賃貸相談
2023.01.13
不動産お役立ちQ&A

Vol.47 保証人が更新契約に署名していないときの責任


Question

賃貸アパートの賃貸借契約を更新しました。契約期間は2年で、賃借人は更新契約書に署名押印したのですが、連帯保証人は遠方のため、特に署名押印は求めないまま3度目の更新契約を賃借人と締結しました。この度、賃借人が家賃を3カ月分滞納しているため連帯保証人に請求したところ、「当初の2年間の賃貸借期間の連帯保証人になることは契約したが、その後の更新の際には連帯保証人として署名も押印もしていないので、更新後は連帯保証人としての保証義務を負わない」と言われました。
連帯保証契約は、その後の更新の際に連帯保証人から署名押印をしてもらっていないと保証を請求できないのでしょうか。

保証人が更新契約に署名していないときの責任

Answer

期間の定めのある建物賃貸借で、保証人が賃借人のために保証契約を締結した場合には、反対の趣旨をうかがわせる特段の事情のない限り、原則として、保証人は更新後の賃貸借期間に生じた賃借人の債務についても、保証人としての責任を負うことになります。

ただし、賃貸人が、更新後に賃借人が賃料を滞納した場合に、長期間にわたり保証人に請求もせず、解除もしないまま、その後も更新を繰り返して、未払い賃料額が多額になるまで放置していたような事情があるなど、賃貸人において、保証債務の履行を請求することが信義則に反するものと認められる場合には、保証人の責任を問えなくなる場合があり得ます。

1.保証契約の性質

一般の契約理論からすれば、当事者は契約を締結したことにより、その契約の範囲内で法的に拘束されるものであって、期間を定めて契約を締結すれば、その契約期間内だけ契約に拘束されるのが原則ということになるはずです。

しかし、借地借家法の適用を受ける建物賃貸借の場合は、正当事由、法定更新に関する規定が適用される継続的な契約関係ですので、期間が満了しても、原則として、当事者の意思にかかわりなく契約が更新される仕組みとなっています。

このことは、保証人となろうとする者も、更新による賃貸借契約の継続を当然予期すべきであると考えられています。

また、建物賃貸借の保証の債務額はほぼ一定で、更新後の期間の保証債務を負担しても、保証人に特に過酷とまではいえないと考えられています。

その結果、最高裁の判例においても、期間の定めのある建物賃貸借では、保証人が更新後の期間について保証する旨の書面の締結をしていなかったとしても、保証契約の当事者の合理的意思解釈として、特段の事情のない限り、更新後の賃貸借期間において発生した債務についても、保証人としての責任を負うものと解するのが相当であるとされています(最判平成9年11月3日)。

2.更新後の期間に保証責任を負わない特段の事情

ただし、上記の最高裁の判例は、保証人が更新後の期間でも保証責任を負うとの結論に対しては、「反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り」との条件を付しています。

どのような場合に特段の事情が認められるかということですが、例えば、保証人が、賃貸人との間で連帯保証契約を締結するにあたって、「更新後の期間は保証しない」と保証契約で明示して保証契約を締結した場合は、特段の事情があるものとして更新後の期間における保証責任を問うことができないことがあるものと思われます。

3.保証人への請求が信義則に反する場合

また、前記最高裁の判例は、前記の結論は、「賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合を除く」とされていることに注意が必要です。

「信義則に反すると認められる場合」とはどのような場合をいうのかということですが、例えば、賃借人が賃料を滞納した後、長期間にわたり保証人に請求もせず、解除もしないまま、その後も更新を繰り返して未払い賃料額が多額になるまで放置していたような場合には、これに該当する可能性があります。

今回のポイント

  • 期間の定めのある建物賃貸借において、保証人が賃借人のために保証契約を締結した場合には、反対の趣旨をうかがわせる特段の事情のない限り、保証人は更新後の賃貸借期間に生じた賃借人の債務についても保証人としての責任を負う。
  • 保証人が、賃貸人との間で連帯保証契約を締結するにあたり、更新後の期間は保証しない旨を明示するなどして保証契約を締結した場合は、特段の事情があるものとして更新後の期間における保証責任を問うことができないことがある。
  • 賃貸人が、更新後に賃借人が賃料を滞納した場合に、長期間にわたり保証人に請求もせず、解除もしないまま、その後も更新を繰り返して未払い賃料額が多額になるまで放置していたような事情があるときは、賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反するものとして、保証人の責任を問えなくなる場合があり得る。

江口 正夫

海谷・江口・池田法律事務所
弁護士

江口 正夫

東京弁護士会所属。最高裁判所司法研修所弁護教官室所付、不動産流通促進協議会講師、東京商工会議所講師等を歴任。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会理事。著書に『不動産賃貸管理業のコンプライアンス』『大改正借地借家法Q&A』(ともに にじゅういち出版)など多数。