リニア中央新幹線の開業で日本の未来はどう変わる
~日本の大動脈、東海道新幹線とリニア中央新幹線~


日本の大動脈として経済の発展に寄与してきた東海道新幹線も開業から半世紀以上がたちました。その東海道新幹線と並んで東京・名古屋・大阪の三大都市を結び、これからの日本を支えていくと期待される「リニア中央新幹線」。現在各地で建設が進められているこの超高速鉄道は、私たちの暮らしや経済にどのような影響を与えるのでしょうか。

高度成長期、人々の生活を大きく変えた東海道新幹線

前回の東京オリンピックを知っている世代は、“夢の超特急”と聞いて、鼻の丸い愛らしい姿の東海道新幹線0系を思い起こす方が多いのではないでしょうか。国鉄時代の1964年、東京オリンピックの開催に合わせて開業した東海道新幹線。当時の鉄道技術では革新的だった“0系”が登場し、それまで6時間半かかっていた東京―新大阪間を4時間で結ぶことが可能になりました。最高速度時速210kmで走る新幹線は地方経済にも大きな影響を与えることになり、企業や工場の地方への誘致などに加え、観光などさまざまな産業に変革を起こしました。お盆や正月の休みに家族そろって帰省する姿が風物詩となったのも新幹線が、私たちの暮らしに与えた影響のひとつかもしれません。

さらなるサービス向上を目指して進化し続けた新幹線は、1992年に第二世代の幕開けといえる300系のぞみ号が誕生。最高時速270km、東京―新大阪間の所要時間は2時間半に短縮されました。現在は2020年に登場したN700Sが、安全性、安定性、快適性、環境性能など最高レベルの技術で運行しています。

高成長期の象徴でもあった初代新幹線0系
高成長期の象徴でもあった初代新幹線0系
快適性や環境への適合性を高めたN700S (画像提供:JR東海)
快適性や環境への適合性を高めたN700S (画像提供:JR東海)

新たな超高速鉄道「リニア中央新幹線」

このように、進化し続ける東海道新幹線とともに、これからの超高速鉄道として期待されているのが、「リニア中央新幹線」です。その開発の歴史は古く、東海道新幹線開業前の1962年にはすでに研究開発を開始しています。

1977年に宮崎実験線で始まった超電導リニアの試験走行。1997年には山梨に場所を移し、試験走行を積み重ねてきました。2013年に、それまでの18.4kmから42.8kmに距離を延ばした実験線で、L0系車両でより営業運転に近い形での走行試験を再開。現在、営業線に必要な技術開発はすでに完了しており、2020年からは、先頭車両の形状を最適化し、空気抵抗を約13%下げ、消費電力や車外騒音の低減を実現したL0系改良型試験車で、快適性や保守の効率化の実験や検証が行われています。

独創性の高い技術開発を進めてきた超電導リニア方式は、時速500kmでの高速走行性能、全速度域にわたる高い加減速性能及び登坂能力などの面で高速交通機関として現行の在来型新幹線方式より優れているといいます。さらに、レール上を車輪で走行する在来型新幹線方式と比較して、超電導リニア方式は、地震時などにおいて電力の供給が停止された後でも電磁誘導作用により軌道中心に車両が保持されること、ガイドウェイ側壁により物理的に脱線を阻止できる構造を有することから、安全確保上の大きな利点があります。

東海道新幹線が開業からすでに半世紀以上たち、経年劣化に伴う将来の大規模な修繕の必要性や、いつかくるといわれている南海トラフ地震など、大災害が起きた際のバックアップとして、東海道新幹線との二重系化が必要とされることから、リニア中央新幹線の早期開業が期待されています。

営業運転速度時速500km、品川―名古屋間が最速40分、大阪までは最速67分という画期的な超高速鉄道は、これからの日本の経済や人々の暮らしにどのような影響を与えていくのでしょうか。

リニア中央新幹線のルート
リニア中央新幹線が全線開業すると、現在、東海道新幹線「のぞみ」で東京―名古屋・大阪を利用している乗客の大半がリニア中央新幹線へシフトすると予想されています。その分、東海道新幹線は「こだま・ひかり」の運行を増やす余裕が生まれ、「のぞみ」が通過する駅(図内青色)の利便性が大幅に向上することが見込まれています。

リニア中央新幹線に寄せる期待

“想像できる未来を、超えよう”というJR東海のキャッチコピーの通り、東海道新幹線のDNAを受け継ぎ、時速500kmという新幹線史上世界最速のスピードを手に入れたリニア中央新幹線の開業により、東京、名古屋、大阪といった都市部のみでなく沿線の各地域で、新しいライフスタイルの可能性や、多くのビジネスチャンスが生まれることが期待されています。

リニア中央新幹線の運行ルートは、東京(品川)、神奈川、山梨、長野、岐阜、名古屋、そして全線開業時には大阪まで延伸されます。これにより、東京―名古屋、大阪までの所要時間が大幅に短縮できることに加え、これまで都市部からのアクセスがいいとは言えなかった長野県(上伊那や南信州地域)や岐阜県(多治見市や中津川市など東濃地域)へのアクセス・利便性が格段に向上します。それにより、地域を支える若い世代の流出を防ぎ、都市部からの移住者によって人口を増やすこと、また、新たにできる駅を中心とした周辺地域の観光業の発展、企業の生産活動の拡大など、さまざまな経済効果が期待されています。

実際に各地の期待度は高く、リニア中央新幹線の開業により、移動時間を短縮できることで「故郷で生活しながら都市部での仕事を続けられる」、「大切な人との時間をたくさんもてる」、「ビジネスチャンスが増える」、「今までより気軽に旅に出られる」など、多くの声がJR東海に寄せられています。さらに、最近話題に上ることが多い、都市と地方での二拠点生活も、交通の利便性が向上し時間的な制約が緩和されることで実現のチャンスが増えてくることも考えられるため、不動産や住宅に関わる業界からも、ますます注目されていくのではないでしょうか。

(協力:JR東海)

「リニア開業を機に持続的に発展するまちを目指して ―岐阜県中津川市」に続く