持続可能な住みやすい社会を目指して
~SDGsのススメ~


SDGsは、2015年9月の国連サミットにおいて、世界193カ国がステークホルダーとともに同意した世界共通の目標です。採択からまもなく6年となる現在、SDGsは政府や行政機関のみならず、民間企業の経営指針としても注目を集めています。そこで、国内のSDGs浸透度と企業が取り組むことで生まれるメリットなどを紹介していきます。

SDGsは世界共通の目標であり世界各国が抱えている課題

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は国連に加盟する193カ国の政府関係者、NGOなどの市民代表、研究者らが、3年かけて「現在の世界の課題は何か」を議論し、その議題解決を「2030年までの目標」としてまとめたものです。もちろん、条約ではないので法律的拘束力や義務はなく、あくまで目標となります。SDGsは17の目標があり、それらは世界が共通して抱える「17分野の課題」と言い換えることができます(17の目標の下に169のターゲット、さらに232の指標が決められている)。 

では近年、日本にどれくらいSDGsが浸透しているのか、国内企業の「SDGsへの理解や取組み」について見ていきます。2020年に帝国データバンクが行った「企業におけるSDGsへの理解や取組み」の結果を参考にすると、「SDGsの意味および重要性を理解し、取り組んでいる」企業は8.0%で、「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」企業は16.4%。SDGsに積極的な企業は24.4%となっています。また「言葉は知っていて意味もしくは重要性を理解できるが、取り組んでいない」が32.9%、「言葉は知っているが意味もしくは重要性を理解できない」が14.8%と、SDGsの存在は認知しているものの取り組んでいない企業が半数近くあることがわかります(図表1)。SDGsに積極的な企業を規模別でみると、大企業が34.9%で、中小企業は 22.1%、小規模企業は 19.0%となっており大企業が積極的に取り組んでいることがわかります。業界別では、金融が 41.5%でトップとなったものの、その他の8業界は2割台という結果が出ています(図表2)。

図表1 SDGsへの理解と取組み

SDGsへの理解と取組み
注:母数は有効回答企業11,275社

図表2 SDGsに積極的な企業の割合 〜規模・業界別〜

SDGsに積極的な企業の割合
注:「SDGsに積極的」とは、図表1の「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」と「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」の合計

SDGsはアピールだけでなく自社の分析ツールにもなる

次に、SDGsに取り組むことで生まれるメリットです。企業がSDGsに取り組むと、①「企業価値向上」、②「自社分析の機会創出」、③「採用で有利になる」などのメリットが生まれます。

①「企業価値向上」に関しては、SDGsに取り組んでいるというだけで「この企業は社会貢献や地域貢献にも取り組んでいる」といった認知が広まり、良い印象を持たれる可能性が高まります。また、SDGsは日本だけでなく世界全体の潮流となっているため、取り組む企業が少ないうちに始めることによって、差別化を図ることができます。

②「自社分析の機会創出」は、SDGsに取り組む際にどの目標を選ぶか決めるためには、自社の強みや弱み、経営理念や価値観、方向性を分析し、どのような目標なら実現できそうかを探し出す過程が必要となります。自社分析の機会を得られるというのも、SDGsならではのメリットといえます。

また、③「採用で有利になる」については、現在、いろいろなメディアでSDGs の認知度についてアンケートを行っていますが、SDGsの認知度は若い世代が最も高いというデータがあります。若い世代は柔軟性も高いため、社会貢献や地域貢献、環境問題などの社会的な活動に従事しやすい立場にあるといえます。こうした若い人たちの関心は就職や転職にも影響して、彼らが就職・転職するとき、SDGsに関心がなく、社会貢献や環境問題などに対する意識の低い企業はエントリー候補から外される可能性が高いといわれています。逆にSDGsに取り組んでいることをアピールできれば、人材確保も有利になるとされています。そのほか、「新たなビジネスチャンスの創出」「社員のモチベーションアップ」などのメリットがあるといわれています。

SDGsの目標を設定するには、その目的、内容、社内の担当者を決め、現状の事業内容から、扱いやすく効果が期待できる項目を洗い出すことから始めます。例えば、経営指針の策定であれば、顧客層や売り上げの拡大に向けて、10 年後の不動産市場を想定し、必要となる経営資源や戦略を考えることで目標を探すことができます。

独自の目標が確定したら、関連するSDGsのアイコンを自社のホームページや広告媒体等に掲載して、社会への貢献をアピールしましょう。SDGsに取り組む不動産業者の目標設定を見ると、目標3「すべての人に健康と福祉を」や、目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、目標11「住み続けられるまちづくりを」を掲げる企業が多くあります。

持続可能な開発目標(SDGs)の詳細

持続可能な開発目標(SDGs)の詳細
※外務省の資料から作成

全日本不動産協会の取組み

協会では持続開発可能な目標を掲げてSDGsに取り組み、現在、外務省「SDGSアクションプラットフォーム」へリンク掲載を申請しています。

地域の安全な不動産取引の推進

協会設立日の10月1日を「不動産の日」とし、全国一斉無料相談会を実施しております。地域の皆様の不動産知識の普及と安全な取引を推進することで、住みよいまちづくりを目指しております。相談会の実施にあたっては、不動産取引の実務に精通した宅地建物取引士をはじめ、弁護士や税理士、不動産鑑定士、建築士などが、地域ごとのあらゆるご相談に対応しております。また、地方本部ではこの日に限らず継続的に地域の無料相談会を開催しております。

既存住宅の流通活性化

日本の住宅市場は長い間新築至上主義が根付いており、住宅のスクラップ&ビルドを繰り返し、解体時に大量の廃材が生まれ、新築時には様々な材料が必要となることから、環境の側面から強く懸念されてきました。そこで協会は既存住宅の流通活性化の一助を担うべく、平成30年3月、不動産流通団体として初めて「特定既存住宅情報A提供事業者団体登録制度(安心R住宅)」に事業者団体として登録を受けました。この制度は、既存住宅の「不安」「汚い」「わからない」といった従来のマイナスイメージを払拭するため、一定の条件を満たした住宅の広告にロゴマークを付け、物件選びに役立つ情報を提供する仕組みで、リフォーム、リノベーションをすることで既存住宅に新たな価値を見出すことができます。今後も制度の普及を推進してまいります。

空き家問題への取組み

管理が行き届かなくなった空き家の増加は周辺環境に悪影響を及ぼすこととなります。協会では地方本部が自治体と協定を締結し、相談窓口の設置や空き家バンクの運営等に積極的に協力しております。また、令和2年12月には、会員から収集した500件を超える空き家取扱い事例を分析、集約した「全日空家対策大全」を策定し、国へ提言を行いました。今後も国や自治体との連携を図り、健全なまちづくりに貢献してまいります。

社会貢献への取組み

社会が抱える課題に対し公益団体としてできることは何かを常に意識し、様々な活動を行っております。地域社会の健全な発達に寄与することを目的として、青少年スポーツの後援活動や、まちの防犯に関する啓発活動、ボランティア活動を継続的に実施しております。また、オレンジリボン運動の啓発や児童養護施設への寄附、社会的弱者への居住支援など、自治体や地域の団体等と連携し、幅広く包摂的な支援を行っております。さらに、自然災害に見舞われた方々の生活再建及び被災地域の復興に役立てていただくため、自治体への義捐金寄付を行いました。このような活動を継続することでより良い社会の構築を目指しております。

恩恵を受けてきた不動産で地域貢献を続けていきたい。

「壊して建てる」ではなく新たな50年をプラスする発想

今号から、独自に持続開発可能な目標を掲げて、SDGsに取り組む会員を紹介します。第1回目は、不動産投資、相続・資産管理、賃貸管理など多岐にわたって事業を展開する株式会社シー・エフ・ネッツ。「過去の50年にこれからの50年をプラスするのがわが社のSDGsの発想」と語る代表・倉橋氏にお話を伺いました。

―シー・エフ・ネッツがSDGsに取り組んだきっかけは何でしたか。

三浦市にある山田酒店との出会いがきっかけでした。その酒店は100年以上の歴史を持ち、下町情緒溢れる三崎港付近にある、風情を感じるお店でした。ただ、商店街が衰退したこともあって、経営難に陥ったのでしょうね。取り壊して建売住宅にするという話を聞いたんです。それを私が間に割って入って、山田酒店を買い取ったのが始まりでした。

―どうして買取りをしたのですか。

私がスクラップ&ビルドに対して異を唱える人間だからです。以前から古い建物にこそ価値があると考え、収益性さえプラスすれば、どんなに古い建物でも利活用できることを理解していましたから。実際、店舗買収後、店の雰囲気は残しつつ、内装を変え、アルコール類も独自性の商品を揃えました。そして2階を簡易宿泊所に改築して「宿泊できる酒店」として再始動したんです。結果、売り上げも黒字に転じ、簡易宿泊所の稼働率も6割をキープしています。この再生を皮切りに、古い建物を20数ヵ所買取り、宿泊施設や料理店、スポーツクラブなどを出店しています。ここで重要なのは、昔からの街並みは残すこと。現在この活動は、三浦市との共同事業になっています。

―その活動はいつ頃の話ですか。

2012年頃だったと思います。いまでこそ、神奈川県から「かながわSDGsパートナー」として認定されていますが、それとは関係なく、SDGsの風潮が起こる前から、不動産業界に身を置く私たちが自然に起こした行動で、ある不動産会社が信念を持って建物を改築したらそれが地域の発展につながった。ただそれだけのことです。当社もこれまで不動産事業を生業にして、恩恵を受けてきたわけですから、不動産会社だからこそできた地域への恩返しではないでしょうか。三浦市との事業が活性化していくにつれ、私自身、横浜市から転居して三浦市民となりました。地域活性化はその地域でしかできないと考えています。

―では、不動産を通してこれからも地域貢献を行っていくと。

ええ。実は4月からミウラトラストという会社が新たな事業展開を始めます。不動産業から宿泊&飲食&観光業へ。三浦市の魅力「食・働・楽」というコンセプトで横浜、湘南、鎌倉に負けない観光エリアにしていくことが最終的な目標です。

株式会社シー・エフ・ネッツ 

株式会社シー・エフ・ネッツ

神奈川県鎌倉市大船2-19-35CFネッツ鎌倉ビル
TEL:0467-50-0210(代表)
FAX:0467-50-0679
営業時間:9:00~18:00
定休日:水曜

株式会社シー・エフ・ネッツの主な取組み

三崎下町・城ヶ島地区活性化事業

三浦市との協同でエリア活性化を図る同事業は、全国の商店街の活性化参考モデルとして関係者が視察に来るなど、注目を集める事業です。

三浦市トライアルステイ事業

移住や二拠点生活希望者に三浦市でのお試し生活を体験してもらい、地域の魅力を高め、三浦市の人口減少に歯止めをかけることを目的としています。

60フィートヨット翔鴎(かもめとぶ)号体験乗船

国内で最大級の60フィートヨット「翔鴎号」を三浦市のイベント等に無償で提供。三浦市活性化と海洋教育を推進しています。


詳しくはシー・エフ・ネッツのホームページをご覧ください。