新型コロナウイルス感染症 における⽀援制度(下)
– 個人に対する助成金・補助金、融資制度等 –


新型コロナウイルスによる影響を受けている不動産事業者、賃借人の皆様を支援する施策が拡充・新設されています。

今回は、賃借人や家賃滞納者を抱える賃貸人からの相談を受けることが多い不動産事業者の皆様に、個人に対するさまざまな給付金・支援金、融資等の支援制度を紹介します。

*給付金等のメニューは非常に多岐にわたり、さまざまな受付窓口が設けられています。インターネット上で検索すると相談窓口にアクセスできるようになることを想定して本稿中のタイトルを付していますので、気になる給付金等について、さらに詳細の要件を確認される際に検索キーワードとしてください。
*記載内容は、令和2年6月12日現在のものです。制度が拡充されていくものがあることも想定されるため、最新の情報にアクセスしてください。

個人向け

【生活費等の支えに】

1. 助成金・補助金(返還不要)

≪全国的に行われているもの≫

①特別定額給付金

●概要

新型コロナウイルス感染症緊急経済対策の一環として、簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行うために行われる給付です。年齢制限、所得制限などもなく幅広く受給できるものです。

●支給額

1人あたり10万円。給付対象者の属する世帯の世帯主が全額受給します。

●要件

令和2年4月27日時点で住民基本台帳に記録されていること。

●手続き方法

郵送の場合、市区町村から受給権者宛てに送付される申請書に振込先口座を記入し、口座確認書類(通帳コピー等)と本人確認書類(運転免許証コピー等)を同封して返信用封筒で送付します。

マイナンバーカードを持っている場合、マイナポータルにアクセスし、申請内容を入力して口座確認書類をアップロードすることで簡単に申請することができます。

②子育て世帯への臨時特別給付金

令和2年4月分の児童手当を受ける人に、対象児童1人につき、1万円が臨時特別給付金として支給されます。特段の申請手続は必要ありません。

③新型コロナ対応休業支援金

●概要

中小企業に勤務する労働者につき、事業主から休業手当が支払われない場合に、休業前賃金の80%を直接労働者に給付するもの

●支給額

休業前賃金の80%(上限は月額33万円)。

令和2年4月1日から9月30日までの間の休業が対象になります。

●要件

事業主から、休業手当の支給を受けていないことが主たる要件です。

●手続き方法

管轄ハローワークが窓口となりますが、郵送や、オンライン申請の実施も検討されています。なお、申請にあたっては、休業していた期間、休業手当の支払いがされていないこと、賃金支払実績等を事業主により証明してもらう必要があります。

④小学校休業等対応支援金

●概要

7月号1.③で述べた事業主向け「小学校休業等対応助成金」と同様の趣旨の補助は、「支援金」として個人事業主・フリーランスの方も活用できます。この場合の支給額は定額で次のとおりです。要件・申請方法等は、小学校休業等対応助成金と同じです。
・2月27日から3月31日まで…1日あたり4,100円(定額)
・4月1日から9月30日まで…1日あたり7,500円(定額)

⑤学生支援緊急給付金

●概要

家庭から自立した学生等が、アルバイトの減・解雇等突然の収入減により「学びの継続」に危機を抱える状況にあることを踏まえ、一定の給付を行うものです。

●支給額

住民税非課税世帯の学生は20万円。それ以外は10万円が支給されます。

●要件

国公私立大学(大学院含む)・短大・高専・専門学校の学生であって、アルバイト収入により学費等を賄っている方の収入が50%以上減少していることが要件になります。

●手続き方法

学生が各大学等に申請を行い、大学が選考した上で日本学生支援機構にリストを提出します。そのうえで、機構が学生に対して支給を行います(図表1)。

図表1 学生支援緊急給付金の事業スキーム

出典:【概要資料】「学びの継続」のための『学生支援緊急給付金』の創設より抜粋・編集
⑥傷病手当金

●概要

新型コロナウイルスに罹患したことにより、勤務不能となったときに所得補償として医療保険制度から給付されるものです。

●支給額

協会けんぽに加入している被保険者である方は、標準報酬月額の平均値の約67%が働けなくなって4日目から支給されます。支給期間は最大1年6カ月間です。健康保険組合の場合は、付加給付が受けられることもあります。国民健康保険に加入している被保険者である方も特例措置として同様に給付されます。

●要件

新型コロナウイルスに罹患した、または、発熱したため一定期間勤務することができなくなったなどの場合であって、4日以上労務不能となったことが要件です。

●手続き方法

加入している医療保険制度により、申請窓口が異なります。

協会けんぽ加入の方は、全国健康保険協会支部へ事業主を経由して申請します。

健康保険組合加入の方は、健康保険組合に事業主を経由して申請します。

国民健康保険等に加入する方は、市区町村の国保担当窓口に申請します。申請にあたっては、主治医の証明を得る必要があります。

≪地方自治体により行われているもの≫

個々の自治体により、さまざまな給付金等が実施されています。地域内で利用できる商品券や、定額給付金への上乗せ支給等が行われているようです。自治体が実施している取組みを賃借人にお知らせすると喜ばれるかもしれないですね。

2. 融資

①緊急小口資金

●概要

緊急かつ一時的に生計の維持が困難となった場合に無利子で少額の費用の貸付を行うものです。貸付を受けると1年間は返済が猶予され、その後2年間で返済することとされていますが、事案によっては、返済そのものが免除されることもあります。

●貸付額

上限10万円の範囲で決定されます。学校等の休校、個人事業主である等の一定の事情がある場合は、20万円まで貸付上限額が引き上げられます。

●要件

新型コロナウイルスによる収入の減少等、生活の困窮があった場合に、幅広く申し込むことができます。

●手続き方法

窓口は、市町村に置かれている社会福祉協議会、労働金庫ですが、地域には、「民生委員」や「児童委員」の委嘱を受けている方がいます。これらの委員は、地域住民の立場から福祉全般に関する相談・援助活動を行っています。身近な相談相手として、こういった方にまずは相談してみるのが近道となります。また、郵便局でも相談に乗ってもらうことができます(図表2)。

②総合支援資金

●概要

収入の減少や失業してしまったなどの事情がある方に、生活再建までの最大3カ月の間、生活費の支援のために貸し付けられるもの。緊急小口資金は一時的な貸付ですが、総合支援資金は一定の期間受けられます。また、これらを同時に受けることはできませんが、緊急小口資金を受けた後に総合支援資金を受けることは可能です。緊急小口資金と同じように、最初の1年間返済は猶予されます。なお、返済期間は最大10年間で、事案によっては返済そのものが免除されます。

●支給額

単身世帯の場合は、月15万円以内、2人以上世帯の場合は、月20万円以内で、いずれも貸付期間は原則3カ月以内とされています。

2人以上世帯で、緊急小口資金も受けた場合の貸付額の上限は、80万円になります。

●要件

緊急小口資金と同様です。収入の減少については、給与明細等の確認書類が厳密に審査されるものではなく、本人の申立てが尊重されます。また、収入の減少幅の大小も問われません。

●手続き方法

地域の社会福祉協議会または民生委員等に相談しましょう。労働金庫や郵便局では取扱いがありません(図表2)。

図表2 貸付手続きの流れ

出典:厚生労働省生活支援特設ホームページ「生活福祉資金の特例貸付」より抜粋・編集
③住居確保給付金

●概要

一定の要件に該当する方に、原則3カ月(最大9カ月)の期間中、家賃相当額が自治体から家主さんに支払われるというもの。

●支給額

世帯人数、市区町村により、支給額は変動します。

例えば、東京都特別区内であれば、世帯員1人の場合53,700円、2人なら64,000円、3人なら69,800円が上限額とされます。

●要件

ア.世帯の主たる生計維持者が、離職・廃業後2年以内である、または給与等を得る機会が、離職・廃業と同程度まで減少している。
イ.直近の世帯収入合計額が、市町村民税の均等割が非課税となる額の1/12と家賃の合計額以下であること。
ウ.世帯の預貯金合計額が各市区町村で定める額以下であること。
エ.誠実かつ熱心に求職活動を行うこと(図表3)。

イ.の均等割が非課税となる基準は、扶養親族がいない場合は年間所得35万円とされています。これを12分割すると、29,166円(端数切捨て)となりますね。家賃月額が例えば6万円である場合、直近の収入が89,166円以下であれば、上記イ.の要件を満たすことになります。

図表3 住居確保給付金の要件の拡充

出典:厚生労働省「住宅確保給付金」のご案内より抜粋・編集

●手続き方法

窓口は、生活困窮者自立相談支援機関であり、全国に1,317箇所設けられています。自治体が直営しているケースもあれば社会福祉法人やNPO等に委託されていることもあります(図表4)。

自立相談支援機関の相談窓口一覧は、https://www.mhlw.go.jp/content/000614516.pdfよりご覧いただけます。
また、厚生労働省には、以下のコールセンターが設置されています。

<住居確保給付金相談コールセンター>
0120-23-5572
受付時間:9:00~21:00
    (土日・祝日含む)

図表4 住居確保給付金の手続きの流れ

出典:厚生労働省生活支援特設ホームページ「住宅確保給付金」より抜粋・編集

3. その他

①国民健康保険、国民年金、後期高齢者医療制度および介護保険の保険料(税)の減免等

●概要

これらの保険料の納付が、全部・一部免除され、または納付の猶予を受けることができます。

●要件

新型コロナウイルス感染症の影響により、令和2年2月以降に収入が減少し、所得が相当程度まで下がった方

●手続き方法

市区町村の国民年金担当窓口に申請書類を提出します。郵送での提出も推奨されています。

②各種公共料金の支払猶予

●概要

個人または企業にかかわらず、新型コロナウイルス感染症の影響により、電気・ガス料金の支払いに困難な事情がある方に対して料金の未払いによる供給停止を猶予するよう、柔軟な対応を行うことが政府から要請されています。支払いが困難な状況である方は公共料金の支払猶予に関して、取扱い事業者に申入れを行いましょう。

住宅確保給付金 よくある質問

Q1.支給金額に敷金や共益費、駐車場代は含まれますか。
A1.含まれません。

Q2.家賃に駐車場代が含まれる賃貸契約ですが、合計額が家賃として取り扱われますか。
A2.家賃額のみが支給の対象になります。

Q3.店舗兼住宅を賃借し自営業を行っている場合、住居確保給付金の対象になりますか。
A3.賃借契約書等に店舗部分と住居部分が区別されて記載されていれば、住居部分のみ対象になります。また、契約書に記載がない場合でも、面積按分等を行って住居部分を算出しても構いません。ただし、賃借人が法人名義の場合には対象となりません。

Q4.外国籍の方は、住居確保給付金の対象者になりますか。
A4.対象者になる可能性があります。詳しくは相談窓口となる自立相談支援機関等にご相談ください。

Q5.学生の方は、住居確保給付金の対象者になりますか。
A5.一般的には主たる生計維持者に該当しないため、基本的には対象者にならないと考えられます。なお、例外的に対象となる場合がありますので、詳しくは相談窓口となる自立相談支援機関等にご相談ください。

出典:厚生労働省生活支援特設ホームページ「住宅確保給付金」より抜粋・編集


安中 繁

ドリームサポート社会保険労務⼠法⼈
特定社会保険労務⼠

安中 繁

雇用調整助成金をはじめとする不動産事業者向けの施策の受給サポートに精通している。厚生労働省・国土交通省・全国社会保険労務士会連合会等の動画サイトでの助成金申請の解説も担当。著書・テレビ出演多数。