全日本不動産協会の令和4年度税制改正要望実現に向けて!!


6月23日、全日本不動産協会総本部理事会にて承認された令和4年度政策及び税制改正要望書についてご説明いたします。
月刊不動産9月号では政策要望の主旨について、10月号では税制要望、また昨年度全日本不動産協会より要望しました「低未利用土地100万円控除」の利用状況についてご報告いたします。

令和4年度 政策及び税制改正に関する要望書

2020年から続く新型コロナウイルスの影響により、日本経済は大きな打撃を受けた。しかし一方で、ウィズコロナ下において、新たな生活スタイルが確立しはじめ、日本社会に大きな変革をもたらしている。この変革に対応していくためには、従前より当協会で提言している空き家・所有者不明土地・未利用空地の流通促進を図る対策等が非常に重要である。

所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直しにより、民法等一部改正法と相続土地国庫帰属法がいずれも成立されたことを契機に、当該問題解決に向け、法律に基づく適正な管理がなされると考える。当該法律が施行され、有効に活用されるよう当協会として改めて空き家・所有者不明土地・未利用空地の流通促進を図る政策を強く要望する。

また新型コロナショックからの脱却を図り、より強固な日本経済を築くために、日本経済を支える一角である不動産業をより発展させることが不可欠である。その一助として新たな生活スタイルに合わせた一般消費者の住戸の購入を促進し、さらに地方における空き家等の購入意欲を刺激するような税制面でのサポートが求められている。また、既存の特例措置がなくなることで、流通市場を低迷させないよう、適用期限を迎える特例措置の延長も必要である。

以上の観点から、令和4年度 土地住宅政策及び税制改正に関し、下記事項を要望する。

【所有者不明土地・未利用空地の流通促進を図る政策要望】

  1. 宅地建物取引業者に従事する宅地建物取引士への情報開示
  2. 空き家・所有者不明土地・未利用空地の問題に対処する官民連携体制の構築
  3. 高い実行性を伴う空き家・所有者不明土地・未利用空地問題対策の推進
  4. 二地域居住等を促進する政策の実現

【所有者不明土地・未利用空地の流通促進を図る政策要望】

1.宅地建物取引業者に従事する宅地建物取引士への情報開示

要望趣旨

不動産業者として、空き家・所有者不明土地・未利用空地の問題解決のため最低限必要な情報に関して、所有者ないしは相続代表者と連絡をとれる環境を整えたい。民法等一部改正法によって相続登記が義務化となるため、取引に必要な最低限の情報開示に関しては問題ないと考える。住民票や登記情報の行政管轄の隔たりがない情報の統一化が図られていく中で、開示を希望する最低限の情報として、所有者または所有者が登記簿と異なる場合は固定資産税台帳の納税代理人・納税管理人と、評価額、滞納状況を希望する。

また重要事項説明の項目が増え、取引士の責任が増加している反面メリットが少ないため、何らかのイセンティブを設けることで、不動産業に従事する者に対する動機づけを与え、業界の発展へとつなげたい。

2.空き家・所有者不明土地・未利用空地の問題に対処する官民連携体制の構築

要望趣旨

所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直しによる民法等一部改正法と、相続土地国庫帰属法を円滑に進めるためには、官民の連携が不可欠であり、この問題に精通している不動産業者と行政が主体となって動く組織づくりが重要である。また民間主導で解決していく動機につながるよう、各地域での様々な取り組みを集約して、地域でのばらつきがない統一した体制を整えるよう要望する。

全国的な展開をする際の取り組み例及び方針(案)

各地域に適合した新たな組織を構築(公的資金の補助も含む)

  • 行政または所有者不明土地問題に特化した第三セクターが積極的に主導し、地域によってはランドバンクの活用も含め、地域住民や不動産業者、NPOが協力し、問題を解決していくような仕組み

具体的な事業内容

  • 空き家、所有者不明土地等、各行政・関係各所にわたる情報の集約とDB化
  • 民間協力のもと該当物件の評価調査等を積極的に実施
  • 該当物件の分類化(流通性のある空き家、市場価値の低い空き家等)
  • 空き家等所有者への情報提供、具体的な解決案の提示
  • 所有者不明土地関係法に係る諸手続きの対応
  • 仕分けられた物件に即した個別の対策及び処置

3.高い実行性を伴う空き家・所有者不明土地・未利用空地問題対策の推進

●要望主旨

所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直しによる民法等一部改正法と相続土地国庫帰属法において、「相続登記等の義務化」「他の公的機関との連携による登記情報の最新化」「相続した土地の国庫帰属制度」「共有地の利用等の促進」「所有者不明土地・建物管理制度」「相隣関係規定の合理化」等は当該問題を解決する上においては大変有効と考える。

土地の資産価値が低いとされる「所有者不明土地」「空き家」「未利用空地」の不動産に付随する法的、経済的な障壁を取り除き、行政や民間による新たな利活用を促す環境を構築することが重要である。今後、土地の国庫への帰属が進めば、適正な管理や各自治体での活用、また再度隣接地や地域で整理をし、需要が見込める場合は市場にのせていく取り組みを継続していくことが重要と考える。

国庫への帰属の申請に関して、所管は法務省だが、青地や水路、道路や河川など複雑に絡んでくる土地に関しては、財務局や地方行政との手続きが多岐にわたり煩雑になると危惧している。平成30年に通知された農地付き空き家の手引きに基づく、農地の下限面積要件の引き下げについては、地方行政や農業委員会によって対応が異なり、利活用が促進されていない地域もある。当該法案が実行性のない制度であっては問題の解決にはならないが、政策要望2.で述べた問題に特化した第三セクターが構築され、執行力を伴い、関係各所にわたる各種の手続きを積極的に進めることができれば、一般消費者も利用しやすい制度となる。

4.二地域居住等を促進する政策の実現

●要望主旨

新型コロナショック以降、ライフスタイルが多様化してきている中で、二地域居住は、地方活性化のみならず、一般消費者の生活環境を改善し、豊かな暮らし方の一つとして普及促進されるべきである。ポストコロナ社会において、地方への関心が薄まることなく、新しい生活様式に沿った二地域居住等を推進することは日本経済に大きく寄与するものと考える。

この機を逃さず、関係省庁・地方公共団体・事業者団体・民間事業者等が連携して設立された全国二地域居住等促進協議会において、二地域居住等の推進に係る様々な施策や事例等の情報の交換・共有や発信、課題の整理や対応策の検討・提言等が活発に行われ、機運が高まることを望む。また二地域居住等を推進するため、売買または賃貸で得る二拠点目住居に対する控除や補助等を要望する。

※二地域居住は、定義はないものの、主な生活拠点とは別の特定の地域に生活拠点(ホテル等も含む)を設け、一時的利用ではなく、年間通算して概ね1カ月以上の期間を過ごす、また定性的に一定期間以上利用することを想定する。都市での生活を主とした概念であったが、今般の二地域居住は、地方や郊外での生活が主となり都市との関わりも一定程度あるという形態もあることに着目し対応するべく、二地域居住等という用語を用いる。なお、三地域以上の居住形態も含まれる。