ついに全面施行
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律


昨年12月に施行された「サブリース業者と所有者との間の賃貸借契約の適正化に係る措置」に続き、『賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律』のもう一つの柱である「賃貸住宅管理業に係る登録制度」が6月15日に施行されました。賃貸住宅における良好な住居環境の確保を図るとともに、業界の健全な発展・育成を図るため創設された新しい制度についてご案内します。

増加する管理業者への委託

25年前には約80%のオーナーが自主管理を行っていた賃貸住宅の管理業務ですが、オーナーの高齢化や業務内容の高度化などさまざまな理由により、現在は約20%にとどまっています(2019年国土交通省「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査」より)。今後、賃貸住宅志向の高まりや単身世帯、外国人居住者の増加に伴い、ますます賃貸住宅の需要が高まっていくことも予想され、賃貸管理業務は国に認められた管理業者(登録業者)が法の下、適正に遂行することが求められます。

サブリース業者と所有者との間の賃貸借契約の適正化に係る措置

新法ではサブリース契約(マスターリース契約)が、「特定賃貸借契約」として規定されました。トラブルを未然に防止するため、勧誘時や契約締結時に以下の規制が導入され、サブリース業者と組んで勧誘を行う勧誘者(建設会社、金融機関、コンサルタントなど)も規制の対象となりました。

①不当な勧誘行為の禁止

サブリース業者や勧誘者による特定賃貸借契約(マスターリース契約)勧誘時に、家賃の減額リスクなど相手方の判断に影響を及ぼす事項について故意に事実を告げず、又は不実を告げる行為の禁止

②特定賃貸借契約締結前の重要事項説明

マスターリース契約の締結前に、家賃、契約期間等を記載した書面を交付して説明

「賃貸住宅管理業に係る登録制度」の概要

1.賃貸住宅管理業の登録

委託を受けて賃貸住宅管理業務事業を行う者(サブリース業者を含む)について、法施行後1年以内に国土交通大臣の登録を受けることが義務付けられます。登録の有効期間は5年間で、更新は有効期間満了日の90日前から30日前までに更新申請が必要です。登録申請は原則として、電子申請システムから行ってください(2021年6月15日申請開始、書面郵送も可)。

※管理戸数が200戸未満の場合は任意となりますが、社会的信用を確保するにあたって登録することが推奨されます。なお登録を受けた場合は、規制の対象となり、監督処分や罰則の対象になります。

●登録申請書類の提出方法(紙による申請)については、以下のとおりです。
申請書宛先:主たる事務所の所在地を管轄する地方整備局長等
提出先及び登録に係る相談窓口:主たる事務所の所在地を管轄する地方整備局建政部建設産業課等

【賃貸住宅管理業法に係る登録申請方法等について(国土交通省)】
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_tk3_000001_00012.html

2.賃貸住宅管理業者の業務における義務付け

①業務管理者の配置

賃貸住宅管理業者は、従業員が行う管理業務等の指導・監督を行うために必要な知識及び能力等の一定の要件を備える「業務管理者(宅建士、賃貸不動産経営管理士)」を営業所または事務所ごとに1人以上選任しなければなりません。「業務管理者」が欠けた状態では管理受託契約を締結することはできません。

業務管理者の要件に必要な「賃貸不動産経営管理士」試験は2021年11月21日に予定されています。また、2020年度までに登録済みの賃貸不動産経営管理士が「移行講習」を受講する方法や宅地建物取引士が「指定講習」を受講する方法も用意されています。

業務管理者の配置
※1 業務管理者の要件については、登録試験・指定講習の実施状況その他新法の施行・運用の状況を踏まえ、見直しを検討する。
※2 管理業務の実務経験については、別途実務講習の修了をもって代えることも可。

②管理受託契約締結前の重要事項の説明

具体的な管理業務の内容・実施方法について書面を交付して説明する

賃貸住宅管理業者は、賃貸住宅のオーナー(専門的知識及び経験を有する者を除く)に対し、当該管理受託契約を締結するまでに、管理受託契約の内容及びその履行に関して、書面を交付して説明しなければなりません。業務管理者が行うことは必須ではありませんが、業務管理者又は一定の実務経験を有する者など専門的な知識及び経験を有する者が行うことが推奨されています。なお、オーナーから委託を受けようとする賃貸住宅管理業者自らが行う必要があります。

③財産の分別管理

管理する家賃等について、自己の固有の財産と分別して管理する

分別管理の方法は、以下のいずれをも満たす必要があります。
1.口座分別の方法により、管理業務において受領する家賃・敷金等の金銭を自己の固有財産と分別して管理する方法(契約ごとに口座を設けることは求めない)
2.受領した金銭がいずれの管理受託契約に基づく管理業務に係るものであるかが帳簿や会計ソフト上で、直ちに判別できる状態で管理する方法

④定期報告

業務の実施状況について、以下の事項を管理受託契約の相手方に対して定期的に報告する

○ 報告の対象となる期間
○ 管理業務の実施状況 (家賃等の金銭の収受状況、維持保全の実施状況等)
○ 入居者からの苦情の発生状況及び対応状況

※上記は法令上報告が義務付けられる最低限の事項。上記以外についても、オーナーの求めに応じて報告することが望ましい。
※報告の頻度については、上記事項の報告を最低限年に1回行うことを法令上義務付け、報告事項によっては、それ以上の頻度で行うことが望ましい。
※報告の方法については、書面によらず、メール等の電磁的方法によることも可能とする。その場合は、事業者において、報告書のデータを適切に保存すること。

◆詳細は、国土交通省「賃貸住宅管理業法制度概要ハンドブック」、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」をご参照ください。
国土交通省HP