Vol.14 AIとサービス


不動産テック時代の到来 進む!業界のIT化

AIブームから数年が経ち、AIは未知のものからいかに活用するかを考えるべきものに変わってきました。今回から3回にわたり、不動産業界におけるAIを活用したサービス例、AIと人間の関係性、中小企業におけるAI活用方法についてお伝えしたいと思います。

01AIを活用したサービス例

新技術というと、ベンチャー企業の専売特許のように思われますが、実はそうでもありません。大手不動産会社でもさまざまなサービスが開発されています。

■ 曖昧な検索を可能にする「間取サーチAI」

三井不動産リアルティ株式会社が運営する「三井のリハウス」のWebサイトでは、マンション購入を検討している消費者自身が、自分の希望する間取り図をWebサイト上で作成し、似たような間取りの物件を探すことができる「間取サーチAI」というサービスを提供しています。

これまでの不動産Webサイトでは最寄駅、広さ、築年数など、数値化できる要素での検索機能しか提供されていませんでした。

一方、家探しにおいては、数値化できない部分も消費者にとっては重要です。特に「なんとなく、こんな感じの家」という漠然とした消費者の希望に対応できるかどうかで、問合せから成約までの割合は変わってきます。

しかし情報検索に関わる仕事は、人間の力だけで行おうとすると膨大な時間がかかってしまいます。「間取サーチAI」は、「なんとなく、こんな感じの家」という希望のうち、間取りに関する希望を叶える機能といえます。

「間取サーチAI」は、画像処理技術とAIによる機械学習で得られた結果をもとにすることで、部屋の種類と位置関係を識別することを可能としています。AIは画像と相性が良いのです。

顧客の希望する間取りから、AIの画像探索機能を使って類似物件が提示できる

■ 将来のリスクを見える化する「VALUE AI」

株式会社コスモスイニシアが提供するAIサービスが「VALUE AI(バリューアイ)」です。「VALUE AI」は、一棟投資用不動産のプランシミュレーションを簡単に行えるサービスです。

一棟投資用不動産の場合、買って終わりではなく、買った後の収支が重要になってきます。精度の高い収支計画を将来にわたって計算することは営業担当者にとって負担の大きい仕事。顧客にとっても、営業担当者に都度収支計算を依頼するのは心理的ハードルがあります。

「VALUE AI」は賃料変動、売却価格、空室率など、将来予測値をAIがリアルタイムに収支計算をし、運用リスクを「見える化」します。検討している一棟投資用不動産の判断材料にしたり、複数の投資用物件を一元管理したりすることが可能となっています。

消費者、営業担当者両者の負荷を下げ、精度の高い情報を提供するとともに、新規顧客獲得にも役立つサービスとなっています。

AIによる高度な分析で利回り、賃料の変動率、売却益等を算出

■ 最適な物件を提案するホワイトボックス型AI

東急リバブル株式会社とNEC (日本電気株式会社)が2020年11月からの稼働開始を目指して開発しているのが、AI技術を活用して投資用区分マンションと購入希望者をつなぐマッチングシステムです。このマッチングシステムで注目されているのが「ホワイトボックス型AI」と呼ばれる技術です。

通常、AIにはブラックボックス問題がつきまといます。

人間が何かを判断する場合、そこには理由があります。もちろん直感で判断することもありますが「こういった理由で判断した」という大まかな説明が可能です。

一方、AIは大量の学習データから、自動的に「特徴」を抽出して分類し、答えを導き出します。この答えに至るモデルがとても複雑で説明できないことを「AIのブラックボックス問題」と呼んでいます。この問題が根深いのは、AIが導き出した答えが重要であればあるほど、人間は理由を欲しがる点です。「これがオススメです」と言われても、理由がなければ人間は納得できないのです。

そこで東急リバブル株式会社とNECが開発しているAIサービスでは、NECの「異種混合学習」と呼ばれる機械学習技術を活用。「異種混合学習技術」は、さまざまな種類のデータの中から規則性を自動的に発見して予測を行うと同時に、予測結果の根拠についても説明することが可能なホワイトボックス型AIなのです。

このホワイトボックス型AIを活用することで、個々の顧客に最適化された物件情報を、営業担当者を通じて提供することが可能ということです。

AIはシステマチックな印象があるかと思いますが、より人間に近いことができるように進化を続けているのです。次回は、AIと人間の関係性についてお話をさせていただきます。

AI技術により従来人手では困難であった複雑な分析について高精度で解釈性の高い予測結果が出る

針山 昌幸

株式会社Housmart
代表取締役

針山 昌幸

一橋大学卒業後、大手不動産会社で不動産仲介等を担当。楽天株式会社を経て、2014年に株式会社Housmartを設立。テクノロジーとデザイン、不動産の専門知識を融合させ、売買仲介向けの顧客自動追客サービス「プロポクラウド」を展開。著書に『中古マンション本当にかしこい買い方・選び方』等がある。