建物を建てるために土地を購入しましたが、引渡しを受けた後、地中からコンクリートブロックの破片等の廃棄物(ガラ)が見つかりました。売買契約書には、売主は土地上の建物、工作物、立木等の一切を解体・撤去して引き渡すとの取決めがあります。売主に損害賠償を請求することができるでしょうか。
Answer
売主には、廃棄物の撤去義務がありますから、廃棄物を撤去するための費用について、損害賠償を請求することができます。
契約不適合責任・廃棄物の撤去義務
売買契約において、引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものであるときには、売主は契約不適合責任を負います(民法562条1項・564条・415条)。民法上、契約不適合責任は、①追完請求、②代金減額請求、③損害賠償請求、④契約解除の4つがその内容となっています(図表1)。
引き渡された目的物が契約不適合であって、買主に損害が生じたときには、買主は、売主に対して、損害賠償を請求することができます(同法564条・415条)。
地中埋設物
土の中にはさまざまな物が含まれ、また、埋設されています。どのような埋設物が存在していると契約不適合になるのかは、それぞれの売買契約の内容によりますが、建物建築を目的として土地を購入したときは、建物を建築するために、地盤の整備・改良を行い、基礎、浄化槽などの建築設備を埋設することになります。地中に、そのために支障となる異物があれば、契約不適合です。『土地上に建物を建築するについて支障となる質・量の異物が地中に存在するために、その土地の外見から通常予測され得る地盤の整備・改良の程度を超える特別の異物除去工事等を必要とする場合には、宅地として通常有すべき性状を備えないものとして土地の瑕疵になる』(大阪高判平成25.7.12判時2200号70頁)のであり、コンクリートやアスファルトのガラ・杭や構造物の残骸・産業廃棄物等々が存在することは、多くの裁判例で瑕疵とされています。
東京地判令和2.11.26
東京地判令和2.11.26-2020WLJPCA11268006は、土地に廃棄物が埋まっていたことから、売主に廃棄物を撤去する義務があるとされたケースです。「売主は、旧建物、工作物および立木等の一切を解体・撤去したうえで、土地を引き渡さなければならない」(本件特約)と定められていたにもかかわらず、コンクリートブロックの破片等の廃棄物(ガラ)が残されていました。『買主Xは、自宅を新築する目的で本件土地を購入したものであるところ、本件土地が、住宅街の一角にあり、通常は個人の住宅を建てる用途で利用されることからすれば、売主YもXの意図を十分認識し得たものと認められる。そうすると、本件特約において、旧建物、工作物及び立木等を解体撤去することとした目的は、Xが本件土地上に新たな建物や工作物を自由に建築又は設置できる状態にすることにあることは明らかであり、Yは、本件解体撤去債務として、本件土地上への新たな建物や工作物の建設に支障が生じない程度に、旧建物、工作物及び立木等を解体した上で、これらの解体によって生じたガラを撤去する債務を負担していたものと解するのが、当事者の合理的意思に沿う』として、売主の責任が認められました。
宅建業者としての留意事項
土地の購入者の多くが、土地上の建物建築を目的としています。土地売買の仲介業者は、できる限り土地の埋設物について注意を払わなければなりません。地中に廃棄物が存在することは外見からはわかりませんが、その土地にどのような建物が建っていたのか、どのように使われていたのかを確かめれば、ある程度の見当をつけることができます。土地取引の専門家として、宅建業者は、地中埋設物に関連する情報を買主に提供する責任があります。
今回のポイント
- 引き渡された土地に埋設物が存在し、買主に損害が生じたときには、買主は、売主に対して、契約不適合責任として損害賠償を請求することができる。
- 売買契約において、売主が地中埋設物を撤去して引き渡すとの取決めがある場合には、地中埋設物の撤去は売主の義務となる。
- 売買契約書に、売主は土地上の建物、工作物、立木等の一切を解体・撤去して引き渡すとの取決めがあったにもかかわらず、コンクリートガラ等の埋設物を残したまま引き渡しがなされたケースでは、売主の損害賠償請求が認められた。
- 土地の売買契約の仲介業者は、その土地にどのような建物が建っていたのか、どのように使われていたのかを確かめたうえで、地中埋設物に関連する情報を買主に提供する責任がある。
山下・渡辺法律事務所
弁護士
渡辺 晋
第一東京弁護士会所属。最高裁判所司法研修所民事弁護教官、司法試験考査委員、国土交通省「不動産取引からの反社会的勢力の排除のあり方の検討会」座長を歴任。マンション管理士試験委員。著書に『新訂版 不動産取引における契約不適合責任と説明義務』(大成出版社)、『民法の解説』『最新区分所有法の解説』(住宅新報出版)など。