わが国のマンションストック数は2024年末時点で713万戸に達しており、大多数のマンションでは、マンション標準管理規約(以下、標準管理規約)に準じ、またはこれを参考にして管理規約を作成し、管理が行われています。2025(令和7)年10月17日、標準管理規約が改正・公表されました。
本稿では、改正の趣旨とポイントを説明したうえで、改正との関連において、宅建業者のみなさまが日常業務にあたり必ず理解しておかなければならないテーマの1つである「国内管理人の制度」について解説します。
1.改正の趣旨
2025(令和7)年5月、老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律(以下、マンション関連改正法)が成立し、区分所有法が改正されました。施行日は2026(令和8)年4月です。今般のマンション標準管理規約の改正(以下、規約改正)の主な目的は、この区分所有法の改正(法改正)への対応です。改正法の施行後、区分所有法と抵触する管理規約の定めは無効になりますから(マンション関連改正法附則2条3項)、管理規約の改正は喫緊の課題です。
また管理規約は、最新の社会状況に対応し、ルールをアップデートしておくことも必要になります。今般の規約改正では、改正法との整合性を確保するだけではなく、これに加えて最新の社会情勢に対応する仕組みも設けました(図表①)。
図表①:標準管理規約の改正の目的

2.改正のポイント
(1)法改正に対応するための改正
まず区分所有法での集会のルールについての見直しに対応し、さまざまな改正がなされています。招集の手続きが見直され(標準管理規約43条〈以下、単に条文を掲げるときは、標準管理規約の条文番号〉)、特別決議についても総会の出席者による多数決となりました(47条)。所在等不明区分所有者の除外決定を求めるための理事長の裁判の請求の定めも設けられています(67条の3)。
共用部分の管理に関しては、共用部分の管理に伴って必要となる専有部分等の保存請求(23条)、修繕積立金の使途(28条)、国内管理人の設置(31条の3)、マンションに特化した財産管理制度の活用のための手続き(67条の4・67条の5)、共用部分等に係る損害賠償請求権等の代理行使(24条)などの改正がなされました(国内管理人の制度については、後述する3.の解説のとおり)。
また、区分所有法でさまざまなマンションの再生手法が認められたことから、新たなマンションの再生手法(建物の更新〈区分所有法64条の5第1項[以下、法というときは、区分所有法]〉)、建物敷地売却(法64条の6第1項)、建物取壊し敷地売却(法64条の7第1項)、取壊し(法64条の8第1項)の活用に対応するための規定も設けられています(標準管理規約43条5項・6項・47条5項・6項)(図表②)。
図表②:法改正への対応

(2)最新の社会状況に対応するための改正
たばこが人の健康に悪影響を及ぼすことが明白なのに、わが国では喫煙対策は進んでいません。マンション内での喫煙ルールを整備すべきことがコメントに明記されました(18条関係コメント)。
また、管理組合の役員の担い手不足は深刻な問題となっています。理事の負担感を軽減する観点から、マンションの実態に応じて、理事の家族または親族が、組合員の理事本人に代わって、職務代行者として理事会に出席することを認める考え方が示されました(18条関係コメント)。
さらに最近、区分所有者でない者が区分所有者になりすまして、マンションの大規模修繕委員会に参加していたという、信じ難い事件が発覚しました。管理組合運営の実務でも、管理組合の役員や専門委員について本人確認をなすべきであることに言及されました(35条・55条関係コメント)(図表③)。
図表③:最新の社会状況への対応

3.国内管理人の制度
わが国の不動産取引は国際化し、海外投資家が国内の不動産を活発に取得するなど、区分所有権を取得する外国人や在外邦人が多くなっています。しかし、外国人や在外邦人については、連絡がとりづらいことが少なくありません。そのために法改正によって、区分所有者が国内に居住していない場合(法人にあっては、本店または主たる事務所が国内に設けられていない場合)に管理組合と区分所有者との間の連絡を円滑に行うことができるように、区分所有法において、国内管理人の制度が設けられました(法6条の2第1項)。規約改正でも、この法改正に対応し、理事長への届けなどに関して、国内管理人の設置についての定めが設けられました(31条の3)。
さらに、法律上は国内管理人の選任は任意的ですが、規約を定めれば、区分所有者に国内管理人の選任を義務づけることもできます。標準管理規約でも、国内管理人の選任を義務づける場合の規約例がコメントに示されました。
国内管理人の制度が創設されたことによって、国外居住者が買主となるマンションの売買を仲介するにあたって、買主に対して、(1)国内管理人の制度がどのようなものかを説明し、(2)国内管理人についての管理規約の定めを調査して、これを説明し、(3)さらに管理規約で国内管理人の設置が義務づけられている場合には、国内管理人の設置が管理規約における義務である旨を伝えることが、宅建業者の業務となりました。
4.まとめ
標準管理規約の改正は、思いのほか宅建業者の業務にかかわりがあります。今後マンションの仲介業務に携わるにあたっては、ご留意いただきたいと思います。

山下・渡辺法律事務所
弁護士
渡辺 晋
第一東京弁護士会所属。最高裁判所司法研修所民事弁護教官、司法試験考査委員、国土交通省「不動産取引からの反社会的勢力の排除のあり方の検討会」座長を歴任。マンション管理士試験委員。著書に『新訂版 不動産取引における契約不適合責任と説明義務』(大成出版社)、『民法の解説』『最新区分所有法の解説』(住宅新報出版)など。
