「不動産情報ライブラリ」徹底活用法
国土交通省は、不動産取引をよりスムーズにするため「不動産情報ライブラリ」を2024年4月より開始しました。これはWebブラウザ(Edge、Chrome、Safari)から閲覧できるサイトで、不動産の取引価格や地価公示等の価格情報、防災情報、都市計画情報等がいつでも確認できます。掲載されている情報が便利で会員登録が不要なことからも人気を博し、一時、サイトへのアクセスが難しくなったほど注目されています。
本稿では、「不動産情報ライブラリ」の機能解説、仕事での便利な活用方法について解説していきます。
不動産情報ライブラリが生まれた背景
さかのぼること2006年4月、国土交通省は「土地総合情報システム」をWeb上に公開しました。これには不動産価格に関する情報がまとめられていたので、実際にアクセスしたことがある方も少なくないでしょう。
そして本年、さらなる利便性をもとめて、4月1日より「不動産情報ライブラリ」の運用が開始されました。不動産価格に加えて、不動産取引の実務で必要になる情報を地図上で一気に見ることができる点が特徴です。
これまでも、たとえばハザードマップ、用途地域、学区情報は地方自治体のホームページや、国土地理院のホームページにアクセスすれば閲覧することができました。しかしその都度、別々のホームページにアクセスするのは手間です。また、ホームページによって、地図の縮尺や形式が異なるため、調査したい不動産の情報を認識するのは骨が折れました。その点、「不動産情報ライブラリ」であれば、1つの地図上で複数の情報を重ねて見ることが可能なのです。
利用も操作も極めて簡単
「不動産情報ライブラリ」を利用するためには、ソフトのインストールや会員登録は不要です。パソコンはもちろん、スマホやタブレットからもアクセスが可能。パソコン版では、地図を表示させると、画面上に「価格情報」「地形情報」「防災情報」「周辺施設情報」「都市計画情報」「人口情報等」のメニューが表示されます。ここから見たい情報を選択し、地図上に情報を出していきます。
たとえば、価格情報であれば、「価格情報」をクリックし「国土交通省地価公示」にチェックを入れて「決定」を押すと、地図上に個別地点の公示価格がマークと共に表示されます。マークをクリックすると、さらに詳細情報を見ることができます。
日常使いが期待できる「防災情報」と「地形情報」
不動産取引の仕事にとって特に日常使いが期待できるのが「防災情報」と「地形情報」です。なぜなら、「防災情報」と「地形情報」は販売図面に情報として載っていないことがありますが、住宅購入者にとっては重要な情報だからです。急に決まった物件案内の場合、資料準備に時間が取れないことはよくあること。その際に、ぜひ「不動産情報ライブラリ」の「防災情報」と「地形情報」を活用いただきたいと思います。
「防災情報」では、「洪水浸水想定区域」「土砂災害警戒区域」「津波浸水想定」「災害危険区域」「急傾斜地崩壊危険区域」「地すべり防止地区」などの情報を、1つの地図で重ねて見ることができます(図1)。
「地形情報」では「陰影起伏図」「土地条件図」「大規模盛土造成地マップ」を見ることができます。ここで特筆すべきは、2024年7月10日にデータが更新された「大規模盛土造成地」。2021年に静岡県熱海市で大雨に伴って盛土が崩落したことや、危険な盛土等を全国一律の基準で包括的に規制する「宅地造成及び特定盛土等規制法」が2023年5月26日に施行されたことで、盛土に対する意識は日々、強まっています。
将来の不動産価値、街の予想に役立つ「将来推計人口」と「立地適正化計画」
人口が減少していく日本で、不動産の将来の資産価値や、街がどのように変化していくかは、住宅購入者が特に気にする情報です。
そこで活用が期待できるのが「人口情報等」の項目で表示できる「将来推計人口500mメッシュ」です(図2)。これは2015年に実施された国勢調査のデータを活用し、2050年までの将来人口を予想したもの。なんと、5年ごとに、500mメッシュで予想を出しています。予想は地図上で、色によって表現されています。
図2:将来推計人口500mメッシュ
また「都市計画情報」の「立地適正化計画」にもぜひ注目してください。立地適正化計画とは、人口減を迎える日本のなかで、生活サービス機能を計画的に誘導して、将来的に暮らしやすい都市の姿を見据えた計画のこと。「立地適正化計画」を選択すると「立地適正化計画区域」「居住誘導区域」「都市機能誘導区域」が地図上に色分けされて表示されます。紹介する不動産が、立地適正化計画に該当していた場合、すぐに概要を把握することができます。
「不動産情報ライブラリ」は、4月の公開以降、機能の改善やデータの拡張を次々と行っており、今後もデータの拡張が期待されます。ぜひ、ご自身で実際に活用してみてください。
※不動産情報ライブラリの画像は国土交通省から許諾を得て掲載しています。
不動産情報ライブラリ
https://www.reinfolib.mlit.go.jp/
株式会社Housmart
代表取締役
針山 昌幸
大手不動産会社、楽天株式会社を経て、株式会社Housmartを設立。テクノロジーとデザイン、不動産の専門知識を融合させ、売買仲介向けの自動追客システム「プロポクラウド」を展開する。著書に『中古マンション本当にかしこい買い方・選び方』(日本実業出版社)など。