労務相談
2021.12.14

Vol.1 新型コロナウイルス感染症への企業対応


Question

社員が新型コロナウイルスに感染したことが判明しました。企業として感染した社員や周辺社員への対応をどのようにすればよいでしょうか。

Answer

感染者および濃厚接触者はもちろんのこと、その他の接触者となる社員に対しても、在宅勤務や休業(自宅待機)を命じるなど、社内感染が発生・拡大しないような安全配慮措置を講じる必要があります。

1. はじめに

ワクチン接種率が高まってきたもののブレイクスルー感染が確認されるなど、新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」)が終息する兆しはみられず、今後も職場での感染者が発生するものと思われます。また、冬季には季節性インフルエンザも流行することから、社員が感染症に感染した場合や濃厚接触者に該当した場合の企業対応について解説します。

2.企業の安全配慮義務

企業には「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」(労働契約法5条)として、安全配慮義務が課されておりますが、企業に求められる配慮は一様ではなく、業務の種類、職種、職場環境等を勘案して個別に対応することとなります。

新型コロナに関しても感染防止のための企業対応が求められておりますが、国や行政から出されている要請や指針を目安として、実現可能な対応をできる限り講じることが重要です。

3密(密閉、密集、密接)を避け、人流を抑えるために、在宅勤務・時差勤務制度の導入、WEB会議の実施といった柔軟な働き方が推奨されています。

職場では、マスク着用、アルコール消毒、検温の徹底のほか、会社負担でPCR検査を定期的に実施している企業もあります。PCR検査については費用の問題もありますので、出張・顧客訪問時に臨時的に行うことでもよいでしょうし、いざという時のために簡易的なPCR・抗原検査キットを社員や家族用にあらかじめ配布しておくことも検討の一つです。

3.感染した社員への対応等

令和2年2月1日付で新型コロナが指定感染症に認定(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)されたことで、社員が感染した場合は就業制限の対象となります。感染した社員については、保健所等の指導のもと発症日から10日間の外出自粛が求められ、その後問題ないと判断された時点で職場復帰となりますが、当該就業制限は会社・職場における就業制限に限定され、在宅勤務までも当然に制限されるものではありません。

濃厚接触者に該当する社員については、14日間の外出自粛が要請されますので、当該観察期間が明けた後に出社・勤務を認めるものとなります。

その他の社員(感染者と接触があった社員、濃厚接触者と濃厚接触した社員など)への対応としては、数日間は在宅勤務や自宅待機・休業を命じて様子をみるなど、行政から自粛要請がない場合でも、職場での感染拡大を防止するための対応が求められます。また、37.5℃以上の発熱があり感染が疑われる社員や同居家族が濃厚接触者となった社員に対する出社可否についても苦慮するところですが、安全配慮の観点から、同様の対応を採るべきものといえます。

4.休業手当の支払い

労働基準法26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとしており、新型コロナ感染者等を休業させた場合の休業手当の有無が問題になりますが、感染者に対する休業要請は「使用者の責に帰すべき事由による休業」には該当せず、原則として休業手当は不要です。ただし、在宅勤務が可能な者を就労させずに休業させた場合は、休業手当を支給する必要があります。

濃厚接触者についても保健所等から14日間の外出自粛要請がありますので、基本的に休業手当は不要です。

なお、行政からの外出自粛要請の対象とならない接触者や発熱者等を、経営判断により休業させた場合は、休業手当が必要となります。

いずれの場合でも、社員が自主的に年次有給休暇を取得し、給与を全額確保することは問題ありませんが、事業主が取得を強要することは原則法律違反となります。

5.労災保険の適用

社外感染した社員が感染したことに気づかずに出社し、他の社員に感染させてしまった場合、労災保険が適用される可能性があります。

特に職場クラスターが発生するなど社内感染が明らかな場合、社内感染者については、療養補償給付(後遺症による通院治療費)や休業補償給付(休業開始後4日目以降)の対象となります。

なお、社内感染において、休業補償給付の対象とならない休業開始からの3日間については、給与を全額支給するか、休業補償(平均賃金の100分の60)するかのいずれかとなります。

社外感染した場合でも、感染者が健康保険に加入しており医師等の労務不能の証明を得られれば、傷病手当金(休業開始後4日目以降)を請求することができます。

6.まとめ

感染者や濃厚接触者に限らず、感染の疑いがある社員については、安全配慮の観点から直ちに休業や在宅勤務を命じるべきです。適切な対策を講じることなく社内感染が発生・拡大した場合、使用者責任や安全配慮義務違反が問われますので、感染者が確認されたときは、前日までの行動と接触者の状況確認を行い、速やかに防止措置を講じることが肝要です。

時間外や休日における同僚との会食や交流は私的行為であり、完全に禁止することまでは困難ですが、コロナ禍においては社員間の交流を極力控えるよう周知徹底すべきものといえます。

新型コロナウイルス感染症への企業対応

野田 好伸

社会保険労務士法人
大野事務所パートナー社員

野田 好伸
(特定社会保険労務士)

大学卒業後、社労士法人ユアサイドに入所し社労士としての基本を身に付ける。その後6年の勤務を経て、2004年4月に大野事務所に入所する。現在はパートナー社員として事務所運営を担いながら、人事労務相談、人事制度設計コンサルティングおよびIPO支援を中心とした労務診断(労務デュー・デリジェンス)に従事する。