相続相談
2022.07.14
不動産お役立ちQ&A

Vol.16 「庭内神(ていないしん)し」の敷地等の相続について


Question

自宅の庭に祠(ほこら)と鳥居がありますが、祠とその附属設備である鳥居や、それらの敷地は相続税申告の際、どのように取り扱われますか。

Answer

1.庭内神しとは

庭内神しとは、一般に、屋敷内にある神の社(やしろ)や祠等といったご神体を祀(まつ)り、日常礼拝の用に供しているものをいいます。ご神体とは、不動尊、地蔵尊、道祖神、庚申塔(こうしんとう)、稲荷等で、特定の者または地域住民等の信仰の対象とされているものをいいます。

2.相続税法上の取扱い

墓所、霊びょうおよび祭具ならびにこれらに準ずるものは相続税法上の非課税財産と定められており、庭内神しや神棚、神体、仏像などは「これらに準ずるもの」として、相続税法上の非課税財産として取り扱われます。

3.庭内神しの敷地の評価

以前は、この庭内神しのみが非課税財産の対象でしたが、国税庁は平成24年7月13日、庭内神しの敷地等に関する相続税法上の取扱いを、庭内神し本体とその敷地等が密接不可分の関係である場合には、敷地等も一体の物として非課税財産とする取扱いを公表し、現在これに従った評価を行っています。

4.庭内神しの敷地として認められる条件

庭内神しの敷地として非課税が認められる条件は、以下の3つとなります。

①庭内神しの設備とその敷地、附属設備との位置関係や、その設備の敷地への定着性、その他それらの現況等といった外形
②その設備およびその附属設備等の建立の経緯・目的
③現在の礼拝の態様等も踏まえた上での、その設備および附属設備等の機能の面

前記3つのポイントから、庭内神しの設備と社会通念上一体の物として日常礼拝の対象とされているといってよい程度に、密接不可分の関係にある相当範囲の敷地は、相続税法上非課税として認められます。

庭内神しの敷地として非課税が認められるためには条件があり、必ずしも「庭内神し=非課税」というわけではありません。また、相続が間近に迫ってから庭内に地蔵や社、祠などを設置して、その土地を非課税にすることはできません。

5.現地調査が必要

庭内神しの敷地の評価を行う場合には、現地でその周辺部分の距離を計測した後、図面を作成し、面積を算出することが必要です(図参照)。相続税の申告時に、税理士が現地調査をしていない場合には、評価の減額が行われていない可能性があるので、注意が必要です。

図:相続税申告書に添付する図面
(中央の緑色部分が庭内神し部分地積)

図:相続税申告書に添付する図面
  (中央の緑色部分が庭内神し部分地積)

6.相続税申告時の注意点

土地を所有されている方の相続税申告は、土地評価に精通した税理士に依頼することが大切です。すでに相続税の申告が済んでいる方でも、評価を見直し、税務署に対し「更正の請求」を行うことで相続税の還付を受けることができます。ただし、相続税の申告期限から5年以内という期限がありますので、注意が必要です。

今回のまとめ

  • 墓所、霊びょうおよび祭具ならびにこれらに準ずるものとして、庭内神しは、相続税の非課税財産と定められている。
  • 庭内神しの敷地として非課税が認められるためには条件があり、必ずしも「庭内神し=非課税」というわけではない。また、相続が間近に迫ってから庭内に地蔵や社、祠などを設置して、その土地を非課税にすることはできない。
  • 庭内神しの敷地の評価を行う場合には、現地でその周辺部分の距離を計測した後、図面を作成し、面積を算出することが必要である。
  • 相続税の申告時に、税理士が現地調査をしていない場合には、評価の減額が行われていない可能性がある。
  • すでに相続税の申告が済んでいる方でも、相続税の申告期限から5年以内であれば、評価を見直し、税務署に対し「更正の請求」を行うことで相続税の還付を受けることができる。

若林昭子

コンパッソ税理士法人
税理士

若林 昭子

大学卒業後、弁護士秘書を経て税理士資格取得。平成15年東京税理士会登録。平成29年から現職。TKC東京都心会会員。(株)山櫻監査役、(一社)日本中小企業経営支援専門家協会理事を務める。