不動産お役立ちQ&A

Vol.45 管理拡大期の情報発信力がブランドを作る


Question

管理戸数が増えるにつれ、オーナーから「誰がうちの物件の担当者で、誰に連絡をとっていいのかわかりにくい」と注意をされることが多くなりました。確かに当社としては、何百人ものオーナーと対応しているため、一人一人に割ける時間は以前のように取れていません。効率化を進めるほど、業務ごとに部門を分ける必要があるため、自ずと複数のスタッフが一人のオーナーに関わることになり、専任の担当者をつけることが難しくなっています。何かよいアドバイスがあれば教えてください。

Answer

生産性や効率を求め、組織体制を変えるほどに、担当者との接点が減ってしまい、誰が担当かわからない……というドライな印象をオーナーに与えてしまうことがあります。組織の生産性を高めつつ、オーナーとの関係性を構築するためには、管理会社側からの「情報発信」を増やしていくことが重要です。

1.管理拡大期に起こる「コミュニケーション不足」

管理戸数が少ないうちは、全員でいろいろな業務をこなしていくものですが、管理戸数が増えていくにつれて組織体制が変わっていきます。よくあるのが、物件ごとにチームまたは担当を決める「物件担当別組織」です。この場合、オーナーからすれば連絡を取り合う担当者が限られているため、安心感があります。一方、少しずつ効率化を進めていくと、やがて業務ごとに役割を分けて効率化を図る「業務担当別組織」へと移行していくことが一般的です。「業務担当別組織」は、同じ職種で部門を分けるため、いわゆる大量生産に向いているので効率化が進みます。ただし、同じことの繰り返しとなるため、たとえばクレーム対応を専門で受ける部署であれば、そればかりを行うことになってしまい、離職率が高まるのです。また、オーナーからすれば部署ごとで業務の担当者が異なるため、いろいろな人が窓口となって、誰が担当かわからない……ということが起こってしまいがちです。

管理戸数が増えるほど、組織体制が変わり、人の入退社も増えます。よくあるのが、「よく顔を出してくれた担当がやめて、最近では担当がコロコロ変わる」とか、「会ったこともない“担当者”という人から、“退職に伴い担当が変わります”と連絡が来る」といったことです。オーナーとしてみれば、そのような連絡をもらっても何の実感もわきません。また、せっかくの毎月の送金明細も、最近はパソコンやアプリで見るようなものに変わって、便利になったようでもどことなく温かみがないように感じてしまうのです。これでは、誰に仕事を頼んでいるのか、何のために管理料を支払っているのかわからない…となりま

2.オーナーへの情報発信で信頼関係を作る

管理拡大期こそ、まずはオーナーとのコンタクト数を増やすことが重要です。それができなければ、いくら管理戸数が増えても穴の空いたバケツの様に管理離れが起こります。ただし、現在のようなコロナ下では、会いにいくことが逆効果となってしまうため、接触方法は自ずと限られてきます。

たとえばオリジナルのオーナー通信を作成して、会社の取り組みや、スタッフの顔を出して情報を伝える方法があります。普段、不動産会社のスタッフがどんな仕事や取り組みをしているのか、オーナーはあまり知る術がありません。新入社員紹介・地域貢献活動(清掃など)・新しい空室対策の商品・リノベーション事例・新規店舗出店など、会社は常に変化をしています。しかし、そのすべてをオーナーに発信できていることは稀です。もっと会社のことや、スタッフのことを知ってもらうことで、より親近感を持ってもらうことができるのです。賃貸管理は、毎月のルーティン業務がたくさんあり、機械的に業務をこなしがちです。本来はオーナーとのコミュニケーションが重要で、そこから次の案件へと仕事が広がっていくのが管理会社の醍醐味ですが、作業ばかりに気をとられていると本質が欠如していきます。結果、業績が上がりにくい体制を築き上げてしまうのです。

もちろん紙媒体に限ったことではありませんが、「送金明細を送る」という作業は、見方を変えれば「毎月オーナーと接点を持つことができる大きなチャンス」なのです。ただ送金明細だけを送ったところで、何も新しいことは生まれません。そのタイミングで、オーナーにとっての価値ある情報を提供することが、管理会社としてのブランドを高める方法なのです。

「ホームページ」「ツイッター」「ブログ」などを利用して、情報発信をすることもよいのですが、年配のオーナーが多い場合には、紙媒体はまだ有効な手段といえます。アナログ、デジタルなど手法はたくさんありますが、いずれにしても情報発信をし続けることがとても大切なことなのです。

紙媒体による情報発信の例

紙媒体による情報発信の例

今回のポイント

  • 「業務担当別組織」は効率化が進むが、離職率が高くなる場合もある。
  • また、オーナーからすると誰が担当者かわからなくなり、クレームにつながりかねない。
  • 管理拡大期こそ、オーナーとのコンタクト数を増やす。
  • 送金明細を送るタイミングでオーナーにとって価値のある情報を提供する。
  • 年配のオーナーが多い場合には、紙媒体が有効な手段になりうる。

今井 基次

株式会社ideaman
代表取締役

今井 基次

賃貸仲介、売買仲介、賃貸管理、収益売買仲介、資産形成コンサルティングの経験を経て、2020年株式会社ideamanを設立。不動産業者・不動産オーナーの経験をもとにして、全国の賃貸管理業を行う企業へのコンサルティングや講演・研修活動を行う。聴講者はこれまでに3万人を超え、好評を得ている。CPM®、CFP®、不動産コンサルティングマスターなど資格多数。著書に『ラクして稼ぐ不動産投資33の法則 成功大家さんへの道は管理会社で決まる!』(筑摩書房)がある。