共働き世帯における家事分担のリアル


専業主婦世帯566万世帯に対して、共働き世帯は1,247万世帯。今やすっかり共働き世帯が主流となり、その差は開く一方です。反面、家庭内の家事分担はなかなか進んでいないのが実情です。調査から見えてきた家事分担の実情やパートナーへの満足度、家事負担を減らす時短家電の利用状況などを紹介します。

増える共働き世帯
妻の家事負担は重いまま

2023年6月、政府は『令和5年版 男女共同参画白書』を公表しました。そのなかで、「男性は仕事」「女性は家庭」の「昭和モデル」から、すべての人が希望に応じて家庭でも仕事でも活躍できる社会、「令和モデル」に切りかえようと呼びかけています。実際、昭和モデルの家庭は、今では少数派です。厚生労働白書の「共働き等世帯数の年次推移」を見ると、昭和の終盤である1980年は、専業主婦世帯1,114万世帯に対して、共働き世帯は614万世帯でした。平成に入ると両者は拮抗し、2000年代からは共働き世帯がどんどん増えていきます。差は開く一方で、2021年データでは、専業主婦世帯566万世帯に対して共働き世帯は倍以上の1,247万世帯。完全に昭和の時代と逆転しています。

他方で、女性の家事時間は、ここまでドラスティックには減りません。男女共同参画白書には、6歳未満の子どもを持つ妻と夫の家事の分担割合が載っています。家事や育児に費やしている時間を基に計算したもので、共働き家庭の妻の負担割合は、2006年の85.5%に対して2021年は77.4%(図表1)。減ってはいるものの、依然として妻の負担割合が重い状況にあります。

図表1:6歳未満の子どもを持つ妻の家事分担割合

6歳未満の子どもを持つ妻の家事分担割合
※内閣府男女共同参画局「令和5年版 男女共同参画白書」より
分担割合は(妻の家事関連時間)/(妻と夫の家事関連時間の合計時間)で算出

男性は主にゴミ出しと食器洗い
家事「分担」は不十分

具体的に夫と妻はそれぞれどのような家事を担っているのでしょうか。家事の実態を詳しく調査したフリエ住まい総研のデータを見てみましょう。結婚している20代以上の男女592名にインターネットでアンケート調査を行ったものです。回答者の属性は、共働き世帯61.7%、専業主婦・主夫世帯32.4%なので、ほぼ日本の縮図と言っていいでしょう。

家庭のなかで主に自身が実施している家事を聞いたところ、男性の過半数が挙げた家事はゴミ出し(71.1%)、食器洗い(50.4%)で、女性の過半数が挙げた家事は料理(89.3%)、洗濯(84.2%)、掃除(80.7%)、食器洗い(78.0%)、日用品の買い物(77.4%)、家計の管理(58.9%)でした(図表2)。同じ家庭内の男性と女性に聞いたわけではないので、男性側の回答と女性側の回答を足しても100にはなりません。しかし、傾向としては、女性が多くの家事をメインで担当していることがわかります。

図表2:家庭内で自身が主に担当している家事

家庭内で自身が主に担当している家事
※フリエ住まい総研の調査結果(「自宅の家事」について2023年5月に実施)を基に作成

では、パートナーが取り組む家事に対する満足度はどうでしょうか。男女別の回答をグラフに表しました(図表3)。男性は「非常に満足」40.2%、「やや満足」33.6%と7割が満足しているのに対し、満足している女性の割合は46.5%(15.5%+31.0%)とやや少なめです。逆に「やや不満」23.5%、「非常に不満」10.4%と3分の1が不満に思っています。これらの結果からは、ゴミ出しや食器洗いなどの取り組みやすい家事を中心に、男性の家事「参加」は進んでいるものの、家事の範囲やクオリティーにおいては不十分で、「分担」と呼ぶには心もとない状況がうかがえます。

図表3:パートナーが取り組む家事に対する満足度

パートナーが取り組む家事に対する満足度
※フリエ住まい総研の調査結果(「自宅の家事」について2023年5月に実施)より

この調査では、家事負担を軽減する時短家電の活用状況についても聞いています。活用している割合は34.6%で、残りの65.4%は未活用です。活用している34.6%の人に、取り入れているものを複数回答で聞いたところ、食器洗い・食器乾燥機56.6%、洗濯乾燥機38.5%、掃除用ロボット35.1%、時短調理器26.3%という結果でした。食器洗い・食器乾燥機はシステムキッチンに組み込まれていることも多く、最もよく使われています。とはいえ、時短家電を活用している34.6%の回答者の中の半分強なので、全体で見ると2割弱に過ぎません。思いのほか時短家電の活用は進んでいないようです。興味はあっても決して安くはないので、導入のハードルも高いのでしょう。

時短家電の活用で負担軽減
健康で幸せな生活の実現へ

そのようなニーズを汲んで、昨今では数々の家電のサブスクリプションサービスも登場しています。短期のスポット利用がメインのレンタルとは異なり、月単位で借りて使い、気に入ったら差額を支払って購入もできるスタイルが多いようです。なかには、定額制で何種類でも借り放題のサービスもあります。このようなサービスも活用して、徐々に時短家電の導入を進めていくといいかもしれません。

実際、先頃、横浜市立大学の研究グループが発表した、横浜市内の夫婦1万組を対象にした調査の結果では、このような時短家電や惣菜など家事の自動化・外部化アイテムの導入数が多いほど、女性の平日の家事時間が減少する傾向が見られました。また、この調査では、家事時間とウェルビーイング(心身の健康や幸福)との相関も調べており、フルタイム勤務している妻の平日の家事時間とウェルビーイングには、負の相関があるという結果が出ています。つまり、家事時間が長いほどウェルビーイングが損なわれるということで、共働き世帯が増加の一途である昨今、看過できない問題と言えます。

昭和モデルから令和モデルへと家族の形や働き方が変わっていく今、家庭全体の家事負担の軽減や、男女の負担のアンバランス解消は喫緊の課題です。男女ともに健康で幸せな生活を実現できるように、意識改革や暮らし方の工夫が求められています。

参照資料