Vol.20 毎月の売上げをコントロールできる会社とDX


不動産テック時代の到来 進む!業界のIT化

売上げは会社にとって生命線です。「毎月の売上げを安定させたい」というのは、経営者にとって切なる思いではないでしょうか。実は、DX(デジタルトランスフォーメーション)を行うことで、毎月の売上げをコントロールできる可能性がグッと高まるのです。

■ なぜ、毎月の売上げが安定しないのか

毎月の売上げは「単価×契約数」と表すことができます。この単純な計算式に、世の中の多くの経営者が日々頭を悩ませています。

なぜ、毎月の売上げが安定しないのか。それは、どのような会社であれ、顧客のことをコントロールすることはできないからです。ピーター・ドラッカーの「企業の目的は顧客の創造である」というのは有名な言葉ですが、経営は顧客と切っても切り離せません。

さきほどの「単価×契約数」という単純な数式の裏側には、無数の顧客の動きがあります。顧客の動きをコントロールすることはできませんから「どうしたらもっと多くの顧客にサービスを利用してもらえるか?」を考え、顧客の動きを知るしかありません。

そして、その顧客の動きを知る方法こそがDXなのです。

■ KPIを効果的に設定する

客の動きは無数にあります。ですので、経営にとって特に重要な動きを定義し、その動きをしている顧客の数を数えることが肝要になります。

この顧客の数をKPI(Key Performance Indicators)と呼びます。このKPIをどれだけ効果的に設定できるかで、経営の内容は変わってきます。

例えば、不動産売買仲介をメインで行っている不動産会社の場合、「契約数」を購入の契約数と売却の契約数で分ける、「購入の契約数」を購入申込数と購入契約率に分ける、「購入申込数」を見学数と申込率に分けるというように分解していきます。

〈例〉KPI:購入の契約数、購入単価、購入申込数、見学数、購入申込率、初回の見学数、2回目以降の見学数、初回の見学申請数、初回の見学調整率、アクティブな顧客リスト数、当月登録の顧客リスト数、前月から引き続くアクティブな顧客リスト数、顧客リストのアクティブ率など。

KPIは、あまりにも大きい単位だと効果的な対策に繋がりません。KPIを分解することで「今、何がボトルネックになっているか」を把握することができるようになるのです。

KPIの繋がりのことを「パイプライン」と呼びます。売上げを安定して上げるためには、パイプラインを安定させることが必須です。パイプラインを安定させることで、経営の蓋然(がいぜん)性が高まります。

売上げはすべてを癒す、という言葉がありますが、同時に売上げはすべてを隠しもします。売上げが上がっていたとしても、実はパイプラインが崩れており、将来の売上げは危機的な状況になるであろうということがありえます。パイプラインを把握し続けることで、将来の危機を事前に察知できるのです。

多くの経営者が頭を悩ませている“顧客の動き”。解決の鍵はKPIに?
多くの経営者が頭を悩ませている“顧客の動き”。解決の鍵はKPIに?

■ DXがKPIを進化させる

DXによって、顧客の動きを詳細に知ることができるようになりました。例えば、今までは自社の顧客リスト数しか把握することができなかった会社のことを考えてみましょう。

DXが進んだ場合、この会社は、メールを送付した際、実際にメールを開封してくれている顧客の数まで追うことができるようになります。さらにメールの開封有無だけでなく、どのくらいの頻度でメールを見ているか、各営業社員がどのくらい「今、家を探している顧客」を持っているのか、ということが簡単に分かるようになります。

そうすると、単に毎月の顧客リスト数を追いかけるのではなく、「今、家を探している顧客数」をKPIとして設定できるようになります。単に顧客リスト数を追いかけるのと、「今、家を探している顧客」を追いかけるのとでは、とるべき行動が変わってきますし、「今、家を探している顧客」を追いかけるほうが施策の幅が広がるというのは容易に想像していただけるのではないでしょうか。

KPIを効果的に設定するために、まずはデータを分析・分解する
KPIを効果的に設定するために、まずはデータを分析・分解する

■ DXによって属人化から脱却する

営業組織であれば、当然、トップセールスがいると思います。トップセールスがいることは、何ら悪いことではありません。しかし、トップセールスに依存した組織であることは問題です。もしトップセールスが会社を辞めてしまったら、会社が立ち行かなくなるからです。

トップセールスには、必ずトップセールスである「行動」の理由があります。トップセールスである「行動」の理由を、DXによって明らかにすることが可能です。そもそも見込み顧客の数が多いのか、顧客の離脱率が低いのか、顧客との接触回数が多いのか、見学の数が多いのか、申込率が高いのか、その理由をデータから明らかにします。そしてそのトップセールスの行動を全社のKPIとして設定することで、営業組織全体を「トップセールス化」することかできます。

DXにより営業を化学し、属人化から脱却することが、売上げの安定へと繋がるのです。

次世代コミュニケーションPropoCloud

針山 昌幸

株式会社Housmart
代表取締役

針山 昌幸

大手不動産会社、楽天株式会社を経て、株式会社Housmartを設立。テクノロジーとデザイン、不動産の専門知識を融合させ、売買仲介向けの顧客自動追客サービス「プロポクラウド」を展開する。著書に『中古マンション本当にかしこい買い方・選び方』(実業之日本社)など。