謹んで新春のお慶びを申し上げます


秋山 始

公益社団法人 全日本不動産協会
公益社団法人 不動産保証協会
理事長

秋山 始

皆様、澄み切った心持ちのもと晴れ晴れと新たな年を迎えられたことと存じます。

私が新年にあたり想いを致すのは、いつのときでも平和への希求と穏やかな日々への感謝でありますが、それを揺るがすがごとく、昨年2月、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻という国際社会に大きな衝撃を与える非常事態が発生し、いまなお収束の糸口すら見えていません。本会では危急存亡の事態に直面するウクライナ国民を人道的に支援するため緊急募金を開始したところ、全国の会員各位よりおよそ3,435万円もの篤志が寄せられました。あらためてご協力をいただいた皆様に深く感謝を申し上げるとともに、このように四海同胞の視座により世界情勢を捉えることのできる全国の仲間を心から誇りに感じます。そしてなにより、不動産を扱う者として、あらためて我が国土が永劫に平穏無事であることを願ってやみません。昨年9月にはこうした安全保障の観点に根差したいわゆる「重要土地等調査法」が施行され、特別注視区域内の土地及び建物を取引する場合等に一定の届出義務が課されることとなりました。宅地建物取引業者が注意すべき新たな法令となりますので、本会でも今後の区域指定等について逐次情報を提供して参る所存です。

さて、各産業界とも今や遅しとDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいるところですが、国土交通省では、3D都市モデル「PLATEAU(プラトー)」をリリースして都市計画・まちづくりにおけるさまざまな課題の発展的解決を図るほか、ドローンや無人搬送車両の自律運行といったモビリティ分野など新たな価値創造に活用する取組みを進めています。また、我が国の土地および建物(集合住宅等にあっては取引対象となる1室単位)に17桁の固有の識別番号を割り当てて情報の一元化を図る「不動産IDルール」が構築され、目下、今後の利活用について鋭意検討が進められています。本会では、こうしたデジタル不動産政策についても検討会に参画して意見を述べるなど不動産DXに強い期待を抱きながらその推進に積極的に寄与しております。

加えて「2050年カーボンニュートラル」の実現を見据えてGX(グリーントランスフォーメーション)のキーワードを目にする機会も増えております。とりわけ、エネルギー消費と密接に関わる住宅産業においては、住宅の省エネ性能基準を大幅に向上させる使命が課せられており、近年では太陽光発電のほかヒートポンプユニットによる地中熱利用など再生可能エネルギーの仕組みを取り入れた新しい住まいも次々と生み出されています。住宅ローン減税に表象されるとおり、政府の税制優遇制度も省エネ基準に着目する方針がはっきりと見て取れますので、GXについてはハウスビルダーのみならず我々不動産流通に携わる事業者全般が強く意識すべきことだと考えております。

この視点から、本会は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとする2025年大阪・関西万博におきまして、そのメインアトラクションとなる「大阪ヘルスケアパビリオン」のスペシャルパートナーとして協賛を行っております。さらに、今月より「ミライREBORNスマイプロジェクト」と銘打って、建築家やデザイナー、クリエイターのほか将来有望な学生等より、幅広く既成概念にとらわれないアイデアを募るコンペを開始いたします。そして、その成果により、2025年大阪・関西万博において未来社会の礎となるような先進的かつ公益性の高い展示に結実させることを目指しておりますので、どうかご期待いただくとともに、会員の皆様にも地域に根差した未来のまちづくりの担い手としてご参画願いたいと存じます。

本会は「令和8年度での正会員数4万社達成を導くため、(文字どおり「全日」ならではの)“オールジャパン”の推進体制を一層強化する」ことを理事長方針に掲げております。昭和27年の設立から昨年10月に丸70年を迎えた、不動産事業者の団体としては最も長い歴史を有する組織でありますが、見据えるのは今も昔も変わらず常に「未来」です。これまで不動産業界を形づくってきた先達の想いを受けながら、より良い明日の社会のため、そして豊かな住生活を通じた温もりのあるコミュニティを形成するため、全国の会員皆様とともに力を尽くして参ります。本年も変わらぬご支援、ご高配を賜りますよう謹んでお願い申し上げます。

結びとなりましたが、皆様にとりまして、本年が実り多き素晴らしい一年となりますこと、そして皆様のご健勝と益々のご発展を祈念し、新年の挨拶とさせていただきます。