不動産お役立ちQ&A

Vol.44 マーケティングプランを作成して入居率を高める


Question

秋の繁忙期で少し入居率は改善したものの、相変わらず新型コロナの影響で人の動きがあまりよくありません。この夏に完成した物件も、数カ月経過してもまだ半分も決まっていません。決められたルーティンに沿って募集をしているのですが、あまり成果も見えません。どのようにしたら効率よく募集計画を立て、その結果をあげられるのか教えてください。

Answer

賃貸物件の募集は、物件ごとに募集戦略と計画が必要となります。ただポータルサイトに掲載して反響を得るとか、店頭広告を掲示してみるだけでは入居が決まりにくい時代になっています。マーケティングプラン(募集計画)を明確にして、目標と実績を管理していくことが重要です。

1.惰性で募集をかけても成果が見えない

物件の供給よりも、需要が勝る時代であれば、特別なことをしなくても入居者が物件を決めてくれますが、このご時世ではそうもいきません。コロナ禍がさらに空室率を押し上げていますから、より一層募集には工夫が必要です。通常、入居募集が可能になった時点で、募集図面を作成、店頭への広告掲示、ポータルサイトへの掲載、現地での募集看板などを設置して入居者を募りますが、ただ流れに任せて募集をしても、その成果や費用対効果が見えにくいのではないでしょうか。入居希望者は明確な目的があって部屋を決めるのですから、お部屋を提供する管理会社側も、そのニーズに即した募集活動をしなければなりません。

一般的に、物件ごとにマーケティングプラン(募集計画)を決めて、その目標に向かってアクションをすることはありませんが、実際は物件ごとに特徴が違うので、ターゲットが変わります。よって本来であれば、物件ごとにやるべきことをフォーカスして手立てを決めるべきなのです。特に新築物件に関しては、一度にたくさんの空室が供給されるわけですから、どのアクションが一番費用対効果が高いのかを知らなければ、無駄なことにお金をかけ続け、広告費ばかりがかさむことになってしまいます。

2.マーケティングプラン(募集計画)を作成する

物件ごとにどのようなアクションを行って、満室まで持っていくのかを計画します。具体的には、アクション・チャート(行動する内容)を作成して、いつまでに誰がどんなアクションをするのか決めます。大きなカテゴリーとしては、「募集条件の決定(見直し)」「ネット戦略」「現地対応(内見時とフォロー)」などに分別されます。たとえば、ネット戦略といってもやるべきことはたくさんあります。各種ポータルサイトへの掲載から始まり、インスタグラムやYouTubeなどのプラットフォームを利用したソーシャルメディア(SNSなど)の対応も最近では有効活用されています。ポータルサイトなどの有料メディアとは違い、ソーシャルメディアは無料で使用できますし、「ハッシュタグ」や「タグ付け」を活用すれば、必要とする人に必要とする情報を届けることができるため、無駄が一切ありません。また、「いいね」が押されるたびに情報が拡散する特徴があるのも、ソーシャルメディアの特徴です。

もちろん、現地対応も忘れてはなりません。室内の定期的な空気の入れ替えや清掃は基本的なことですし、エントランス周りの清掃も欠かせません。決まらない部屋のほとんどで汚れが目立ちます。また現地での募集看板やのぼり旗の設置も、手間はかかりますが、その地域で部屋探しをしている人にとっては効果があります。

図表 マーケティングプラン例

マーケティングプラン例

3.具体的なアクションは「スマート」に

満室までのアクションプランは、「SMART(スマート)の法則」を意識しなければなりません。

  • Specific(具体的に)
  • Mesurable(測定可能で)
  • Achievable(実現可能で)
  • Relevant(目標に関連した)
  • Time-bound(時間制約の中で)

すべての目標とアクションは、具体的に測定可能で時間制約を意識しなければなりません。「12月15日までにモデルルームを設置」「12月20日までに95%の入居率にする」などがそれにあたります。またそれらは実現可能な目標でなければなりません。「明日までに10部屋を決める」というのは現実的ではありません。

このように、アクションプランはすべてスマートに行う必要があります。その計画を管理することでマーケティングプランの費用対効果を高めることができます。ただ、やみくもにダラダラと募集活動を続ければ、何もしなくてもコストが発生してしまいます。そのことを意識して、しっかりとした計画を立てることが重要なのです。

今回のポイント

  • 賃貸物件の募集をする際は、物件ごとにやるべきことをフォーカスして手立てを決める。
  • SNSなどのソーシャルメディアを活用する。
  • 物件の定期的な清掃や空気の入れ替えのほか、募集看板やのぼり旗の設置といった現地対応を行う。
  • すべてのアクションは、現実的な時間制約を意識して行う。

今井 基次

株式会社ideaman
代表取締役

今井 基次

賃貸仲介、売買仲介、賃貸管理、収益売買仲介、資産形成コンサルティングの経験を経て、2020年株式会社ideamanを設立。不動産業者・不動産オーナーの経験をもとにして、全国の賃貸管理業を行う企業へのコンサルティングや講演・研修活動を行う。聴講者はこれまでに3万人を超え、好評を得ている。CPM®、CFP®、不動産コンサルティングマスターなど資格多数。著書に『ラクして稼ぐ不動産投資33の法則 成功大家さんへの道は管理会社で決まる!』(筑摩書房)がある。