)と愛知環状鉄道・八草駅(豊田市)を結び、車のアクセス面では名古屋瀬戸道路長久手ICを擁し、東名高速道路名古屋ICも近く、交通の便にも恵まれています。
2005年には、「愛・地球博」(日本国際博覧会)が開催され、世界中から半年間で約2,200万人が来訪し、これにより「長久手」の名が多くの人に知られるようになったといいます。そして、「長久手」の名が広く知られたことで、同市は前身の長久手町誕生(1971年)から50年間、“人口増加を続けるまち”という事実を表面化することになります。
土地区画整理事業で供給された多くの住宅地
昔、長久手市は人口1万人にも満たない、農耕を中心とした村だったといいます。しかし、1965年頃から日本経済の高度成長、名古屋市の都市拡張に伴い、住宅地としての需要が増加します。その波を受け、長久手では豊かで住みよいまちをつくるため、その理想を思い描いた「まち構想」を住民らとともに作り、まちづくりに着手します。『長久手町史』によると、長久手町基本構想は、無秩序な宅地化を防ぎ、自然と緑を守るため、町内を大きく住宅地・農用地・県有地に分け「計画的な土地利用を図ること」「住宅地は名古屋市に隣接した西部地域で、土地区画整理事業で宅地化すること」「低層住宅を中心とした土地利用の方針とすること」などが決められていきます。当時、“夢の構想”と例えられたこの構想が長久手のまちづくりの原点だといわれています。
その後、面的なまちづくりの手法として、土地区画整理事業が推進され、計画的なまちづくりがスタートします。長久手の土地区画整理事業は1972年に許可された長湫(ながくて)西部土地区画整理事業から始まり、現在までに9地区で事業が実施されており(うち6地区が事業完了、3地区が施行中)、その面積は約600haにも及びます。これは市街化区域面積の約80%に相当し、土地区画整理事業は長久手の市街地形成に大きく貢献することになります。この件に関して長久手市の担当職員も「1970年時点で、約1万人だった人口も区画整理事業が実施されたことで、現在は6万を超える人口まで増加しています。区画整理事業により多くの住宅供給がされたことが人口増加の大きな要因であることは間違いありません」と話します。
長久手市の人口増加は愛知県の人口動向調査でも群を抜き、1956年の調査開始以来、初めて県の人口増減数が減少に転じた2020年の調査においても同市においては「1.40%」という断トツの人口増加率を記録しています。
人口増加のまちから日本一若いまちへ
現在、人口増加を続けるまち・長久手は、いつしか「日本一平均年齢が若いまち」と形容されることが多くなります。それは2015年の国勢調査で住民の平均年齢が38.6歳であることが大きく報じられたことが発端となり、続く、2020年の同調査では住民平均年齢は40.2歳を記録(2010年時の調査でも「37.7歳」で1位)。依然「日本一平均年齢が若いまち」を維持しています。では、なぜ長久手には若い人たちが集まるのでしょうか。
メディア等で報じられている資料を参考に見ると「魅力的で若い人向けのショッピングエリアが多い」「交通の利便性がいい」「落ち着いた街並み」「開発が進み今後も期待が持てる」などが上位を占めています。確かに、前述した6地区で実施されていた土地区画整理事業がひと段落した2014年以降に、イオンモール長久手やIKEAをはじめとした大型商業施設が進出し、建設されています。特に2016年にオープンしたイオンモール長久手は、子育て世帯や女性目線の売り場づくりをテーマに掲げており、パウダールームやベビールームなども完備されています。日用品の買い出しはもちろん、シネマコンプレックスも入居しているため、これまで「都市部に出て映画を見るわずらわしさ」の解消にもつながり、市民から大きな支持を得ています。また、愛・地球博長久手会場の跡地に再整備された愛・地球博記念公園は、敷地面積約190haを誇り、芝生広場から野球場、子ども向けの広場まで、多種多様なアクティビティと自然にあふれ、憩いの場として人気を博しています。
「交通の利便性が高い」といった点では、東部丘陵線リニモの存在が大きいといえます。長久手市は、名古屋市と豊田市の間に立地しているため、名古屋市や豊田市で働く子育て世帯には最適な立地といわれています。教育機関が充実していることも若い世代から支持されるもうひとつの理由です。認可保育園、地域型保育施設が合わせて18カ所、小学校が6校、中学校が3校、高校が2校、大学や専門学校もあり、少子化が課題となっている日本において、1,000人超のマンモス校(小学校)が存在することも同市が長年にわたって「平均年齢が若いまち」であることを立証しているといえます。
では、長久手市の不動産事情はどうでしょうか。地元の不動産事業者に話を聞くと「確かに30代夫婦の新築戸建て需要が顕著です。子どもが少し成長したことで、アパートから戸建てに住み替えようという子育て世帯がよく相談に来ます。ほとんどが共働き夫婦で、世帯年収900万円くらいの方が多く見受けられます」とのこと。長久手エリアが選ばれる理由としては、前述の住みやすい環境などが大きく関係していることと、近隣の名古屋市よりも現状、手が出せる購入価格というところも理由としてあるようです。
地域でのつながりを強化し今後も住み続けたいまちに
土地区画整理による開発が段階的に進んだ結果、切れ目なく若い世代が転入してきた現象は、数十年にわたる“まちづくり”の成果であることは否めません。ただ、人口増加に続く長久手市も、他の地域同様に長期的には人口減少や高齢化は避けられないことも事実です。
同市はこれまで、長湫西部土地区画整理事業から始まり、東部、中部と進んできました。各区画整理事業の時期が違うこともあり、地域ごとの年齢構成比も異なります。これにより、住民が若い地区、高齢者が多い地区等、地域の実情に合わせた施策が今後、必要だといわれています。
この事実を踏まえ、長久手市の担当職員も「現在、人口が増加する予測ではありますが、2035年には人口のピークを迎え、将来的には高齢化、人口減少の課題が深刻化することが予想されます。今後、南海トラフ地震等の大災害や社会的孤立に伴う孤立死等の課題を乗り越えるためにも、地域での『つながり』が重要と考えています」と話します。
そこで、長久手市は地域共生社会の実現に向け、令和3年度からは「市長直轄組織 地域共生推進課」を設置し、重層的支援体制整備事業を進めています。これは、介護、障害福祉、子育て支援、生活困窮者支援といった既存の枠組に縛られない分野の横断的な相談体制を整備し、「生きづらさ」を抱える人を地域で支え合い、地域共生社会を実現するために誕生したといいます。「住みたいまち」から「住み続けたい」と感じるまちへ。長久手市の挑戦は続きます。
いまの価値ではなく10年そして20年先の資産価値を
住みたいまちと評されるエリアで事業を営む不動産事業者は、ここ10数年の変化をどのように見ているのでしょうか。
タケヤカンパニー株式会社・代表の竹内貴子氏に話を伺いました。
10~15年で坪単価が1.5倍以上上昇
―まずは事業内容・種目について教えてください。
長久手を中心に、名古屋及び近郊エリアの土地、新築戸建て、中古住宅・マンションの仲介・売買のほか、収益物件を保有していることから大家業も行っています。今でこそ取り扱う種目は増えていますが、起業当時は土地の仲介1本で事業していました。ただ、長久手の開発に比例するかのように業績もあがり、軌道に乗り始めたのは4年目を迎えたころだったと思います。
―長久手に住まれていたのですか。
いいえ。起業したのは2010年ですが、長久手で暮らし始めたのは愛・地球博が開催されたころです。まだ、長久手市ではなく長久手町の時代でした。人気エリアとなる長久手南部の土地区画整理が始まったころで、愛・地球博の開催と相まって、長久手が住宅地の穴場だということが広く知れ渡った時期です。東部丘陵線リニモも開通したことで、この界隈は注目され、「隣接する名古屋市の藤が丘はまだ土地の値段が高いから長久手にしよう」。そのような考えで長久手に住居を構える人が増えていきました。人が集まり、イオンモール長久手やIKEA長久手などの大型商業施設が次々と建設され、まちはどんどん活性化していきました。
―当時は安かった土地も現在は高騰しているのでしょうね。
相当上がりましたね。先ほど話した長久手南部のエリアは、当時の坪単価は45万円くらいでしたが、現在は65万円。10~15年で1.5倍以上も上昇しています。驚くことに、保有しているマンションも購入時よりも高値になっています。
不動産を通してWin-Winの関係を築く
―閑静な住宅街に店舗を構えている点が印象的です。
以前は、グリーンロードという市内を東西に走るメインストリート沿いに店舗を構えていたこともありました。でも“もしかしたら時代に即していないかもしれない”と感じ、昨年の5月に建てた自宅にオフィスを構えることにしたんです。その真意は、ネットを介して来るお客様が多いことに気づいたからです。ネットといってもホームページ、ポータルサイト、LINE、eメールなど多種多様です。しかし窓口となるホームページをしっかりと作り込んでおけば、多くのお客様が相談に訪れてくれます。あとは、懇切丁寧な接客を心がけて、お客様の話しをじっくりと聞く。そこに時間をかけて提案する当社のスタイルです。
―どのような提案をされるのですか。
主にお客様のライフスタイルをしっかりとお伺いしたうえでのご提案です。さらに10年、20年先を見据えた不動産の資産価値も提案しています。加えて、当社には二級建築士やハウスメーカーで実績を積んだスタッフがいますので、間取りや構造、内装や設備の説明もします。また、以前は給付金の手続きも詳細を説明して、依頼されればお手伝いもしていました。長久手という土地柄、若い子育て世帯のお客様が多いということが、当社の営業スタイルと合致しているのかもしれません。
―今後、不動産業を通してどのような地域貢献をしたいと考えていますか。
若い世代が家を購入する傍ら、売却や相続で悩んでいる方も増えています。そういった方たちには少しでも高く売れるように協力したいですね。また、お預かりした大事な資産に当社が介入することで、新たな居住者と巡り合わせたい。不動産を通して、Win-Winの関係を築くことができれば、きっと喜ぶ人たちも増えるはずです。
タケヤカンパニー株式会社
住所:愛知県長久手市長配3丁目819番地
電話:0120-213-008
FAX:0561-62-7273
[ホームページ]
https://www.takeya-co.com/