不動産会社におけるネットの誹謗中傷対策
– 書き込み削除とポジティブ情報の発信 –


パソコンやスマートフォンの普及に伴い、インターネット上での書き込みによる誹謗中傷被害も増えています。身に覚えのない悪質な内容だった場合、そのまま放置しておくと会社の評判に加え、売上げにも影響が及ぶこともあります。こういったネットの誹謗中傷に、どういった対応をすればいいのでしょうか?

相談件数は緩やかに増加

飲食店や商業施設などに対する、口コミサイトへのネガティブな書き込みが話題になることが増えています。警察庁がまとめた「平成30年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によると、2018年における「名誉毀損・誹謗中傷等に関する相談」は1万1,406件(図表1)。前年から少し減少したとはいえ、緩やかに増加しています。その背景には、パソコンやスマートフォンの普及に伴い、「いつでも、誰でも書き込むことができる」という環境が整ったことがあります。

不動産会社もお客様と1対1で店舗で接客する形態であるため、こういったネットへの書き込みとは切っても切れない関係といえるでしょう。

図表1 サイバー犯罪の情勢(相談受理件数の推移)

出典:警察庁「平成30年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」より抜粋・編集

不動産業界で多い書き込みは?

口コミサイトは、匿名性があるからこそ忖度ないコメントが書き込め、だからこそ閲覧する側も判断材料の1つとして利用するという特性があります。一方で、そこに事実ではないことが書き込まれた場合、うわさが一人歩きしてしまい、会社の評判や売上げに影響を及ぼしてしまいます。

「誹謗中傷対策センター」を運営するネクストリンク株式会社代表取締役の大和田渉氏によると、不動産業界の相談・依頼内容としては、投資系マンションの勧誘電話等の営業に対する書き込みへの対応が多い状況です。また、「マンションや戸建てなど住宅に関するネット掲示板で、分譲マンションの近隣住民やイベント時の騒音等の生活環境に対するクレーム、賃貸物件の管理会社や営業担当者の接客態度、物件の設備等へのクレーム、人員募集時の会社批判に対する相談も多い」と言います。事故物件ではないのに専用サイトに書かれて困っている賃貸人や従業者による内部告発を受けた管理職からの相談もあるそうです。

書き込みを削除するには

では事実ではないことを書かれてしまった場合、どのような対応をしていけばいいのでしょうか? 方法としては、掲示板の書き込み削除や裁判による損害賠償請求などがあり、そのためにはまず情報の発信者を特定する必要があります。投稿者を特定するには、①サイト管理者等を特定した上でIPアドレスを開示してもらい、②そこからプロバイダを調査・特定し、③プロバイダに発信者情報開示請求を行う(発信者情報開示請求訴訟の提起)――という流れになります(図表2)。

ネットの誹謗中傷対策に対応しているアークレスト法律事務所の野口明男弁護士によると、「投稿者の特定には裁判所での仮処分申請や訴訟が必要で、事実ではない書き込みだという証拠を自分自身で収集・準備する必要もありますので、ある程度手間や時間がかかると考えてほしい」と言います。ただし、発信者情報開示請求の際には、プロバイダから発信者個人に対して意見照会書が届くため、調査を実施していることが伝わることでその後の書き込みの抑止力になるとのこと。また不動産・建設関連の書き込みは店舗名や担当者名などが記載される傾向があり、調査を進めていくと、同業他社内から発信されている場合が多いとのことです。発信者情報開示請求は個人の責任を追及する制度であるため、会社に対する責任は問えませんが、野口弁護士は「その会社に発信者に対する調査・報告を事実上求めることができますので、これも投稿者への抑止力となりえます」と、最終的に開示請求が認められなくても行動を起こすことで一定の効果があるとしています。

任意で削除依頼を行うことが現実的な対応ですが、何よりも「毅然とした対応・対策を講じ会社組織としての姿勢を示すこと」が重要です。

図表2 投稿者特定の流れ

出典:アークレスト法律事務所

ポジティブ情報の発信も有効

一方で、「書き込まれた内容に心当たりがある場合は、真摯に対応することが大切」とも。1つの投稿が呼び水となり拡大してしまうと収拾がつかなくなる場合もあるため、「火種が小さいうちにきちんと対応しておくことが大切」と野口弁護士は話します。大和田氏も「書き込み内容が事実でない場合は、事業主サイドが事実確認等を行い、その情報を発信(返答)すべき」と指摘します。

また、ネガティブ情報が検索エンジンの上位に表示されないよう、ポジティブ情報を発信することも1つの予防策になるといいます。「事実に基づく範囲で、お客様に感想を書き込んでもらう」(野口弁護士)ことや、「例えば管理について悪く書かれたなら、管理の内容や状況を伝えるコンテンツを作り、広報活動の一環としてきちんと情報発信する」(大和田氏)など、消費者に向けて“事実”を伝えていくことがポイントです。

アークレスト法律事務所代表弁護士の野口 明男氏
検索結果の最適化で誹謗中傷対策事業を行っているネクストリンク株式会社代表取締役の大和田渉氏