労務相談
2022.08.12

Vol.9 育児休業復職時の配置転換は不利益取扱いに該当するのか


Question

育児休業をしている女性社員が復職することになったのですが、休業前に配属されていた本社部署が閉鎖されたことから、復職に際し、店舗勤務の営業職に変更する予定です。この配置変更に、問題はありますでしょうか。当該社員は営業職として勤務していた実績がありますが、店舗勤務者の場合、原則として土日勤務が発生します。

Answer

本社内での部署異動を検討すべきですが、店舗営業職として復職させるのであれば、土日勤務を免除したり、勤務時間帯を勘案したりするなど、当該社員の育児が困難とならないよう事業主として配慮する必要があります。

1.原職または原職相当職への復帰が原則

育児介護休業法(以下「育介法」)第22条では、育児休業終了後における就業が円滑に行われるよう、労働者の配置その他の雇用管理等に関して必要な措置を講ずるよう事業主の努力義務を定めています(図表1)。また、必要な措置の具体的内容について指針で示しており、育児休業後においては「原則として原職または原職相当職に復帰させるよう配慮すること」としています。

図表1

育児・介護休業法第22条(雇用環境の整備及び雇用管理等に関する措置)

事業主は、育児休業申出が円滑に行われるようにするため、次の各号のいずれかの措置を講じなければならない。
一 その雇用する労働者に対する育児休業に係る研修の実施
二 育児休業に関する相談体制の整備
三 その他厚生労働省令で定める育児休業に係る雇用環境の整備に関する措置
2 前項に定めるもののほか、事業主は、育児休業申出及び介護休業申出並びに育児休業及び介護休業後における就業が円滑に行われるようにするため、育児休業又は介護休業をする労働者が雇用される事業所における労働者の配置その他の雇用管理、育児休業又は介護休業をしている労働者の職業能力の開発及び向上等に関して、必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

育児・介護休業法第10条(不利益取扱いの禁止)

事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

※育児休業の他、介護休業、子の看護休暇、介護休暇、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、所定労働時間の短縮等の措置について申出をし、又は制度を利用したことを理由とする解雇その他不利益な取扱いについても禁止している。(育介法第16条、第16条の4、第16条の7、第16条の10、第18条の2、第20条の2、第23条の2)

よって、第一に原職または原職相当職への復帰を検討することになりますが、「原職相当職」について通達では次のように解説しています。

「原職相当職」の範囲は、個々の企業又は事業所における組織の状況、業務配分、その他雇用管理の状況によってさまざまですが、一般的に「休業後の職制上の地位が休業前より下回っていないこと」、「休業前と休業後とで職務内容が異なっていないこと」、「休業前と休業後とで勤務する事業所が同一であること」のいずれにも該当する場合には、「原職相当職」と評価されます。

2.不利益取扱いの禁止とは

部署や事業所の閉鎖などにより、原職や原職相当職への復帰が困難な場合がありますが、やむを得ず配置変更を行う場合には、復職者の労働条件の不利益取扱いに留意する必要があります。

育介法第10条では、育児休業等の申出・取得等を理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止していますが、不利益な取扱いの中には「不利益な配置の変更を行うこと」が含まれています。

配置変更が不利益な取扱いに該当するか否かについては、配置変更前後の賃金その他の労働条件、通勤事情、当人の将来に及ぼす影響等諸般の事情について総合的に比較考量のうえ判断すべきものですが、例えば、通常の人事異動のルールからは十分に説明できない職務または就業の場所の変更を行うことにより、その労働者に相当程度経済的または精神的な不利益を生じさせることは、不利益な配置の変更に該当します(図表2)。

図表2

配置変更が不利益な取扱いに該当する例

3.育児休業等の申出・取得等を「理由として」 いるかの判断

育介法の不利益取扱いの判断要件となっている「理由として」とは、育児休業等の事由と不利益取扱いとの間に「因果関係」があることを指しますが、育児休業等の事由を「契機として」不利益取扱いを行った場合は、原則として「理由として」いる(事由と不利益取扱いとの間に因果関係がある)と解され、法違反となる点に留意する必要があります(図表3)。

「契機として」とは
例外に該当する場合を除き、原則として、妊娠・出産・育児休業等の事由の終了から1年以内に不利益取扱いがなされた場合は「契機として」いると判断されます。つまり、直接的な関係がなくても、1年以内に解雇や雇止めをした場合は、原則法違反とされます。また、事由の終了から1年を超えている場合であっても実施時期が事前に決まっている、または、ある程度定期的になされる措置(人事異動、人事考課、雇止めなど)については、事由の終了後の最初の当該措置の実施までの間に不利益取扱いがなされた場合は「契機として」いると判断されます。

図表3

育児休業等の申出・取得等を「理由として」 いるかの判断

4.本件への回答

本件では休職時に配属されていた部署が閉鎖されていることから、部署異動(原職復帰不可)については理解するものの、原職相当職(職制上の地位・勤務地・職種が同じ)での復帰を第一に検討する必要があります。

次に原職相当職での復帰が困難である場合に勤務地や職種変更が伴う配置転換となりますが、その際は、職制や賃金等の労働条件が不利益とならないよう留意する必要があります。当該復帰社員は過去に営業職での勤務経験があるとのことですが、勤務日や勤務時間帯など子の養育が困難とならぬよう、本社勤務に近しい勤務体系とする配慮が求められます。


野田 好伸

社会保険労務士法人
大野事務所パートナー社員

野田 好伸
(特定社会保険労務士)

大学卒業後、社労士法人ユアサイドに入所し社労士としての基本を身に付ける。その後6年の勤務を経て、2004年4月に大野事務所に入所する。現在はパートナー社員として事務所運営を担いながら、人事労務相談、人事制度設計コンサルティングおよびIPO支援を中心とした労務診断(労務デュー・デリジェンス)に従事する。