Vol.16 中小企業におけるAI活用方法


不動産テック時代の到来 進む!業界のIT化

AIが便利なものだと思っていても、どこか遠い存在に思えるのもまた事実。しかし「ある仕組み」によって、AIが中小企業にとって身近な存在になっているのです。

AIのような新技術を自社のビジネスに活用するためには、これまで専門人材の雇用や膨大な初期投資が必要でした。しかし「SaaS」と呼ばれるサービス形態のおかげで、AI活用のハードルが大きく下がっているのです。

■ SaaSとは何か

SaaSとは「Software as a Service」のこと。簡単に言えば、Google ChromeやMicrosoft Edgeの画面上でソフトウェアを使える仕組みのことです。

これまでソフトウェアを利用するためには、自社のサーバーで独自にソフトウェアを開発する必要がありました。しかしこの方法では、ソフトウェアの開発や保守、サーバーの維持管理に膨大なコストがかかります。

一方、SaaSの仕組みでは、ソフトウェアがインターネットを通じてリアルタイムで提供されます。わざわざ自社でサーバーを立てる必要もなく、保守メンテナンスのための人員も必要ありません。

■ SaaSのメリットとは

SaaSがこれまでのソフトウェアと比べて何よりも優れているのは「手軽さ」です。先ほどお伝えしたように自社サーバーも、保守メンテナンスのための人員も必要ない上に、利用料金も「使った分だけ」というサービスが多く、もし使ってみて自社に合わないようであれば、撤退ができます。

初期投資金額とランニングコストを抑えながら、万が一の際には撤退もしやすいという特徴が、中小企業がAIを活用できる土壌を醸成したのです。

それでは、実際に中小企業で活用されているAIを見てみましょう。

■ スマート物確

株式会社ライナフが提供するのが「スマート物確」。不動産管理会社における、物件確認の手間を削減し、効率化をはかるサービスです。

一般的に不動産管理会社は、管理する住戸数が増えれば増えるほど、他の不動産会社からの問合せ数も増えます。

「スマート物確」では、物件確認の電話を24時間365日、人の代わりに自動音声が応答。AIによる音声認識で部屋を特定し、物件確認に応答してくれます。

効率化に加え、24時間対応が可能なことで営業時間外も機会損失を防ぐことができ、またどの物件にどのくらい問合せがあったかを可視化することによって営業活動の参考にすることが可能です。

■ WealthPark Business

「WealthPark Business」はWealthPark株式会社が提供する、不動産管理会社と不動産オーナーをスマホアプリでつなぐサービスです。

これまで不動産管理会社から不動産オーナーへの収益報告は、メールや郵便で行うことが一般的でした。WealthPark Businessが提供するスマホアプリでは、収益報告をスピーディーに行えるだけでなく、AIによって計算されたオーナー保有物件の購入時から現在までの差額、前月と比べた不動産価格・賃料の値動きを可視化します。

単に人間の作業を削減するだけでなく、AIを活用することで不動産オーナーに高品質な情報を提供することができるのです。

■ プロポクラウド

弊社ハウスマートが提供する「プロポクラウド」もAIを活用したサービスです。

プロポクラウドは、売買不動産仲介営業に特化した自動物件提案システムです。独自の物件データベースにより、中古マンションの購入検討者に、最適な物件を簡単に提案することができます。プロポクラウドでは、この独自の物件データベース生成や、価格推定機能にAIを活用しています。

手間がかかるため人力だけでは難しい追客管理をプロポクラウドによって行うことで、安定的な売上を実現することが可能になります。

■ AIを活用すること

3回にわたり、不動産業界におけるAIについてお話をしてきました。AIは農業革命、産業革命に次ぐ第3の革命をもたらすといわれています。しかし、AIはなんでも叶えてくれる魔法のランプではなく、人間の敵でもありません。企業規模にかかわらず、少しずつ活用することで企業の業績を伸ばす大きな武器になり得るものです。


針山 昌幸

株式会社Housmart
代表取締役

針山 昌幸

一橋大学卒業後、大手不動産会社で不動産仲介等を担当。楽天株式会社を経て、2014年に株式会社Housmartを設立。テクノロジーとデザイン、不動産の専門知識を融合させ、売買仲介向けの顧客自動追客サービス「プロポクラウド」を展開。著書に『中古マンション本当にかしこい買い方・選び方』等がある。