不動産お役立ちQ&A

Vol.79 物件の資産価値を高める、リノベーション4つのメリット


Question

空室物件が増えたことで、退去後のリフォームすらしてくれない大家さんが増えています。いくら説得しても、なかなか聞き入れてくれません。リノベーションすれば入居者が決まると話してもうまく伝わらないのですが、何かよい方法はありませんか。

Answer

まずは市場性を意識した上で、リノベーションのメリットを伝えてみましょう。放置するだけでは何ひとつ改善しないだけでなく、資産価値そのものを下げてしまうことになるのです。

二極化する、物件の入居

物件の入居率は、入居希望者に求められる物件と、そうでない物件とで成果が二極化しています。都市部などの、人口減少が少なく賃貸住宅が好調なエリアでは、大幅に入居率が高まっている物件があります。その一方で、地方の郊外などでは、若年層の減少により苦戦している物件が数えきれないほどあります。キャッシュフローが悪化して、改善のための予算がないからといって、ただ待つだけでは、今後、賃貸経営がよくなることはありません。

空室が多い賃貸市場で競争し、高い成果を上げるためには、ライバル物件に勝る秀でた特徴を持つ、求められる物件になることが大切です。また、管理会社は、オーナーに対して、このような資産価値を向上させるための提案ができるようにならなければなりません。

それでは、即効性がある具体的な提案にはどのようなものがあるのでしょうか。たとえば、築年数が経過した空室物件でも「リノベーション」を行えば、現在の顧客ニーズに合致する物件となることができます。

リノベーションの4つのメリット

それでは、リノベーションをすることで、オーナーにとってどのようなメリットと効果があるのかを、4つのポイントに分けて解説していきます。

①最新設備の入居者ニーズで反響を増やす

入居者のライフスタイルは、時代の変化によって常に変わっていきます。特に、現代のようなIT時代は、はやり廃りが早く、その動きが顕著です。たとえば「高速無料インターネット」や「宅配ボックス」などは、もはや入居者の生活には欠かせない必須アイテムとなりつつあります。また、比較的安価で導入できる「TVモニターフォン」や、少し費用がかかっても「防犯カメラ」を設置するなど、都市部だけでなく郊外エリアでも、セキュリティに対するニーズが高まりつつあることは、管理会社としても意識すべきポイントです。また、水回りの清潔感や新しさは常に求められるものです。予算が限られている場合でも、費用を抑えて見た目を良くする「カッティングシート」を採用することなども一つの方法です。

②「映える部屋」と「写真の質」は、ポータルサイトで差別化できる

ポータルサイトには、大量に空室情報が掲載されています。入居希望者が自分に合致する条件を入力したとしても、それでも絞り込みができないほどの情報が、サイト上にはあふれています。ところが、これらの空室物件の室内デザインを見ると、どれも「フローリング」に「白い壁紙」など、画一的なデザインばかりであることに気づきます。これではあふれる情報の海の中で、入居者の目に届かないため、「内見したい」という動機付けを引き上げることができません。

大量に情報があふれている今だからこそ、ポータルサイト内で勝負をしていかなければ、「検索」から「内見」というステージに上がることが難しいのです。よって、より目を引くような「アクセントクロス」や「人気の設備」などを取り入れた「映える部屋」と、それらの素材を存分に引き出すような魅力ある「写真の質」が重要といえるのです。

③需要を高めると、賃料を上げ資産性を維持できる

入居希望者に「求められる部屋」を提供することができれば、賃貸需要を高めることができます。賃料が経年変化とともに下落していくのは当然のことですが、差別化された部屋はインフレを考慮しなくても賃料を高めていくことが可能なのです。また、賃料の上昇は、収益還元で考えた場合、物件の価格を高めることに直結していくということが最重要ポイントです。

たとえば「物件価格=賃料収入/市場の利回り」という公式がありますが、これに当てはめて考えると、6.0%で取引される市場では、賃料を1,000円高めることができれば、20万円高い価格で売却できる可能性があるということになります(20万円=1,000円×12カ月/6.0%)。お金をかけずに放置をすれば、求められる入居者ニーズとかけ離れてしまうため、「賃料下落」から「資産価値の下落」という、負のサイクルに陥ってしまうことを、常に頭に置いておくべきです。

④入居者の質を維持できる

何もせずに放置したままの空室では、入居者がなかなか決まりにくくなります。そうなると、賃料を下げて募集をすることになるのではないでしょうか。賃料を下げると、入居者の間口が広がってしまうため、これまで他の物件で、何か問題を起こしてきたような不良入居者が入ることにもなりかねません。その結果、既存の良質な入居者の退去を促進してしまうことになり、それまでよりさらに、空室が埋まりにくい共同住宅となってしまうことにもつながるのです。

おわりに

リノベーションは、賃料を維持することだけではなく、入居者の質の維持につながります。これによって、良質な住環境を形成できれば、管理会社がオーナーから良い評価を得られます。そしてオーナーの資産価値を維持し、さらには向上することが可能となるのです。時々、「入居者が決まってからリフォームをする」という話も耳にしますが、それでは競争のスタート地点にも立つことができない時代になっていることを、管理会社としてしっかりと提案していかなければなりません。

図表 リノベーションに関するシミュレーションフロー

リノベーションに関するシミュレーションフロー

今井 基次

みらいず
コンサルティング株式会社
代表取締役

今井 基次

賃貸仲介、売買仲介、賃貸管理、収益売買仲介、資産形成コンサルティングの経験を経て、みらいずコンサルティング株式会社を設立。不動産業者・不動産オーナーの経験をもとにして、全国の賃貸管理業を行う企業へのコンサルティングや講演・研修活動を行う。聴講者はこれまでに3万人を超え、好評を得ている。CPM®︎、CFP®︎、不動産コンサルティングマスターなど資格多数。著書に『ラクして稼ぐ不動産投資33の法則 成功大家さんへの道は管理会社で決まる!』(筑摩書房)がある。