マンションの空き駐車場問題を居住者専用のカーシェアで解決


マンションの空き駐車場問題を居住者専用のカーシェアで解決
写真提供/大和ライフネクスト株式会社

「所有」から「利用」するライフスタイルが主流の現在、カーシェア市場が2000年代に入り、急速に拡大しています。
そんな中、新たなカーシェアサービスも登場。その一つが、大和ライフネクストが始めた居住者限定「ふらっとカーシェア」です。
本特集では同サービスの内容を紹介すると共に、そもそもこの商材がなぜ誕生したのか。詳しく話を聞きました。

車離れで浮上した空き駐車場問題

かつては一家に一台は車を所有しているものでした。1住戸につき駐車場1区画を設けている分譲マンションも多く、その利用率もほぼ100%。駐車場に空きが出ることもありませんでした。

ところが近年、若者を中心に車離れが進んだこともあってマンションによっては駐車場に2~3割の空きがあるといった状況になっています。

車離れの原因は様々。若者は経済的な理由と、そもそも車の所有欲がない、必要性を感じていない人が増えたということが挙げられます。一方、車の所有が当たり前だったシニア世代においても車離れが始まっています。高齢化によって運転免許を自主返納し、必然的に車を手放しているわけです。そして地球温暖化への意識の高まり。こうした流れを受けて急成長しているのがレンタカーやカーシェア市場。特にカーシェアは2011年あたりから認知度が高まるにつれ、利用者が徐々に増えています。

車離れによって浮上してきたのが空き駐車場問題です。とりわけマンションの多くは駐車場収入を管理費の一部としたり、修繕費用として積み立てたりしています。空き駐車場が多いとそれだけ駐車場収入が減り、管理費や修繕積立金も減ることになってしまいます。

マンションの空き駐車場問題にいち早く取り組んでいたのが不動産総合管理会社・大和ライフネクストです。2019年にまず空き駐車場の有効活用・収益化を目指し「不動産×モビリティ」プロジェクトを立ち上げました。そこから多くの事業者と対話を重ね、実証実験なども行い、21年10月に空き駐車場課題解決に特化した組織をマンション事業本部内に新設。同月から「駐車場サブリース」などモビリティサービスの提供を開始しています。

駐車場の有効活用として「駐車場サブリース」を提供

このプロジェクトを立ち上げた経営企画室課長兼新規事業推進室担当課長の福田篤氏は5年前、異業種から同社へ入った転職組。お客様のニーズを汲み取るためにまずは現場を知りたいと考え、約2カ月間、同社が管理する分譲マンションの理事会や総会などに出席しました。

「たまたまかもしれませんが、行く先々で、機械式駐車場の経年劣化や空き駐車場をどうするのかを議論していました。それで調べてみると全国で弊社が管理するマンションの約3割が、駐車場の収支の損益が赤字でした。これは何とか解決する手立てが必要だと考え、19年にプロジェクトを立ち上げました」。福田氏たちはまず従量課金型の駐車場シェアリングサービスの実証実験を行いました。他社でも行っているサービスですが、空き駐車場を有効活用するには得策であると考えたからです。ところが「見知らぬ人が敷地内に入ってくるのはセキュリティ面で不安」「利用者たちのモラルも心配」という声がたくさん届きました。

「そこで21年10月から始めたのが『駐車場サブリース』。マンション敷地内の駐車場を当該物件の管理会社が借主となるサブリース方式で、駐車場を外部利用者に貸し出すサービスです。これなら管理もしっかりしていて安心。管理組合へ収益も還元できるシステムということで概ね好評でした」。

居住者への付加価値を重視
子育て世代にカーシェア提供

ただ、「駐車場サブリース」はあくまで管理組合向けのサービス。福田氏たちは不動産総合管理会社として、空き駐車場問題を解決するだけでなく、居住者にとって付加価値の高いサービスも提供したいと考え、試行錯誤を繰り返します。そんな中で誕生したのが「ふらっとカーシェア」。1台を特定の5世帯でシェアすることで高い利便性を確保しながら、おトクな月額定額制でご利用いただけるというサービスです。平日は乗り放題で土日祝日も月72時間まで利用可能としています。

「主なターゲットは“子育て世代”。子どもの送り迎えや買い物など、日常的な利用が想定される属性に照準を当てました」。

特筆すべきは周辺住民にも開放する「オープン型」ではなく、マンションの居住者のみが利用できる「クローズ型」にしたこと。これによってマンションのセキュリティが担保されます。

同サービスを開始するにあたり、21年11月から都内分譲マンション3棟で実証実験を行ったところ、「子どもの習い事の送り迎えなど日常遣いができて助かっている」「週末に郊外の大型ショッピングモールへ行って買い物をするようになった。生活の行動範囲が一気に広まった」などといった感想が多かったそうです。

手応えを実感した福田氏たちは今年7月に同サービスをローンチしました。理事会での評価は高く、直近ですでに2棟で導入が決定しています。

今後も「ふらっとカーシェア」の導入を推進させていきながら、例えば、分譲マンション向けモビリティサービスのさらなる拡充を図るために、サービス開発や実証実験に取り組んでいく方針だと福田氏は語ります。

「解決策はまだまだあると思います。不動産管理会社が介在する意味があるサービスを今後も提供できたらと思っています。そのためにもまずは、我々のお客様である居住者の声を聴くことをこれからも大切にしていきます」。

目の前の課題を解決するだけでなく、居住者の生活レベルを上げていきたい。その意識があるからこそ、居住者に刺さるカーシェアサービス「ふらっとカーシェア」を実現できたのでしょう。

WEBで会員登録してスマホアプリをダウンロードで予約・解錠・施錠まで簡単操作できる「ふらっとカーシェア」。
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ふらっとカーシェアと一般的なカーシェアの比較表
一般的なカーシェアは従量課金制で利用頻度が「低い」場合の方が得。不特定多数が利用するため、希望日時に予約が取りづらい。一方「ふらっとカーシェア」は、月19800円の定額制で平日は使い放題、土日祝日は月72時間まで使用可能。1台あたり居住者かつ5世帯でシェア。同じマンションで暮らす者同士ということで最低限のマナー、モラルが担保されている。
予約時間にスマホアプリで車を解錠し利用開始。終了時間までに車両を所定の駐車区画に返却すればOK。
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スマホアプリで空き状況をチェックし、希望の日時の予約。ガソリン代、保険料、車検代こみの月定額がうれしい。
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車両はご家族、特に子育て世代を想定し、コンパクトクラスの車種を採用。
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