年頭のご挨拶
原嶋 和利 理事長


謹んで新春のお慶びを申し上げます

原嶋 和利

公益社団法人 全日本不動産協会
公益社団法人 不動産保証協会
理事長

原嶋 和利

会員の皆様、また各界の皆様には、日頃より本会の運営に多大なるご理解とご支援を賜り、厚く御礼を申し上げます。

振り返りますと、令和の時代となって初めて迎える晴れやかな新年を寿ぐ(ことほぐ)傍らで、「新型コロナウイルス」なる耳慣れない感染症のニュースが届き始めたのが丁度一年前のことでした。それからというもの、桜の季節に想いを致すことすらできぬほど急速に感染が拡大し、爾来(じらい)、この窮めて(きわめて)厄介なウイルスは、地球規模で人々の生活様式を一変させるほどの猛威を奮い続けています。

我が国でも、それまでの賑わいが幻であったかの如く繁華街から瞬く間に人の姿が見えなくなりました。その結果、飲食業界、観光業界をはじめとして産業全体が大きな打撃を受け、我が不動産業界にあってもとりわけテナントビジネスを中心に大きな混乱がもたらされたのはご存知のとおりです。

そうした中、9月には新内閣が発足し、「新しい生活様式」に根差した景気対策が進められたこともあり、先月発表された日銀短観では、各企業規模とも製造業が2期連続で改善するなど足元の業況判断には前向きな点が見られたほか、日経平均株価に至ってはコロナ禍以前の水準を大きく上回り、およそ29年半ぶりにバブル崩壊後の最高値を更新しました。他方、非製造業にあっては宿泊や飲食などのいわゆる対人接触型サービスを中心に全ての企業クラスで先行きの見通しが悪化するなど、いまだ慎重な見方が必要とされています。

本会におきましても、史上初めて6月の定時総会を書面決議として代議員の招集を見送ったほか、10月の全国不動産会議栃木県大会や全国一斉不動産無料相談会といった公益事業の柱となるイベントをやむなく中止するなど、これまた厳しい運営を強いられました。それでも5月には、目標に掲げておりました会員数3万2千社を見事に達成し、さらにその勢いのまま今や3万3千社も目前に迫るなど、このコロナ禍にあっても着実に組織の拡大を実現しております。これも会員皆様が日々真摯に業務を行っておられることで、歴史ある「全日」ブランドにさらに磨きがかかっていること、そして地方本部の役職員各位が弛まぬ会員サービスを続け、魅力ある組織づくりを推進しておられることの賜物であります。皆様のご尽力に心より感謝を申し上げます。本年も一般社団法人全国不動産協会(TRA)と連携しながら全日グループ一丸となって会員皆様の事業を力強く支援して参ります。

また、昨年4月には「全日中期ビジョン」の理念を具体的な施策へと結実させるため、本会に専属する研究機関として新たに「全日みらい研究所」を設立いたしました。その皮切りとして、今や国家的課題となった空き家問題を取り上げ、これについて宅建業者としての視座から課題を洗い出し、さらにその処方を示すため「全日空家対策大全」を発表いたしました。空き家が増えれば地域は活気を失い、まちそのものが衰退するのは自明の理であります。したがって、空き家の適切な管理・処分を行うことは地域社会に対する極めて公益的な働きかけであるといえます。この大全では、こうした宅建業者の地道ながら公益性に富んだ取組みに光を当て、そこに今までの枠組みにはない新たな公的支援を行うべきであることなど6つの提言を行っています。このように、同研究所では、全国3万2千有余の会員の知見を活かし、その成果を広く社会に還元することを目的としております。本年も引続き公益的視点に立って、会員及び社会双方にとって有益な研究に邁進する所存です。

そして、昨年末に発表された与党税制改正大綱におきましては、本会がかねてより要望して来た住宅ローン控除における床面積要件の緩和が盛り込まれるに至りました。コロナ禍の影響もあり、国民に多様な住まい方、そして多様な働き方が広がる中で、若年世代からシニア世代まで幅広い購買層によるコンパクトマンション需要を後押しするものとして熱い期待を寄せております。本年も消費者保護という本会設立以来変わらぬ理念のもと、不動産流通の活性化と国民の豊かな住生活の実現に向けた政策提言に取り組んで参ります。

さて、冒頭にも述べましたとおり、我が国のみならず世界全体がコロナ禍の非常なる難局に面していますが、そうした中にあっても、社会は決して停滞するばかりではなく、卓抜した智慧(ちえ)と技術によって新たなイノベーションを生み出しています。この半年余り、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉を目にすることが俄かに増えたとおり、我が国の産業構造は大きな変革の時を迎えています。このように時代が移ろう過渡期こそ、しっかりと地に足を着けながら慧眼(けいがん)をもって時流を捉えることが必要となります。敷衍(ふえん)して申せば、まさに組織が持つ真の力が試される時機にあるともいえます。これまでにも増して “ALL JAPAN”である我が全日グループの強みを生かして、全国の会員皆様とともに新しい時代を切り拓いていくことを願ってやみません。

皆様にとりまして、本年が実り多き素晴らしい一年となりますこと、そして皆様のご健勝と益々のご発展を祈念し、新年のご挨拶とさせていただきます。