法律相談
2026.10.14
不動産お役立ちQ&A

Vol.126 表明保証

202609_law

Question

土地の共有持分2分の1を購入しました。売買契約書には、売主が、第三者との間に土地の収益を認める合意はないと表明保証をしたうえ、表明保証に違反していた場合は売買契約を解除することができると定められています。
しかし実際には、土地に第三者の賃借権が設定されていました。売買契約を解除することができるでしょうか。

Answer

売買契約を解除することができます。表明保証および表明保証違反による契約解除を定めた条項の効力が認められるからです。

図表 売主の責任

図表 売主の責任

表明保証

表明保証とは、当事者に関する事項や目的物に関する事項などの書面に明記された事実について、一方当事者(主に売買の売主)が、その事実が存在しかつ正確であることを、相手方(主に売買の買主)に対して保証する条項を指し示す用語です。売買契約に取り入れる場合には、表明保証に違反した場合(事実が存在しないか、あるいは不正確だった場合)には、損害賠償を請求することができる、あるいは契約を解除することができるなどの定めが設けられます。次に紹介する東京地判令和5.3.24-2023WLJPCA03248009では、表明保証違反による契約解除が認められました。

東京地判令和5.3.24

1.事案の概要

(1)X社は、不動産取引等を営む株式会社である。Yは、K市に居住する昭和13年生まれの女性であり、親からの相続によって、土地(本件土地)の持分2分の1(本件持分)を有していた。

(2)X社とYは、令和3年8月11日、本件持分につき、Y売主、X社買主として、売買代金4,150万円で売買契約を締結した(本件契約)。また、X社とYは、本件契約の締結と併せて、同日付けで合意書を作成した(本件合意書)。本件合意書には、「Yは、X社に対し本日現在本物件について、Yおよび被相続人が本件共有者らおよび第三者との間で、本物件の利用に関する事実(収益の独占を認める合意、賃料の授受、無償利用を認める合意の存在、土地賃貸借契約書の存在等)が一切ないことを表明し保証する。万一、Yが上記表明保証に違反した場合、X社は原契約を解除できるものとし、YはX社に受領済みの金員を無利息にてすみやかに全額返還する」と記載されていた(本件表明条項)。

売買代金は、令和3年9月7日までに全額支払われた。

(3)しかるに本件土地上には、Eの所有する建物(本件建物)が存在しており、Eが本件建物を所有するための、本件土地を対象とする土地の賃借権が存在していた。

(4)X社は、令和3年12月3日、Yに対し、本件表明条項に基づき本件契約を解除する旨を通知し(本件解除)、Yに対して、支払済みの売買代金等の返還を求めて、訴えを提起した。

(5)判決では、X社の支払済みの売買代金等の返還請求が認められた。

2.裁判所の判断

『本件表明条項は「本物件の利用に関する事実」が一切ないことを表明して保証することを内容とするものであるところ、保証の対象である「本物件の利用に関する事実」の不存在とは、引き続き記載された括弧内で例示された内容(収益の独占を認める合意、賃料の授受、無償利用を認める合意の存在、土地賃貸借契約書の存在等)に加え、本件契約の対象である本件土地(本件持分)上に本件建物が存在していることと併せ考慮すれば、本件土地についての敷地利用権の不存在を指すものと合理的に理解できる。

そうすると、本件表明条項は、買主であるX社において本件契約の代金を本件土地に敷地利用権が存在しないことを前提として定めたことから、当該前提について売主であるYに表明保証を求め、敷地利用権が存在した場合に解除し得ることを通じて売買契約である本件契約の対価的均衡を維持することを目的とする規定と位置付けられる。

本件において、売主であるYが売買の対象である本件持分の権利関係につき表明保証をすること自体は特段不合理なこととはいえないし、本件表明条項に基づく解除がされても違約金が発生することはなく、既払代金を無利息にて返還することにより本件契約前の状況に復するのみであること等を考慮すれば、本件表明条項を含む本件合意が一方的に売主であるYの権利を制約し、あるいは負担を課すことを内容とするものとは認められないというべきである』。

まとめ

表明保証は、海外の投資家による日本の不動産の購入が活発になるとともに、日本の不動産取引における契約書の条項としても、利用されるようになってきた条項です。売買契約の当事者が表明保証条項を望む場合には、不動産取引の専門家として、契約書の作成に関する適切なアドバイスをすることができるように、準備をしておく必要があります。

今回のポイント

  • 表明保証は、当事者に関する事項や目的物に関する事項などの書面に明記された事実について、当事者が、相手方に対し、その事実が存在し、かつ正確であることを保証する条項である。
  • いずれの法律にも表明保証についての定めはないが、表明保証違反があった場合の損害賠償請求権や解除権などの効果については、不合理な規定でない限り、当事者の合意に効力が認められる。
  • 表明保証の条項としては、たとえば、売買契約の対象となる土地に第三者の利用権が設定されていないことを表明し、表明保証に違反している場合には、売買契約を解除することができるなどとの定めが設けられる。

渡辺 晋

山下・渡辺法律事務所
弁護士

渡辺 晋

第一東京弁護士会所属。最高裁判所司法研修所民事弁護教官、司法試験考査委員、国土交通省「不動産取引からの反社会的勢力の排除のあり方の検討会」座長を歴任。マンション管理士試験委員。著書に『新訂版 不動産取引における契約不適合責任と説明義務』(大成出版社)、『民法の解説』『最新区分所有法の解説』(住宅新報出版)など。