不動産お役立ちQ&A

Vol.35 コロナ禍で変わる部屋探し
ソーシャルメディア戦略で入居率を高める方法


Question

ポータルサイトで入居者の募集をしているのですが、地元大手の不動産会社が大量に広告を掲載しているため、その情報に埋もれてしまい反響を得ることが年々厳しくなっています。何か良い方法はありませんでしょうか。

Answer

ポータルサイトのような、お金を支払って掲載するような媒体だけではなく、近年ではSNSなどのソーシャルメディアを無料で利用することが可能です。実際に部屋探しでインスタグラムやFacebookを利用しているという独自調査結果も出ています。積極的に活用して、募集の差別化を図ってみましょう。

新型コロナウィルスの影響は、ライフスタイルと住宅のあり方に大きな変化を及ぼしました。食寝分離・就寝分離が当たり前のライフスタイルに「在宅ワーク」が加わり、1日の大半を自宅内で過ごす時間が増えた人も少なくありません。通勤時間がなくなったことで「可処分時間」が増えたため、無駄な時間が減って、以前よりプライベートや仕事にあてられる時間が増えたはずです。これにより、「自宅」の活用方法を多様化しなければならなくなりました。しかし、働くことを前提に作られていない「自宅」という間取りや環境では、どのような工夫をしたら仕事と生活を両立しやすいのか、イメージを膨らませるのが難しくなります。特に首都圏では、専有面積が狭いため、限られたスペースを効率的に使わなければなりませんが、そもそもスペースに余裕などありません。よって、広さと安さを求めて、首都近郊の都市へ流出している事例も耳にします。

これまで不動産情報流通は、不動産ポータルサイトが中心であり、入居希望者は条件にあった「住まい」を探してきました。ただ、そこには物件の写真や情報などが記載されているものの、自分のライフスタイルに合っているのかという「住まい方」について記載があるわけではありません。よって、住んでみたものの、何かが違う…でも引越しにお金を使ってしまい、すぐには引っ越せないということが度々起こっていました。

一方、ネット上ではソーシャルメディアがどんどん増え、CtoC間(個人間取引)で相互的に情報のやり取りができるようになってきました。例えば「Facebook」は過去〜現在に起こったことや経験をシェアし、「Twitter」は、今起こっていることをつぶやき、情報を共有する。最近では「Pinterest」というSNSに似たサイトがありますが、これはカテゴリー別に知りたい情報を保存しておくことで、将来使いたい時に参考にできるという特徴があります。実際に「Pinterest」を見ると、料理、ファッション、インテリア、DIYなど多種多様なライフスタイルが掲載されています。「このDIYの感じ、いいかも。今度やってみよう」というアイデアやヒントが満載のため、写真を保存しておけば、将来DIYをしようと思った時にすぐに役立ちます。

在宅ワークの指示が出ているのに自宅に机を置くスペースもなく、どうやったらいいのか…そんな時にPinterestを開けば、解決のヒントがたくさん掲載されています。特にDIYの事例は多数あり、入居者から見ても役に立つ情報が満載です。数千円~1万円程度あれば、「ラブリコ」や「DIAWALL」というキットを利用して、居室に傷をつけずに簡単にDIYでテーブルを作成することなどができます。

いま若い女性たちを中心に大変人気のある「Instagram」利用者は7割を超えるといいます。実際に話を聞くと、調べ物をする時に「ググる(グーグルで検索をすること)」だけでなく「タグる(Instagramなどでタグづけする)こと」で、タグづけされた情報を検索エンジンのように利用し、お店を調べたりライフスタイルをみたりするそうです。

これまでは、部屋探しといえばポータルサイトが主流でしたが、住まい方を問われる時代になった今、もっと住まい方の多様性を発信するメディアこそ、入居希望者が必要としているのではないでしょうか。消費者購買モデルにこのメディア戦略を置き換えると、不動産管理会社が行うべき情報発信の仕方と未来が見えてきます。単に「住まい」の情報を既存のプラットフォームに載せて発信するだけでなく、「住まい方」や「ライフスタイル」にまで細かく情報発信をすれば、高い満足度が得られるでしょう。その結果、良質な口コミを得ることもできます。ソーシャルメディアは相互的であることが一つのポイントです。ただ成約して引っ越せば終わりということではなく、その後どのようにCRM(顧客関係管理)を構築していくのかが、今後の重要なポイントになります。高額な広告費を払って掲載してもらう従来の方法だけでなく、若年者層に到達するような情報発信をし続けていくことこそ、これからの時代の入居率を上げていくための管理会社の重要な戦略ではないでしょうか。

DIY事例(Pinterestより転載)

消費者行動モデルとメディア戦略

今回のポイント

  • 在宅ワークが増え住環境の改善が求められるものの、引越しなどの費用がかさむことから、「今すぐ」ではなく「将来」のための情報源としてソーシャルメディアが消費者の情報源となっている。
  • 一方的に発信する既存の広告媒体だけではなく、発信側と消費者側が相互作用することによって、より上質な情報を提供できるソーシャルメディアを利用するなど、発信の多様性への注目が必要。

今井 基次

株式会社ideaman
代表取締役

今井 基次

賃貸管理ビジネスを行う企業に対しての経営・管理業務コンサルティング支援を行う一方、個人のファイナンシャルプランニング、相続、権利調整、土地活用、空室対策、賃貸住宅企画などの不動産コンサルティングも行っている。CFP®、CPM®等の資格を有する。