不動産お役立ちQ&A

Vol.92 納得感を生む「人が育つ評価制度」のつくり方

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Question

当社は地場の不動産会社です。社員から「社長や上長と仲が良い人ばかりが評価されている」と不満が出ています。評価基準を明確にしたいのですが、何から着手すべきでしょうか?

Answer

まずは「業績・スキル・態度」の3軸で、誰にでもわかる基準を作ることです。特に数字で見えにくい事務職の目標設定は本人に提出させ、納得感を持たせることが定着と成長への第一歩になります。
人材が不足する中で、不動産業界はこれまで以上に人材育成に力を注ぐ必要があります。「辞めてもまた次の人が来る」という時代はとうの昔に終わりました。そのような中で、人事考課における目標設定と評価方法について、比較的時間が取りやすい閑散期のいまこそ、本格的に導入や見直しを進めるべきです。
現場の一社員からすると、「社長や上長とのコミュニケーションがうまい人ばかりが上がって、自分が思っているように評価されない」という不満を持つ人も少なくありません。よって、誰の目から見てもわかるように基準を明確にすることが不可欠なのです。

数字だけでなく「バックヤード」も評価する業績評価

通常、業績評価において「売上げ」はわかりやすい指標です。仲介手数料などは特に明確ですが、管理会社であれば新規の管理受託件数なども目標を決めやすいでしょう。管理会社としてはどうしても最前線で数字を作る営業マンの売上げばかりにフォーカスしがちです。

しかし、ここでポイントとなるのが「バックヤードの評価をどうするか」です。管理受託を取る人がいて初めて仕事が生まれるのは事実ですが、管理を取っても実務を受ける人たちがいなければ業務は回りません。事務職の人たちが取り組む業務フローの改善やシステム導入、経費を削減できる仕組みの構築などは、しっかりと評価してあげるべきです。これらをどのようにして目標設定するかが問題となりますが、まずは「本人から目標を提出させること」をおすすめします。マネージャー側からは、どうしても多くを要求してしまい基準が厳しくなりがちです。難しすぎても簡単すぎても成長が困難なため、まずは本人から目標を出させ、そこから面談で修正していくプロセスがよいでしょう。

人生を豊かにする「個人の価値向上」を応援するスキル評価

2つ目に、業務に必要な知識や、資格などのスキルも評価の対象に置きたいところです。人事考課は、どうしても業績評価に偏りがちですが、そもそも仕事を通じて経験値を高めた結果、それぞれの人生が豊かになることこそが一番の大義といえます。スキルが高まればできることも増え、それらが評価されれば、仕事に対するモチベーションも大きく変わります。よって、スキルアップを見守ることも大変重要です。「宅地建物取引士」や「賃貸不動産経営管理士」などの資格取得の奨励はもちろんですが、一見、不動産には関係のないような学びや、コミュニティへの参加も個人の価値を高めることになり、結果として会社としてのナレッジが厚みを増すことになります。

長所を伸ばし、個性を組織の力に変える態度評価

3つ目に、積極性や協調性、会社の規律など、組織に属する一人の社会人としての「態度」を評価します。態度の捉え方は人によってまちまちで、自分のことを「とてもできている」と勘違いをする人がいます。自分が見る自分(主観)と人から見られる自分(客観)の評価が異なるために起こるのです。人間誰も完璧な人などいません。誰もが良いところと、足りていないところを持っています。問題点を改善するのもよいですが、よりできているところを伸ばし、人に影響を与えることこそ個性ともいえるのではないでしょうか。

主役は社員。成長を促す「対話」の場をつくる

これらは、半年ごとに目標設定と評価をしていくことをおすすめします。会社側の目標としては、一人ひとりのスタッフがこれらをクリアして、毎年数%でも成長してくれることです。そのためには、マネージャーによるコーチングスキルも求められます。あくまで主役は社員です。彼らが求めるときにしっかりと耳を傾け、より生産的なアドバイスをしていくことが重要です。できればコーチングなどの面談の機会は、月に一度程度行うとよいでしょう。また、場所も重要です。仕事の流れで面談すると、電話などが鳴り集中できないこともあります。よって、必ず執務スペースを離れて会議室で行うとか、たまにはカフェなどを活用して話をすると、通常の業務では出にくい本音が出たりするものです。

人が育ち、納得して働き続けられる会社は、結果として組織全体の生産性向上にもつながっていくのです。評価制度を整えることは、単に社員に点数をつけるための作業ではありません。社員一人ひとりが「この会社で成長したい」と思える環境を作るための、未来への投資です。採用が困難な時代だからこそ、今いる社員と向き合い、それぞれの持ち味を引き出す仕組みづくりに取り組んでみましょう。

図表 3つの評価軸

図表3つの評価軸

今井 基次

みらいずコンサルティング株式会社
代表取締役

今井 基次

賃貸仲介、売買仲介、賃貸管理、収益売買仲介、資産形成コンサルティングの経験を経て、みらいずコンサルティング株式会社を設立。不動産業者・不動産オーナーの経験をもとにして、全国の賃貸管理業を行う企業へのコンサルティングや講演・研修活動を行う。聴講者はこれまでに3万人を超え、好評を得ている。CPM®、CFP®、不動産コンサルティングマスターなど資格多数。著書に『ラクして稼ぐ不動産投資33の法則 成功大家さんへの道は管理会社で決まる!』(筑摩書房)がある。