相続相談
2021.07.14

Vol.4 貸付事業⽤宅地等の⼩規模宅地等の特例について


Question

賃貸アパートを相続することになりました。自宅を相続した場合と同様に、小規模宅地等の特例が適用されるでしょうか。

Answer

アパートやマンション等を賃貸に出している場合、その建物が建っている土地について、一定条件を満たせば「事業用宅地等の小規模宅地等の特例」の適用を受ける事ができます。

居住用宅地等の80%の減額割合には及びませんが、最大面積200㎡まで50%の評価減が受けられますので、相続対策を考える上では積極的に活用したい税制の1つです。

相続開始直前の状況不動産貸付業の事業用
下記の要件に該当「貸付事業用宅地等」に該当する宅地等
評価減割合▲50%
限度面積200㎡

「貸付事業用宅地等」とは

(1)被相続人が貸付事業を営んでいた場合

被相続人が貸付事業を営んでいた場合

※相続開始前3年以内に新たに貸付事業の⽤に供された場合には、適⽤に制限がある場合がありますので、注意が必要です。

【適用要件】

  • 事業承継の要件…当該宅地等の取得者が、その宅地等の上で営まれていた被相続⼈の貸付事業を相続税の申告期限までに承継し、かつ、申告期限まで当該貸付事業を営んでいること。
  • 保有継続の要件…当該宅地等を相続税の申告期限まで保有していること。

(2)被相続人と生計を一にする被相続人の親族が貸付事業を営んでいた場合

被相続人と生計を一にする被相続人の親族が貸付事業を営んでいた場合

※相続開始前3年以内に新たに貸付事業の⽤に供された場合には、適⽤に制限がある場合がありますので、注意が必要です。

【適用要件】

  • 事業継続の要件…相続開始前から相続税の申告期限まで当該宅地等の上で貸付事業を営んでいること。
  • 保有継続の要件…当該宅地等を相続税の申告期限まで保有していること。

被相続人が複数の土地を所有している場合の小規模宅地等の特例の適用はどうしたらよいでしょうか?

1. 複数の貸付事業用宅地等を所有している場合

⼩規模宅地等の特例は前述のとおり、適⽤される⼟地に⼀定の⾯積制限が設けられています。⼀⽅で単位⾯積あたりの評価額の上限等は定められていないため、1㎡あたり100万円の⼟地であっても、1㎡あたり10万円の⼟地であっても、⼀律に限度⾯積まで制度の適⽤を受けることが可能です。このため、被相続⼈が複数の貸付事業⽤宅地を所有している場合には、実務上、単位⾯積あたりの評価額が⾼い⼟地に対して優先的に当制度を適⽤していくことが多くなります。

【例】 1㎡あたり評価額が100万円の⼟地150㎡と1㎡あたり評価額が10万円の⼟地200㎡を所有していた場合

 複数の貸付事業用宅地等を所有している場合
2. 居住⽤宅地等と貸付事業⽤宅地等の両⽅を所有している場合

貸付事業⽤宅地と居住⽤宅地等の両⽅について⼩規模宅地等の特例の適⽤を考えている場合には、少し複雑ですが、下記の式にあてはめて⾯積の限度を算定することになります。⾯積限度内でより有利な⼩規模宅地等の特例を受けられるように、事前にシュミレーションしておくことは相続対策として有効です。

居住⽤宅地等と貸付事業⽤宅地等の両⽅を所有している場合

以上のように、貸付事業⽤宅地を所有している場合には、⼩規模宅地等の特例の適⽤による評価減のメリットを最⼤限⽣かせるように、事前に適⽤要件をクリアする状態に整え、またどの⼟地に対して特例を適⽤するか検討しておくことが⾮常に⼤切です。


野田 優子

野田綜合法律会計事務所
公認会計士・税理士

野田 優子

1995年公認会計士第二次試験合格。Price Waterhouse Coopers(PwC)国際部(現あらた監査法人)、大手税理士法人を経て2006年に独立し、野田綜合法律会計事務所設立。不動産に関する税務全般業務およびコンサルティング業務をメインに、相続および事業承継関連、M&A支援業務、上場支援業務、法人税申告業務などを行う。