Vol.11 IoTとサービス


不動産テック時代の到来 進む!業界のIT化

IoTがこれまでのモノと違う大きな点は、サービスとの親和性です。これまで単機能だった製品の時代から、サービスの一部を補完する形としてIoTが普及してきています。それは、モノが主役の時代からサービスが主役の時代となる大きな転換期ともいえます。

01身近な家電がIoTへ

IoT(=Internet of Things)が不動産業界、そして世の中を変えるのは間違いありません。皆さんにとって、最も身近なIoTであるスマートフォンを例にとれば、しっくりくるでしょうか。スマートフォンは、携帯電話が電話の機能とは別にインターネット接続の機能を持ったことで、今のような魅力的な商品となりました。テレビは今後、地上波を受信し放映するためのものではなく、インターネットで番組を受信する端末へと変わっていきます。そう、テレビもIoTになってきたのです。

02IoTによって生まれる
新しいサービス

モノがインターネットにつながることで、様々なサービスとつながっていきます。例えば、テレビがインターネットにつながったことで、地上波の番組を流すという単機能から、見たいときに見たい番組を見る、天気を見る、タクシーを呼ぶ、その他、様々な機能が追加できます。冷蔵庫がインターネットにつながることで、「牛乳がなくなったら届く…」というように、自動的に特定の食材を配達することができます。これからの時代、確実にビジネスの中心は、「モノ売りではなくコト売り」になっていきます(図1)。

ライナフはスマートロックを作っていますが、「鍵の販売店」と表現されない会社にしたいと思っています。ライナフは、モノ売りではなくコト売り、つまりサービスを提供することに主眼を置いています。そして、多くのIoT企業は、それを意識したサービス作りをしています。

例えば、スターバックスは、創業当初から「美味しいコーヒー店」を目指したわけではなく、「居心地の良い空間」の提供を軸にしています。その対価のとり方が、コーヒー代です。車メーカーも、「車の製造会社」ではなく、「運転する楽しみと居心地の良い移動空間」を提供の軸にして、製品開発やブランディングをしています。そして、車のIoT化は、コネクテッドカーと呼ばれ、急速に開発が進んでいます。車がIoT化すると、それは従来の概念であるモノとしての車ではなく、「移動する空間」としての移動サービスに近いものになります。運転は人の手を使わずに自動になり、移動中にはテレビを見たりご飯を食べたりできるようになります。まさに「動くリビング」のようなものですね(写真)。

※常時ネット接続され、最新の道路状態を取得して最適なルートを算出したり、事故時に自動的に緊急通報したりする機能を搭載した車。

図1 IoTによる新サービスの展開

IoTとクラウドサービスの機能を使って、映像コンテンツを検索したり、 外出先からネットワークを使って録画したりすることができる

写真 車内は動くリビング

運転操作をすべてAIに任せ、車内でテレビ鑑賞、読書等ができるようになる時代がくるといわれている

IoT化とは、すなわち機能単体で販売していたモノ売りから、サービス中心のコト売りへのビジネスモデルの転換を指しているのです。しかしながら、IoTが一般的になってきてからまだ日が浅く、主戦場であるはずのサービス側のラインナップはイマイチです。上記の例で挙げた、冷蔵庫+食材配達も、実証実験レベルであり、本格的にスタートはしていません。その結果、IoTというと、スマートスピーカーで照明を操作したり、遠隔でエアコンや風呂が操作できたりする(ある意味安直な)サービスのイメージがつき始めてしまっています。これまで、モノ作りに一生懸命だった企業が、突然サービスを作れと言われても難易度が高く、どうしてもわかりやすいサービスしか生まれていないのが実情です。

03データの活用

また、「IoTはデータビジネスである」と言う人も多いです。「センサーなどのモノから上がってくるデータこそが、最も価値があるのだ!」というご意見です。間違ってはいないのですが、手段と目的を取り違えていると思います。センサーから上がってきた情報を、どう使うか考えるのではなく、こういうことを調べたいからデータを集めるためにセンサーを付ける、という順番で考えないと、ビジネスとして成立しません。よくご相談をいただく案件で、「こういったデータがセンサーから集まるのですが、よい使い方はありませんか?」というものです。正しくは、「こういうことを把握したい(例えば、顧客の動きや目線等)から、どういうセンサーを付けてどういうデータを集めればよいか?」の順番で考えないと、失敗するということです。

逆に言うと、IoTでの成功法則がまだ多く生まれていない分、ビジネスチャンスも多いということになります(図2)。次回は、IoTとビジネスチャンスについてお話をしたいと思います。

図2 クラウド等へのデータの蓄積

センサー等を搭載した複数のIoT機器から得られた情報を集約することで、様々な情報が集まり、ビジネスチャンスにつながる

株式会社ライナフ
代表取締役

滝沢 潔

1982年生まれ。神奈川県出身。三井住友信託銀行で資産運用相談、不動産投資セミナーの講師などに従事した後、不動産向けシステム開発会社の株式会社ライナフを設立。不動産投資を24歳から始め、4棟のビル・マンションのオーナーとなる。1級FP技能士、一般財団法人不動産テック協会理事、不動産証券化協会認定マスター。